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第二百五話

「思ったんだけどさ。あの歪んだ魔力の場所に出入り口があるっているのはわかったけど、どうやって入るの?」


 さて、そろそろ出発するか。という雰囲気になったとき、アースーがそう言った。

 全体の空気が氷点下まで下がり、全員が秀星の方を見る。

 どうやら、全員が全体指揮を取るデイビットが役に立たないことを全員が把握しているようだ。

 虚しい信頼関係である。

 とはいえ、集まったのにこのまま帰るわけにはいかない。

 秀星は頷いて言う。


「あの手の拠点は、出入り口は見えなくてもしっかりとした扉になっている。さらに言えば、鍵を開けると同時に扉そのものが開くような設計だ。まあ傍目からは扉が開いているようには見えないが、しっかり開いてる。開いてるってわかっていれば目をつぶっても入れるだろ」

「あのモヤモヤに対して解錠魔法を使えば入れるということですね」


 アリアナが補足する。

 秀星はうなずいた。


「というか……似たような任務はなかったのか?」

「別空間に拠点を用意するって言うけど、結構大きな技術だからね」


 アースーが遠い目をして言う。

 それだけで秀星はなんとなく察したが、あえて何も言わないことにした。


「それで、その解錠魔法というのは……」

「いや、ここに集まっている公安の人たちなら知っているレベルの魔法で問題ない」

「……鍵の方には細工が少ないということですか?」


 ミラベルが聞いてくる。


「というより、最初からその程度しか用意していなくて、発見される空気がないから放置しているだけだ。まあもともと、こういう拠点を作るやつっていうのは、ハイテクばっかり使おうとしてそれまでの技術を使いたがらないパターンもある」

「例えば?」

「アースーは見たことないか?熱源や重量を感知するセンサーや、赤外線を使った発見システムだとか、そう言った技術を盛り込んだシステムばかり使って、監視カメラを一台もつけないっていうパターン」

「あー……コンビニでもやってるのになんでないんだろうって思ったことがあるね」

「そんな感じだ。で、俺が言いたいことはわかったな?解錠魔法を使ったあとに飛び込めば、景色がガラッと変わって拠点の中に入れる。もちろん、すぐそばに罠がある可能性も否定はできないが、気にしすぎても仕方がないからな。ただ、地の利が敵にあるのは事実だから、迎撃システムには注意しろ」

「ふむふむ。なるほどわかったできる限り最高で行けってことだね」

「まとめるとそんな感じだ」


 場の空気が『本当にそうなの?』と言いたそうにしていたが、秀星とアースーは無視する。


「ただ確実なのは、拠点内部に侵入したあと、外部に連絡を取れる可能性は限りなく低い。援軍に行ける可能性は低いから、敵の戦闘手段に時間的な制限がない限り、時間稼ぎを戦術に入れるのはやめることだ」

「秀星っていろいろ知ってるんだね」

「まだいい足りないがこれ以上言っても仕方がないから、今言ったことは気をつけるように」

「秀星さんって、デイビットさんより全体指揮をとれそうですよね」


 アリアナの一言でデイビットが視界の端で崩れていくのが見えた。

 秀星としては頑張れとしか言いようがない。

 そんなどうすればいいのかわからない空気になったが、作戦開始だ。

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