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第八百二話

 魔法というものが裏社会から表社会に出てきて、ほぼ一年。

 オリディアが世界樹を狙って地球にやってきたことでモンスターの存在を隠せなくなり、それにつながるように魔法の存在が表に出た。

 そこからはアトムをはじめとする現在の魔法省の職員となる官僚たちがあちらこちらで調節を行った結果、必要最低限と思われる法律も制定され、世界は魔法を受け入れた。


 新年度が始まると同時に、沖野宮高校は正式に『魔法学校』と認定され、多くの新入生も入ってきた。


 その後は多数のバトルロイヤル映像が撮影され、そしてそれをうまく編集してプラスなイメージとなるようにアトムが魔法省の公式ホームページで公表。加えて、日本の財政に真っ向から喧嘩を売る魔法省の投資のやり方に総理大臣がのっかったことで財政問題が徐々に緩和されたことで景気が良くなっているので、『魔法』はともかく『魔法省』は国民に受け入れられている。


 そのころから秀星は、父親の職場の島に行ってそこで未来から来た娘と出会ったり、天界神ギラードルが新しい天界政府を地球を軸に作ろうとしていたのでそれを防ぐために戦ったり、自分が過去にいた頃よりも百年後の異世界グリモアに飛んでいって『真実国ユイカミ』を発展させながらも神祖に出会ったり、剣の精鋭メンバーの一部がメンバーとして残っていて不安があるようなので天窓学園との合同演習ということで触れ合った結果一部のメンバーが抜けたり、椿が沖野宮高校に入ってきて一緒に学ぶことになってそれまで力を隠していた新入生や上級生が力を示しはじめたり、強硬派の神祖による神器収集によって天界がガタガタになっていたりと……まあ秀星スケールでいうと別にそうでもないことが多々あった。


 ちょっとインフレしすぎて訳が分からないことになっている部分はさすがの魔法省も隠しているため、まあ……大体平和である。


(ふーむ……まあ、このあたりで思いっきりイベントをやりたいっていうのは分かるんだが……イブにやるのか)


 秀星は魔法省の役人が届けてきた『クリスマス特別イベント安全管理委員会任務依頼について』という名前の封筒の中身を見ていた。


 クリスマスイブに予定されているようだ。

 というより、表社会におけるクリスマスというのは大体予定がどこもあるようなものなので、あまりにも突っ込めるところがなかったようだ。

 しかも、新しく魔法という概念が表に出てきて、そして評判のいい魔法省が多数のメディアを使って大々的に予定していたらしい(秀星は知らなかった)イベントということで世間の評判はとても高まっている。


 結果的に、『魔法がかかわらないイベントへの集客』に関しては大打撃になる可能性が高いのである。


 ちなみに魔法関連組織であっても広報のためにアイドル事務所と契約している場合は多いが、それでも元から多数のファンを抱えている事務所が相手となると、魔法省でも『イベント会場を押さえる』というのは交渉が難しい。


(で、俺は安全管理委員会と……どんだけ派手なことをやりたいんだか……)


 日時とおおよその規模が書かれているが、秀星が安全管理委員会に入るという以上、なんだかすごく不味い予感がしなくもない。

 それに、おおよその規模といったが、アトムが用意した資料にしては要領を得ないものだ。


 ちなみにこの資料を持ってきた官僚君に『クリスマスイベントって……もしかしてアトムがサンタのコスプレでもやるのか?』と言ってみたところ、『次官は何でも似合いますからね。腹立つんですけど』とのことだ。

 まあ確かに、アトムは高身長のイケメンだ。

 まだ二十歳になったばかりととても若く……まあそれにしては精神年齢が高いのだが、確かに何を着ても映えるだろう。

 さすがに初手からそんなことをするとは思えないのだが……結構、ハッちゃけると決めたら容赦しないのがアトムなので不安だ。


「さて……まあ、なるようになるか」


 神々は来ないだろう。

 それなら、何が起こったとしても秀星がどうにかできる話だ。

 そこに違いがない以上、緊張感はない。

 いつものことである。

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