第六百八話
ドラゴンの支配を解除し、餌付けと強化を行って、丁重にお返しする。
という遊びを考えたのはいいものの、秀星は途中で思った。
一体何が楽しいんだこれ。と。
というわけで面倒になった秀星は、とりあえず状態変更の魔法をワンセットにまとめて使うというショートカットを行うことにした。
これにより、こっちに飛んできていたドラゴンが急に方向を変えて帰っていくという謎現象が発生するわけだが、秀星を正面から突破したいというのなら、『情報改変耐性』くらいは常に張り巡らせていないと簡単に傀儡になる。
一度面倒になるとそこからはずっと萎えるもので、すぐにお帰りいただくことになった。
★
「神聖国の教会の支部が壊滅した?」
アルトは首を傾げた。
ユイカミでは魔法技術が進んでいるので、魔道具を使った通信手段が存在する。
電話を再現しようとしたことはなんとなくわかる。
ただ……自動車に乗せるのではないかと思うほどデカイ。
三キロくらいありそうな巨大な物体である。
本来は据置型のものから作られるはずで、もちろんそっちも存在するのだが、アルトの普段の業務は城の地下にあるダンジョンの攻略であり、据置型に意味はない。
ただ、基本的に魔道具というものは携帯することをほぼ前提に作られていることが多いため、バカでかい通信魔道具を使うハメになるのだろう。
「ドラゴンが何体も集まって襲撃、その支部にあった最強の砲撃型魔道具も無傷で耐えきる……え、他国に救援要請?大丈夫。そのドラゴンたちは秀星さんが餌付けしてるから……うん。僕の冗談ならいいとちょっと思うんだけどね……わかった。また連絡してね」
さり気なく秀星をディスっているような気がしなくもないが、秀星の普段の行いを考えればこれが普通である。
「姉様。早速ドラゴンが襲撃したみたい」
「そうみたいね。これで、教会の主要な施設がなくなったといっていいでしょう」
そもそも、ドラゴンを召喚するというのが、この世界の魔法文明レベルを考えるとすさまじい話である。
ただ、それを行えるほどの施設は、魔力を独占し続けているといってもそう多くはないだろう。
「さて、攻めるならば今ですが……」
「神聖国の情報操作のレベルが思ったより厄介なんですよね……」
「上も下も無能ですが、魔力という圧倒的な物量がありますからね……」
圧倒的な魔力があるということは、言い換えれば様々な魔道具を同時に動かせるということだ。
しかも、本来なら燃費を気にしなければならないポンコツ魔道具でも容赦なく使える。
本来なら削っていかなければならない『燃料コスト』というものを無視するといえば、その頭のおかしい部分がわかるだろう。
「結果的に、証拠がなくて大義名分がないんですよね。どうしましょうか」
「ただ、これからは向こうから襲ってくることもあるでしょう。いずれにしても、神聖国からの援助を受けず、それはおろか神すら信じていない私たちが目障りだと思っている人は多そうですからね」
ヴィーリアがフフッと笑う。
秀星がいたら、『まあそもそも……ハードSMのR-18小説を経典扱いしてる宗教国家なんて滅ぼしたほうが世のためだろ』とか言い出し始めないので、ユイカミができるテンポでやっていくほうがいい。
ただし、高志と来夏が乗り気なので、たぶんそうはならないだろう。
「姉様」
「?」
「これから、僕たちの思っている通りに話が進むと思いますか?」
「……それに対して首を縦に振れるほど、私の心臓は強くありませんよ」
そう、結局はそこに行きつくのだ。
だからこそ、偉大な人間はこういうのだ。
『もう、どうにでもなれ』と。




