八百二十七話
「とりゃあああああ!」
椿は刀を振るう。
現在いるのはものすごく頑丈に作られた『塔』である。
全部で十階層に分かれており、地上部分に三階。地下部分に七階存在し、地下部分を含めた完全な円錐型で、下に行くたびにどんどん広くなる。
内部はとても頑丈で、参加者の中で最強の出力を誇る基樹であっても壊せないほど頑丈な特殊素材で作られている。
内部にはギャグ補正にどうにかして対抗するコードが埋め込まれているので、高志が暴れても壊れないようになっているのだ。
……まあバール転移は可能なので最終的にワヤクソになるのは変わりないのだが。
「むう、とても頑丈ですね。しかも、結構内部にいる人がガチ勢です」
椿は自分の戦闘の余波に巻き込まれた周囲の壁を見る。
そこには一切傷がついておらず、少しも欠けた部分がない。
『頑丈』というよりは『特殊』な素材である。
「私があったことがない人の中でも、かなり強い人がいっぱいいますね。特に神器持ちは私としても厄介です」
そういいながら鞘に納めた刀の柄頭をトントンと指で叩く椿。
この塔の建設目的は『ガチ勢の戦闘空間の構築』のためである。
途中で椿は基樹と外で戦ったが、あれは純粋に基樹が休憩のために外に出ていただけである。
そしてその基樹の懸賞ポイントを狙って風香が外に出てきていたのだが、基樹はいつの間にか塔に帰っていき、風香はスマホでいろいろな情報を手に入れたのか、既に二人ともこの塔の中にいる。
神器持ちすら内部にはたくさんいるほどのガチ環境になっているのだ。
椿が言う『厄介』というのは、神器から放たれる『神力』というものは魔力よりも『優先度が高い』ゆえに、どれほど出力に差があったとしても、衝突した場合はかならず神力が勝てるようになっている。
もちろん神器を使うのもまた人間なので、神器を避けて攻撃すればいいということなのだが、それでも神器を持っていない椿と比べれば練度もある。
「ただ……アトムさんが呼んだっぽい魔戦士の人たちはすごく強いですけど、それ以外の人たちはそうでもないような……それは私の観察眼の問題ですかね?」
おそらくそのようなことはないと思う。
「とりあえず下にどんどん行ってみましょう」
下に行くほど広くなり、頑丈さも上がり、そして『休憩ができそうなスポット』も減っていく。
しかも、塔の中で死亡判定が出た場合、塔の中で設置された専用の蘇生ポイントでリスタートするのだ。
もちろん参加者全員分の場所がそれぞれ設定されているが、それでも、塔の外で復活するよりも再戦までのスピードが圧倒的に速い。
『激戦区』の中でも『最前線』といえるだろう。
「むー……この塔、罠とかはないみたいですね。誰かが仕掛けてそのまま放置されてるっぽいものはありますけど」
様々な風の流れをつかめる上に、感受性が高く、罠を発見できる椿。
塔の内部には、『もともと設置されていた罠』というものは存在しない。
必ず誰かが、自前か、それともこのイベントの途中で手に入れたものか、そのいずれかの要素で罠になりそうなものを手に入れている。
ちなみに、仕掛けた罠の位置を知らせる機能はスマホには一切存在しないので、おバカなことをすると自分が引っかかる。塔の内部は似たような構造になっていることもあるし、逆に内部の通路が組み変わることもある。注意が必要だ。
「……」
どんどん下に行く椿。
下に行くほど緊張感が増してきたのか、口数が減っていく。
「遮音性が高くて戦闘の音すら聞こえてこない。天井についている特殊なライト以外の光を壁が反射しないのか。周りの戦闘の光も見えにくい……不気味なところですね」
いくら塔であり、そして地下を開発しているとはいえ、スペースには制限がある。
頑丈かつ遮光・遮音が付与された壁を使うことでうまく区切っているのだ。
「ここからは頑張りましょう」




