第八百二十六話
「むっ!人の気配がします!」
そう言いながら黄色くて丸い工事現場で被るようなヘルメットにつけているゴーグルを降ろして、手榴弾を飛ばすグレネードランチャーのトリガーを引く椿。
銃口から手榴弾が発射されて、一軒家が数軒吹き飛んだ。
スマホを確認。
「ポイントが増えてますね!多分二、三人は吹き飛ばしました!」
そういって胸を張る椿。
真っ黒のロングコートを着用し、胸の下にベルトがあるので大きな胸が強調されている。
そして工事用のヘルメットをかぶっているのも、大体何でも似合う椿だと可愛い。
……その手に『グレネードランチャー』を持っていなければ、と付け加えていいだろうか。
まあ、最近はかなり大型の兵器を背負うことは二次元ならば普通なので、グレネードランチャーくらいならば可愛いものだ。
……ただ、それはそれをやっているものが『他にいれば』という話だ。
火力がインフレしているのでグレネードランチャーを持っているからと言ってそれを活躍させることができるかと言われると、正直『雑魚処理』としか言えないだろう。残念な話だ。
「フフフ。購入スコアが十五万、手榴弾が一発で一万とコストは高いですが、威力はとても高いですね!」
コストパフォーマンスという言葉を知らないのだろうか。
とはいえ、別に優勝することに関しては特に興味があるわけではないので、結果的に『使えるものは使えるうちに派手に使ってしまおう!』ということになっている可能性はかなり高い。
……なお、最初の方に『大きな外れ値を除いた平均は大体三万ポイントくらい』ということを考えると、グレネートランチャーを買うために五人倒して、そこから一人倒しても三発しか買えないのだ。
それを考えると破格の性能をしていてもあまり驚くようなものではない。
……実際、『威力』だけで見ればこいつよりも低いのに初期投資もコスパも悪い武器があったりするので。
なお、懸賞スコアははじめて倒されたときのみその平均三万ポイントが獲得できるので、実際はこの効率よりも低い。
「むふふ、さあ!次の人を見つけに行きますよ!……お、いましたね!」
ビルを発見。
上からスナイパーが狙っている。
「さてと、倒されたい人からかかってきてください!倒されたくない人はあきらめてくださいね!」
強引さが高志並みである。さすが孫。
言いながらもランチャーのトリガーを引く椿。
だが、椿には一つ誤算があった。
このグレネードランチャー。手榴弾を飛ばす速度がそこまで速くないのである。
銃口から放たれた手榴弾は、『ひゅるるる~』という音が聞こえてきそうな速度で発射される。
スナイパーの三人は、きっちりその弾道を読み切って、銃弾で手榴弾をぶち抜いた。
当然のように爆発する。
「わひゃああああああ!もおおお!こんな近くで爆発するとか聞いてないですよ!」
まあ、椿が用意した武器ではなく、単純に面白そうだから買ったものだ。『面白そう』でグレネードランチャーを買うその感性を理解することは困難だが、距離を取って相対するスナイパーが相手では分が悪いのだろう。
……ただ、それは椿がグレネードランチャーのみの性能に頼った場合の話だ。
「こうなったら……風属性魔法でコーティングしてやります!」
再びブッパする椿。
「……あれ?さっきはあそこにいたのに、もういなくなってますね」
居場所がばれてるスナイパーが同じ場所にいるわけがない。
誰もいない廊下を無意味に破壊し、風属性によってコーティングと強化が行われたことで着弾部分の上と下の階をそれぞれ二階分くらい破壊している。
正直直撃を避けたいレベルだ。
「むう。どこに行ったんですかね?……あ!スコアが増えてます!」
巻き込まれてたんかい。
「よーし!この勢いで爆撃していきますよ!……あ、弾がもうないです!買いに行かないと!」
手榴弾を入れていたケースが空になっている。
「むう……店ってどこにありましたっけ?購入してすぐに戦闘になってあたり一面を爆撃したので、多分地形が変わっているような……仕方がないのでこのグレネードランチャーは鈍器として使いましょう!」
……すきにしなさい。もう文句言わないから。




