第千二十話
『検索するのめんどいわ!おりゃあああ!』
グレイが火炎放射を放った。
「フフフッ、こっちはスパコンの演算能力がついてるぜ!」
それを楽々回避して、突撃して宝剣をグレイに叩き込む清磨。
インカムから指示が行われているようで、グレイを煽る様に楽しそうに叫びつつ、ボス部屋の中を歩き回っている。
『ボス部屋の外にスパコン並べて地上と通信するのはずる過ぎるぞ!我、部屋の外には何も影響を与えられないのに!』
「その情報を買って手に入れたからボス部屋の外に設置してるんですうううっ!」
清磨は煽る様に次々と攻撃を叩き込んでいく。
……しかし、効果が全くないとは言わないが、グレイの自動回復効果が高すぎて、結果的には全然効いていない。といった雰囲気になっている。
「クソッ、元からスペック高いのに回復能力が高すぎんだろ!」
『フハハハハッ!もともとソロで挑むようなものではないぞ!』
現在、清磨はインカムをつけてはいるがソロで戦っている。
理由は簡単で、社員たちが圧倒的に出力不足だからだ。
グレイの防御性能と回復性能が高すぎて『宝剣』を持っている清磨と比べて出力が違いすぎるため、ゲームバランスに影響すら与えてしまっている。
加えて、何度も何度もグレイを相手に戦っている清磨は、質が最大まであがる『最高値移行』を手に入れて以降、やってこなかった『全力の戦闘』をやっているため、尚更、社員たちとの差があるのだ。
何かしらの強力な装備を手に入れることができれば別だが、それができていない現状、社員たちを混ぜてヘイト管理の難易度を上げるよりも、清磨一人で突撃した方がやりやすいのである。
「ふう、楽しいねぇ……」
『我も楽しいぞ。というより……そこまで楽しそうに、戦いに臨む奴を見るのは初めてだ!』
グレイは再び火炎放射を吐いた。
「おいおい、ブレス攻撃ばっかりになってるぞ?それ相応に集中してるみたいだな!」
宝剣を振るってブレスを割く清磨。
本来なら回避を選択してもいい場面だが、彼は今、スパコンとボス部屋の外に設置された高性能カメラやセンサーによって得た情報から正確な速度や威力を推測したデータを受け取っている。
そして、その速度があまりにも早い。
ブレスを割いた清磨は、そのまま突撃して、宝剣を光らせると斬撃を飛ばした。
グレイはまたブレスを放出し、そのまま斬撃を焼き尽くす。
『ぬう。我がネット環境を使えてもほぼ意味がないではないか』
スマホを片手に愚痴るグレイ。
……というより、パソコンを持ち込むのなら、清磨のように『演算能力』や『処理能力』を求めるべきであり、グレイのような検索などえっちらおっちらやるものではない。
まあ、実年齢一歳未満に戦闘中のスマホの使い方などわからないとおもうけどね。
「しっかし……なかなか通らないのは変わらんな。効果も薄いし……」
大変面倒なことになった。
圧倒的に火力が不足しているのだ。
そもそも時島グループの中で最も火力が出る清磨がほぼ意味がないとなれば、社員たちはいくら入ってきても意味はない。
(まあ、攻撃力は足りてないが、防御力や回避力が十分通用することは分かった。現代文明って偉大だね)
とりあえずいい収穫があったと思うことにした清磨。
(後は火力……本当に困ったな。どうしよ)
ただ、だからと言って現状の解決には程遠いことも事実であった。




