第千五話
「そもそもポイントチケットの稼ぎ方ってどんな感じなんだ?」
「基本的にはダンジョンに挑むことですね」
「地道だなぁ……」
ポイントチケットを手に入れようとして情報を集めようとする清磨。
なお、彼が所属するクラスである一年二組は、彼以外のすべての生徒が時島グループの人間である。
言い換えれば、彼以外全員が女子である。
それで問題がないのかといわれれば……まああるわけだが、清磨の影響で男子生徒がすごく肩身の狭い思いをするに決まっているので、それで仕方がない。
で、その男子が清磨しかいない二組の教室で騒いでいるわけだ。
「一体何でそんなことに?」
「魔戦士の本業がモンスター相手に戦うことだからです」
「反論の余地がなくなっちまうじゃねえか」
何度も言うが、魔戦士の本業はモンスターから素材を手に入れて魔戦士市場を活性化されることである。
「ただし、人海戦術はとれます。ダンジョンに挑むことそのものに付加価値を加える形でポイントチケットの入手が関係していますから、宝箱を見つけたり、強力なモンスターを倒したりすることでも手に入ります」
「ほー……」
「ただ、ダンジョンそのものが特殊です」
「ん?」
清磨は首をかしげる。
ダンジョンそのものが特殊というのはどういうことなのだろうか。
「魔法社会が表に出てきてから様々なダンジョンが発見されていますが……」
「そこは取り繕わなくてもよくね?」
「……そうですね。朝森秀星が大量にダンジョンを作り、それを基にこの沖野宮高校のカリキュラムも設定されていますが、『ポイントチケットを手に入れることができるダンジョン』はまた別にあります」
「へぇ……チケットダンジョンって挑んだら単位につながるのか?」
「単位にはつながりますが、日本円にはつながりません」
「なら、決まりだな。時島グループはそっちのダンジョンだけ挑もうぜ」
「それも不可能です」
「え?」
「チケットダンジョンは、セフィコットが監督し、一から作られたダンジョン……言い換えれば、『ポイントチケットを手に入れるためだけに整備されたダンジョン』です。ポイントチケットに換金できる専用アイテムしか手に入れることができません」
本来のダンジョンであれば、モンスターを倒した場合、魔石を残してすべてが塵になって消える。
たまに追加でドロップアイテムがあるのだが、基本的には魔石だけだ。
そして、その魔石はエネルギー源としても活用されるものであり、買い手が多い。
そういったものを市場に流すために、ダンジョンに挑むことは有用であり、さらなる供給が期待されている。
「チケットダンジョンから手に入る換金アイテムは全てスコアが設定されており、それらはチケットに換金するときのみ判定されます。そしてこの換金アイテムは、魔石のような使い方はできません」
「あー……なるほどな。魔石の納品が単位にかかわるからか」
「はい。この学校を卒業するためには『実力』と『納品』が一定以上の水準に達している必要があります。チケットダンジョンに挑んだ場合、『実力』はクリアできても『納品』をクリアすることはできません」
「めんどくせえなぁ。チケットダンジョンの換金アイテムにも魔石みたいな効果を付与すればいいだけじゃねえか。秀星先輩なら普通にできるだろ」
「法律違反です」
「法律違反!?」
「複雑なので簡単に言いますと、『流通を破壊する可能性がある創造系統の技術によって生み出された物体の扱いに関する法律』に抵触します」
「あー……なるほど」
チケットダンジョンを運営する際、一からモンスターを作ることや、それに類する換金アイテムの作成でいちいち最初から工場まで用意するのは面倒なので、創造魔法を使っている。
創造系統の魔法は便利である。
しかし、それそのものが流通に影響を与えることは制限する必要があるのだ。
将来的な最悪のケースとして、『伝授不可能な創造系統の技術を持つ個人に依存した社会』になる可能性が十分にあるからである。
秀星は素材ではなく製品そのものを創造可能だが、こんなのが流通に混ざるのは面倒を超えて危険である。
もちろん『有事の際』と判断された場合はその限りではない。
「……なんでチケットダンジョンは魔石を使わないんだ?正直、秀星先輩の財力や実力なら、魔石を大量に買い込むことや、発見されているが挑むのが困難なダンジョンに潜り込んで大量の魔石を手に入れることだってできるだろ」
「それも法律違反です」
「そうなの!?」
「はい。『魔石再利用法』の一部に抵触します。その中では、魔石を基にモンスターを作ると法律違反になると定められています」
「……なんでそんな法律があるんだ?」
「魔石からモンスターをつくろうとした場合、高確率で爆発事故が発生するからです。朝森秀星が書いた実用書の一部を要約しますが、爆発のリスクを限りなくゼロにした状態で魔石からモンスターを作る場合、一個の魔石から一体のモンスターを作り出すコストは四千万円になります」
「高っ!」
そうなるメカニズムを説明すると面倒なので割愛させてもらうが、そういう理由である。
「軽い気持ちでモンスターをつくろうとするものはそこまでの準備をすることはないでしょう。高確率で爆発します」
「……ていうか、一体いつ調べたん?」
「魔法省のホームページには動画ページがあります、そこでは、魔法に関するそれぞれの法律の内容、罰則、制定理由の解説を魔法次官が行っています」
「……あの人って暇なん?」
「いえ、忙しいはずですが……」
アトムはイケメンだからね。動画でも映えるのさ。たまに目の下に隈を作ってるけど。
「……はぁ、仕方がない。普通のダンジョンでの納品はぱっぱと済ませるか」
「そうするべきでしょう」
「……しかしまぁなんというか、思ったよりしっかりしてるんだな」
「そうですね。清磨様はあまり調べないので私は大変です」
「ごめんね」
苦笑する清磨。
……自信家だが基本的に雑。という人間のようだ。なんかそういう奴、この学校に多い気がするけどね。
とりあえず元手の確保ということで、時島グループはチケットダンジョンに挑むことが確定した。




