第千十九話
「おらっ!このやろっ!よっしゃあああっ!」
『ぬおおおおっ!環境キャラで負けたあああっ!』
清磨。グレイと格ゲーやってる……。
あ、ゲームをやっているなら知ってる人は多いかもしれないが、『環境キャラ』というのは、動かしやすさやダメージ量、出せる動きの相性などで他のキャラよりもかなり優位に立てるキャラだ。
そのゲームの大会などが行われていた場合、そのキャラを織り交ぜてどう戦うのかが重要になる。
カードゲームなら『環境デッキ』と呼ぶこともあるよ。
「ハッハッハ!環境キャラを使っても勝てないなんて、もっと練習したの方がいいんじゃねえの?」
『貴様はスキルで『格ゲーの質』を限界まで高められるだろうが!スキルをバンバン使いまくってるのは知ってるぞ!』
煽る清磨に対して怒鳴るグレイ。
「何言ってんだ。禁止されてねえんだし、別にやったっていいだろ」
『貴様、ラスボスを前にして『正しいと思ったことは何でもやっていいです』とかよく言えるな……』
いくら単なる遊び相手だからって遠慮がないのはどうなんだ……と言いたそうにしているグレイだが、放置することにした。
ここまで来れるような生徒で、ワイワイ騒ぎながらゲームに付き合ってくれて、しかもそのゲームが上手い人なんてそうそういない。
実年齢一歳未満のゲーマードラゴンにとって、こういう相手はいた方が精神的に良いのだ。
「そういや……グレイって何か食べたりするのか?そういう様子がないんだが……」
『我は何も食べなくとも問題ないようにできているからな』
グレイが何かを食べている様子はない。
まあ、体内の魔力だけで生存できるように作られているのだ。
『というより、他のダンジョンのボスもそうだと思うがな』
「それもそうか」
ダンジョンのラスボスが部屋に入った時には死んでいて、その死因が『餓死』だったら目も当てられない。
プレイするゲームを変えつつ、清磨はダラダラと話す。
「ラスボスの死因が餓死だったらどうしようもないしな」
『ああ……ただ、部屋に入ったら先客がいて、ラスボスと一緒にゲームやってる方がシュールだと思うぞ』
確かに。
仮に、緊張感と高揚感、これからラスボスに挑み栄光を手にするという熱い意志を胸に、挑戦者が扉を開けて、その先ラスボスがどこの誰かもわからん子供と一緒に『どう森』やってたらなんて思うだろうね。
せめて『マイン〇ラフト』で『エンダー〇ラゴン』と対戦していてほしいだろう。
……いや、一体何を言っているんだろうか。
「……ていうか、このボス部屋って普通にゲームできるんだな」
『電波がつながってるからな』
「てことは……拠点作ってパソコンを用意すれば外と通信できるのか?」
『あっ……』
グレイが『しまった』と言った雰囲気の声を出した。
いや、それが直接的な要因になるかどうかはともかく、すごく『嫌なこと』が起きそうだから声が漏れたのである。
『ただ、我としては泥沼化する未来が見えるぞ』
「だよな」
時島グループでは電子機器の開発もやっているので、回線を引くための設備を引っ張ってくれば、実際に通信できるだろう。
だが、一体で戦うグレイも使用制限はない。
ラスボスの大型ドラゴンがスマホ片手に挑戦者を待ち受けるのもどうかと思うが、そもそもグレイは腕が短く、ブレス、魔法、尻尾で戦うタイプなのだ。まあ、一応ワンパンで鋼鉄の戦車くらいは鉄クズにできるけどね。
そのため、別にスマホ片手に戦うとしても、戦いには何の邪魔にもならないのである。
集団VSラスボスという今回のこの構図。
これにネット環境を組み合わせるとどうなるのか。
なんだか……お互いにすごくめんどくさいことになりそうだ。だって扱える情報量がお互いに多すぎるからね。
「……泥沼化したら、『時島グループVSグレイ』の戦いではネット環境禁止という協定を結ぼう」
『いいだろう』
清磨の提案にうなずくグレイ。
ただ忘れてはいけないのは、この二人自身はそこまで計画性は高くないということである。




