第千十一話
「フフフ……」
「どうしたのですか?清磨様」
「敦美。俺は画期的な方法を思いついたぜ」
「そうですか」
ダンジョンの奥底。
そこで、ポイントに換金する宝石を手に、清磨は不敵な笑みを浮かべる。
「この換金アイテムそのものを、俺のスキルで強化すればいいんだよ!」
「なるほど」
「ん?なんか反応が薄いな。まあいい。見ていろよ。『最高値移行』!」
元気よく叫ぶ清磨。
そして、膨大な魔力が宝石に流れ込む。
流れ込む……が、清磨は首をかしげる。
「あれ、無機物にやった場合、大体ここからひかりだすはずなんだが……」
「換金用の宝石はスキルの影響を受けませんからね」
「最初に言ってよ!なんで教えてくれないんだよ!」
「影響を受けないといっても清磨様ならすると思ったので」
「……」
否定はできない清磨。
「ていうか、俺のスキルの影響を受けない物質ってあるんだな……」
「ん?」
「いや、こういうのって、デメリットを受け付けないとかそんな感じが普通だろ。俺のスキルって基本的にメリット効果じゃん」
「チケットの運営側からすれば清磨様のスキルはデメリットですからね」
「……そうだな」
作戦失敗。
「じゃあ、敦美は何かいい稼ぎ方は見つけたのか?」
「じゃあって……清磨様が勝手に思いついて自滅しただけでしょう。私のタイミングには何の影響もないのでは?」
「ぐっ……」
「まあ思いついていますが」
「えっ!?」
「集計結果として、一日で500万ポイントほどダンジョンで稼いでも、運営側が文句を言うことはありませんでした。これを考えれば、まだまだ『隠し持っているところ』がいるはずです」
「ほう。なるほど……ん?500万?」
「清磨様が暴れると、合計でだいたいそれくらいの数字になります」
「いやそうじゃなくて、生徒会と取引した時の金額って400万ポイントじゃなかった?」
「そうですね」
「いや、そうですねって……」
今更気が付いたかこの愚か者め。
……と言いたそうな目で清磨を見る敦美。
まあ、清磨の方は別に気にしていなさそうなので、いつもこんな感じなのかもしれないが……それはそれでどうなんだ。
「そこから考えれば、まだまだ取り扱える商品の質の上限は上げられます。同時に、高い効果を生み出す『高額な消費アイテム』で稼ぐという手もありますね」
「ほー……なるほど」
あまりわかっていなさそうに頷く清磨。
……一応補足しておくと、彼は『最高値移行』で自分を最大限に強化してモンスターをぶん殴るだけで大体終わるので、他の魔戦士がどう戦っているのかなどほぼ気にしていないのである。
「……清磨様」
「ん?」
「本当に戦力外ですね」
「失敬な!」
敦美は忠臣ではあるが遠慮はない。
「……で、なんかダンジョンの一番奥まで来てしまったんだが」
「そうですね。チケットダンジョンの最下層ということでかなり周辺のモンスターも強力ですが……」
目の前にあるのは扉である。
その右には、特殊な結界に守られた『障壁魔法』を使える魔道具が置かれている。
これを使う場合、障壁が消えたら自動でダンジョンの外に放り出されることになる。
「なんだこれ」
「障壁魔法を使える魔道具ですね。これを起動することで中に入ることができます」
「なるほど」
「ただし、これを使って負けた場合、強制的にダンジョンの外に転送されます。ここまで手に入れた宝石と一緒に帰ることは不可能なので、敗北は大幅なロスになります」
「ま、挑まない理由はねえな!」
魔道具を掴んで起動する清磨。
敦美も起動した。
「さて、一体どんな奴がいるのかねぇ……」
ドアを開けて中に入る清磨。
そこには……。
『……ほう、ここに客が来るか。珍しい』
「全長……三十メートルはあるドラゴンだな」
黄金に輝く鱗で全身を覆ったドラゴンだった。
「お前がラスボスってことか。いいねぇ。カッコイイフォルムしてんじゃねえか。ぶっ倒してやるぜ!」
『面白い。遊んでやろう』
「行くぜ!……ん?どわああああっ!」
高速でエネルギーを口にためたドラゴン。
そこからレーザーのようなブレスが放出されて、清磨がいた場所を通過した。
地面は全く焼けていないが、そこに存在するエネルギーは圧倒的である。
そして……。
「嘘……」
敦美の障壁を、ほぼすべて貫通していた。
敦美自身、自分で展開できる防御魔法をいくつも使って、清磨基準でも十分防御役になれるほどの性能があったはずだ。
だが、それを全て貫通した。
「……すみません。清磨様」
敦美は転送されて消えていった。
『どうした?小童。我はこのダンジョンのラスボス。そんな甘い存在だと思っていたのか?』
「……いや、別にそういうわけじゃねえよ。ただ……側近にも見せたくない奥の手っていうのは、男にはいろいろあるもんでな」
『ほう、面白い。見せてみろ』
「後悔すんなよ金ぴかドラゴン!」
清磨は指を鳴らすと、右手に剣を出現させた。
刀身が宝石のような色になっている『宝剣』と呼ぶにふさわしいものである。
「準備運動すらなかなかできなくて退屈してたところだ。こちらこそ付き合ってもらうぜ!」




