第千十四話
「頑張ってるな」
「明確に組織のメリットになることだもんね。そりゃ頑張る気にもなるよ」
「風香は気にならないのか?チケットダンジョンのラスボス」
「すでに最終形態まで追い込んでグレイの最後の一撃をビンタで壁にたたきつけてから帰ってきたから、倒した判定にはなってないけど倒したようなもんだよ」
グレイさん涙目である。
「なるほど……」
「秀星君は自分で作ったからあんまり興味ない?」
「そもそもチケットダンジョンに行く予定すらない」
なんせ胴元なので。
自分が作った箱庭で暴れまわる感性も持っていないので、チケットダンジョンに関してはほぼ放置である。
「清磨君がいれた新一年生。みんななんかすごいよね」
「どんなふうに?」
「無理した様子もなく、自然体なのに、なんだか隙がないっていうか……」
「清磨のスキルで質が高まってるからな。それが影響して、隙が埋められているんだろう。だからそう見えるんだろうな」
「なるほど」
ただ、スペックの範囲で最高値まで上げるのが清磨のスキルであり、おそらく魔力的な部分を込みで強化されているため身体能力は高いだろうが、それでもドラゴンのような膂力の塊のような存在を相手にする場合は話が別だろう。
「そういえば、どうしてあんな風に設定したの?」
「作ったのは俺だが設定は椿だ」
「あ、椿ちゃんが作ったんだ」
「というより、最初はボスモンスターそのものがいなかったからな。強いモンスターは確かに設定してたけど、基本的にボスモンスターは設定してなかったな」
「だから基本的にボスモンスターが設置されていないんだね」
そんな感じの経緯でボスモンスターを配置することになり。そうしてできたのがグレイなのである。
「ちなみに初期設定では名前が『黄金竜王ゲンキ・モリモーリ』だった」
「椿ちゃん……」
ラスボス涙目である。
言うほど別に元気ってわけじゃないのに。
「ものすごく暇そうだけど、普段は何をしてるの?」
「パソコンを自作してネット環境に潜り込むくらいのことはするだろ。器用だし」
「それは確かに器用だね……」
実際にラスボスだし、オンラインゲームでそれらしいプレイをしている可能性もある。ただ、それはオンライン上でも暇になるということになる上に、黄金竜王としてのグレイと、オンラインゲームプレイヤーとしてのグレイがごちゃごちゃになる可能性が非常に高いのが難点だが。
「となると、意思があるけど特に放置しても問題はないわけだね」
「現代人はスマホ与えておけば何とかなるからな」
「雑……」
確かに雑だが否定されにくい項目でもあるのが痛いところだろう。
「清磨君たち、あのラスボスを倒せるのかな」
「少なくとも十回や二十回じゃ無理だろ」
「そうかな」
「あのドラゴン相手だと、清磨と敦美のような時島グループでも上位ならともかく、百人くらいがいてもいなくても一緒だ。清磨一人で全然かなわなかったことを考えれば、人海戦術でどうにかなるようなものじゃない」
「あ、そっか。範囲攻撃の威力もすごいもんね」
「形態を変えるごとにスペックだって上がって行く。まあ、アイツらなら一回目でそれがわかるだろうさ」
「なるほどねぇ……」
まあその場合、秀星に文句を言ってくる可能性が非常に高いのだが。
『テストプレイやってねえだろゴルア!』みたいな感じで。
「ただ……あんなにスペックが高いボスを設定しようっていう気持ちが椿ちゃんにあったっていうのがなんだかね……」
「概算値のスペック表だけもらったからそれの通りに作っただけだけどな。最終的に、誰かと挑むつもりだったんじゃね?」
「え、でも、そんな雰囲気は全くなかったよ?」
「忘れてたんだろ」
「ありうる……」
椿だからね。
「まあ、今は清磨たちの頑張りの高みの見物としゃれこもうか」
「秀星君。悪い笑みを浮かべすぎだよ」
「いろいろと鬼畜な設定も盛りだくさんだからな。まあ、セフィコットに注文すれば情報は手に入るし、さらにチケットを積めば、すごく強いアイテムを作れる素材や、アイテムそのものを買うことだってできる。まあ、さすがにアイテムは第一形態を突破しないと解禁されないが、ラスボスに挑むプレイヤーらしく頑張ってもらおうじゃないか。クックック」
要するに……朝森秀星という男は、基本的に優しくはないのである。




