第八百三話
クリスマスイブにイベントをする。
それだけなら何の問題もない。
沖野宮高校の日程表を確認すると、どうやらすでに終業式が終わった後だ。
二年前より以前、要するに秀星が魔法の力など何も持っていなかったとき、クリスマスなど周りが叫んでいるだけで何も思うところなどないのだが、こうして選ばれたとなるとなれば仕方がない。
「クリスマスのイベントですか……なんだかとても楽しそうですね!」
何やってもそういうであろう言葉を椿が言った。
……というと意地悪な言い方だが、笑顔でとても楽しそうである。
椿は大体のことは好きなので、イベントで何が行われているのかはわからないが、きっと楽しいことになると思っているのだ。
「お父さんは参加するんですか?」
椿は自分の手にある招待状をこちらに向けてきた。
そこには宛先として椿の名前が書かれており、クリスマスイベントは招待制であることがわかる。
「いや、俺は安全管理委員会に呼ばれることになった」
「安全管理?」
首を傾げる椿。
おそらく、『一体どこで何をするつもりなんですか?』という考えだろう。
最近の傾向からするとバトルロイヤルをまたやりだしそうだが、そうなった場合は秀星が作った結界を使えば全員の命の危険はないはずである。
そんな状況で、『安全管理』のための部署を必要とするというのが理解できないのだ。
「そこで何をやるのかは俺もまだ聞いてないよ」
「むうう……とても気になりますね!でも、きっと楽しいですよ!」
それに関しては面白く作らなければ意味がないので必死になって調整しているところだろう。
招待制であり、テレビでも放送されることを考えれば、楽しい内容にしないと、おそらくやっていることは派手だけど面白くない番組になる。
……アトムは『バトルロイヤルは生放送に全然合わないんだよねぇ……』と黄昏れていた。
当然だ。バトルロイヤルで秒単位で面白い部分があったら、それは単なる乱戦状態である。ス○ブラではないのだから常に面白くはならない。
だから遭遇戦形式の番組は編集されてかなりカットされたり、カメラスタッフと話したりするのだ。ぶっちゃけその会話シーン意外なんの見せ場にもならない人は少なからずいる。
「お父さんが安全管理委員会に入るということは……思ったより使う場所も広そうですよね。セフィアさんもいますし」
「どうなんだろうな。まあ、どっかのスタジアムでも借りて、何人かで小さいフィールドでやり合うと思うぞ。開始一秒で会場壊滅もあり得るけど」
「確かに出力を考えたらありえますね。それを禁止したらスタジアムを借りる意味はないので、やっぱりお父さんが新しくダンジョンでも作るんですか?」
「わからん。まあ別に作れと言われて時間がかかるわけじゃないしな」
秀星は自分が思いついていなかったとしても、大体の人間がやれというようなことならこなせる。
案外ギリギリまで隠している可能性もあるが……。
「アトムさんは未来でも結構イベントを考えてますけど、ギリギリまで結構隠してますからね」
「上司にはしたくないな……」
「お父さんは未来では冒険者ギルドの職員なので実質部下ですよ」
「……」
秀星は『とっても嫌そうな顔』になった。
というか未来の自分はなんでそんなところに入ったのだろうか。
「……まあ、いいや。アトムは何を考えてるのかまだいまいち見えてこないけど、中旬である今はまだ議論……っていうか外部との交渉中なのかもしれないし……」
上司にすると疲れる男が権力を持ったものである。




