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第八百六話

「テロ対策……テロ対策……」


 スタッフが多く入ってきて準備を進めているスタジアム。

 その地下の部屋を一つ借りて、秀星はテロ対策を言われてどうするべきかと試行錯誤しながら結界を作り出す装置を作っていた。

 とりあえずこの段階になると、他のスタッフがどのようなことをしているのかある程度分かるリストのようなものを貰ったので、それの邪魔にならないように作らなければならない。

 ……まあ、もしもスタッフによからぬことを考えているものが混じっていたらアレなので、スタッフ側も無警戒というわけではないが。


「こういう対応って初めてなんだよなぁ。なんでテロ対策をやる部署をつけてくれないのかねぇ……」


 このイベントは魔法省にとって大きなものになるはずなのだが、安全管理委員会という席には秀星以外に存在せず、テロ対策を指示しながらスタジアムに派遣しながらもテロ対策に関しては専門家が付いてこない。


 ちなみに、『テロ対策 政府』をキーワード検索すると、秀星のスマホでは『外務省』の名前が出てきたのでそっちから人が来ると思っていたし、そもそも『頂上会議』の時代にもテロ対策部署は存在していたはずである。

 だが、現実はこのレベルである。

 今頃『なぜ我々が呼ばれないのだ!』と怒り狂っている人が多そうだが、アトムが完全にシャットアウトしているようだ。ついでに言えば、秀星に突撃されても何も言われてないのでどうしようもない。


「セフィアに聞いてもそのあたりのことは分からないって言ってたし……どうなってんだ?」


 セフィアの『端末数』は七十億を軽く超える。

 全人類を監視していたとしてもおつりがくるレベルで存在するのだ。

 そんな存在を相手にしても情報が抜けないとなると、『隙がないこと』においても天才なのだろう。


「とりあえず安全管理だから……客に被害が出ないようにすることも考えておく必要があるな。一応作られてるVIP席のことも考えておかないと……」


 直径三十センチほどの立方体に次々と魔法陣を書き込んでいく。

 見取り図のようなものを貰っているのでそれをもとにしているが、対応しなければならないことが多すぎる。

 もちろん、それが一人で出来るか出来ないかと聞かれたらまあできてしまうわけだ。


「うーん……わからん奴が来たら簡単にとらえて、わかるやつが来たらゲロ吐いてぶっ倒れるような感じにすればいいのかね?」


 一体どこでその判断基準を得たのか大変謎だが、それを基準にして緻密に魔法陣を加えていく秀星。

 当然のことではあるが、事件というのは発生してからの対応も重要だが、そもそも発生しないに越したことはない。

 攻める側がゲロ吐いてぶっ倒れるくらい反則な構築にしておけばいいのだ。


「確かグリモアで師匠と稽古しているときに言ってたな。テロをする方もタダじゃないって」


 謎基準の獲得に至ることになった犯人はミーシェのようだ。

 実際事実ではある。爆弾だろうが飛行機だろうが、それを用意する側にはコストというものがかかるのだ。

 魔法省のことがとんでもなく嫌いで、どれだけコストがかかってもいいと思っている人間がいたとしても、それが無意味になるのならやりたくないだろう。まだダンジョンに潜って高難度のモンスターを倒しに行く方が現実的である。


「うーん……面倒だな……仕方がない。母さんに教えてもらったことを応用しよう」


 転移神サラに何を教えてもらったのだろうか。


「ええと……選手と警備員とその他正式に登録されていない武器を持っていると判断したり、飛行機が向かってきたら強制的に転移するようにしておこうか」


 事前情報だが、『このスタジアムの上空を当日に通る予定がある飛行機は存在しない。存在する理由もない』ということと、『近くの空港からスタジアムにかけて交通網の整備をアトム主導でおこない、海外からのお客さんであっても問題なく抱えられるようになっている』という二つの情報があるのだ。


 要するに、『変なところから飛行機が飛んで来たら、制御が効かない事故が発生しているか、突撃する気満々』ということになる。

 加えて、アトムは必要以上の特別扱いはしない。

 この交通整備に関してもそれ相応のコストをかけているので、これ以上は譲歩しない。

 譲歩しないことで何かしらデメリットを受けるのではないか?という意見もあるが、資源とエネルギーと食料という三大要素が日本は世界二位なのだ。原因は魔法である。

 ちなみに一位はアメリカだ。あそこはどうにもならん。

 こういうパワーバランスの再構築があったりするので、魔法社会が表になるのが嫌な国があったりするのだが、それはそれとしよう。


「よし、おおむねの方針はできた。あとは転移阻害手段を貫通する手段だな」


 『無効化』からはじまり、『【無効化】の無効化』となって、『【無効化の無効化】の無効化』といったようないたちごっこが始まるのが神々の領域だが、さすがに人間レベルなら裏の裏の裏の裏の裏の裏の裏くらいまで対応しておけば問題はない。


「よーし!やるか!」


 方針は定まった。

 ……大雑把だが、二日前に呼ぶ方が悪い!

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