第千十二話
チケットダンジョンのラスボス。
黄金竜王グレイ・リーサルドーラ
正式名称ははあと漢字四個分くらい長いのだが、それはそれとして、朝森秀星が直々に作り上げた竜型モンスターである。
黄金の名の通り、全身が金色の鱗で覆われており、衝撃に対する抵抗力は圧倒的である。
腕がそこまで長くはなく、長い尻尾とブレス攻撃と魔法が基本戦術となるモンスターだが、その攻撃の幅は圧倒的。
「おわああ!あぶねええ!」
宝剣を振るいつつ、何とか接近を試みる清磨。
しかし、グレイのブレスはタイプ別に分けられており、広範囲型、レーザー型、球体型など、様々だ。
属性にも縛られず攻撃してくるそれらは、一撃でも与えれば即座に魔道具の障壁が崩壊するだろう。
『ハッハッハ!よく動くな小童!』
「うるせえな!ていうか、このダンジョンができたのって去年だろ!俺の方が年上だろうが!舐めてんじゃねーぞ一歳竜!」
言い返す清磨。
事実ではあるが……まあ、思ったより余裕があるらしい。
「チッ、全然近づけねえな。おりゃ!」
清磨は剣を振り下ろす。
すると、飛ぶ斬撃がいくつも出現してグレイに襲い掛かった。
『脆いぞ小童!』
グレイが広範囲のブレスを放つと、その圧力で全ての斬撃がかき消された。
「おいおい。ここまでお前みたいなボスモンスター何て1体も配置されてなかったのに、なんで唯一にして最後のモンスターだけがやたら強いんだよ!」
『我が創造主である朝森秀星の趣味だ!』
「聞きたくなかった裏事情だな。死ねやオラッ!」
振り下ろすように宝剣を振る清磨。
先ほどよりも巨大な斬撃が放出される。
しかし……。
『スペックに違いがありすぎるぞ小童!』
尻尾を振るう。
それだけで、清磨が放った斬撃は砕け散った。
「全然効かねぇ……しゃあねえ。俺が今出せる全力の……何歩か手前だな」
『全力を出さぬのか?』
「戦略的にな」
清磨はそういいつつ、剣に魔力を込め始める。
すると、剣からグツグツとマグマのようなものがあふれ始めた。
『ほう……』
グレイも口にエネルギーを集める。
「いくぜ!『イラプション・バースト』!」
『煉獄神葬撃!』
双方から放たれる、火山の噴火のような攻撃。
二人の中心……いや、勢いそのものが違うのか、清磨に近い距離で二つが衝突する。
だが、一秒も持つことなく、清磨が放った噴火は押し戻されて、清磨自身を飲み込んだ。
「うおああああああっ!」
装甲がまとめて消し飛んだ清磨。
「……チッ……スペックおかしいだろ。そっち」
『ククク。我は攻略不可能な設定が与えられているのだ。優秀なメンバーを集めてかかってくると言い』
「ああ、次は150人で来るぜ」
『え?いや、ちょっ、最近のオンラインゲームは知らんけど、そんなに多くな……』
清磨は転送された。
★
「あークソが!ものすごく強いぞあのドラゴン!」
「ラスボス。というだけのことはありますね」
チケットダンジョン近くのベンチ。
そこでは、清磨と敦美がベンチに座っていた。
清磨は敦美の膝枕でギャーギャー言っているわけだが、いつも通りということにしよう。
「攻略不可能っていう設定らしいぜ。あのドラゴン」
「そういわれても納得するほどのスペックでした」
「次は150人で来るって言ったらビビってたけどな」
「子供みたいな事しないでください」
「いやー。嘘だと思って笑い飛ばすと思ってたんだが、思いっきり信じちゃってね。面白かったぜ」
「本当にするつもりなのですか?」
「一回やってみるのも面白いだろ」
「まあそれはそうですが……」
地獄のようなことになりそう。
「まあ、しっかり準備して挑んだとして、本当に倒せんのって思うくらい強かったけどな……」
「ふむ……ただ、挑むだけならタダですし、一度、あのドラゴンを倒すためだけにチケットダンジョンに挑むのも悪くはなさそうですね」
今回のチケットダンジョンの収益は零である。
チケットを放置してどこかに行った場合、一定時間が経過するとダンジョンに回収されるルールになっているからだ。
その場所まで行くのは結構ダルイので放置になるため、収益がゼロである。
全滅覚悟で挑む場合、誰もチケットを持ち帰ることができない。
……いや、本当に全滅する前に帰れやということになるのだが、そういう気分で挑んで勝てるような相手ではない。逃げる相手に容赦するような相手ではないだろうし。
「秀星先輩に文句言いたい気分ではあるが……とりあえずドラゴンをぶっ倒した後で文句を言おうか」
「そうですね」
勝てないから難易度下げろ!というのは楽だが、そんなことを聞いているとどうしようもない。
だが、勝ったけど他のモンスターとかかるコストが違いすぎるからおかしい。という言い方をすれば通る可能性はある。
「よし、準備するか!」




