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 弘毅は自分の横に腰掛けた奈津に

 「あ、ありがとう!…… 少しは気分が良くなった……」

 少し温かくなったハンカチを返した。

 「良かった!…… それはそうと……あなたの名前は?」

 奈津はまだ弘毅の身体を心配をしながら、

弘毅の名前を訊いた。

 『な、名前?……』

 弘毅は奈津に名前を聞かれて、困ってしまった。

 弘毅は自分の名前がわからなかった。

 「どうしたの?…… 何か、まずかった?」

 奈津は心配そうに弘毅のことを見詰めた。

 「……。」

 弘毅はなんて答えていいのかわからず、困った。

 そんな弘毅のことを察したのか、

 「言いたくないなら、別に言わなくて良いわよ……」

 奈津は気まずそうに弘毅に背を向けた。

 「ご、ごめん…… 名前がわからないんだ……」

 少し躊躇したが弘毅は素直に自分の名前がわからないことを

奈津に伝えた。

 『えっ?……』

 奈津はびっくりし、弘毅のことを見詰めた。

 「……じゃあ。住んでいる所は?」

 奈津は話題を変えようと弘毅に住んでいる所を訊いた。

 弘毅は悲しそうに俯くと

 「ごめん…… 住んでいる所もわからないんだ!……」

 奈津に謝った。

 「そう……」

 奈津もなんて言っていいかわからず、困り、押し黙った。

 弘毅と奈津の間に気まずい空気が流れ、居た堪れなくなった

弘毅は

 「もう良いよ!大丈夫だから……

友達が待っているんだろう?……」

 冷たく、奈津にそう言った。

 「だ、大丈夫だから…… 私が付いているから。

必ず、何かを思い出すから……」

 奈津は一人、自信満々な顔で何も根拠のない言葉を

弘毅にかけた。

 奈津のそんな言葉を聞いた途端、弘毅は頭が割れるほど、

再び、痛み出した。

 苦しそうな弘毅を奈津は見詰めながら

 「どうしたの? 大丈夫?……」

 弘毅に声をかけた。

 「うん!…… 何でもないよ!……」

 弘毅は平然を装いながら、顔を上げたが奈津は心配そうな顔で

弘毅のことを見詰めた。

 「良かった! 名前も住んでいる所がわからないのは

困ったわね!…… 何か、覚えていることはないの?……」

 奈津は何か、手掛かりを得ようと弘毅に覚えていることを訊いた。

 「何かと言っても?……」

 弘毅も自分の名前などが知りたくて、服のポケットを探ったが

 名前に繋がるモノは何も出てこなかった。

 ただ、一枚の写真以外は……

 その写真には弘毅と彼女らしき女性と何処かの浜辺で

写したモノだった。

 奈津はその写真を覗き込みながら

 「ねぇ?…… ここ、何処かわかる?……」

 弘毅に訊いた。

 「う~ん?……」

 弘毅はその写真を見詰めたまま、その写真の風景が

何処かを考えた。

 でも、その写真に写っている場所が何処なのか

わからないし、一緒に写っている女性が誰なのか、

弘毅にはまるでわからなかった。

 「ごめん。…… わからない。」

 弘毅は申し訳なさそうに奈津に謝った。

 「良いわ! 明日はちょうど日曜日だし、私はどうせ、

暇だからこの場所を一緒に探しに行こう!…… 良いよね?」

 奈津は半ば、強引に弘毅にそう言った。

 奈津に押し切られ、 

 「うん……」

 弘毅は少し戸惑いながら、頷いた。

 「じゃあ…… 決まりね!朝にこの公園に迎えにくるから……

それまで何処かで暇を潰していて!……」

 奈津はベンチから立ち上がり、弘毅の返事を訊かないまま、

夜の闇へと消えていった。

 『暇を潰せって言っても?・・・・』

 この東京で右も左もわからない弘毅は行く宛てもなく、

困ってしまった。

 奈津と約束した時間まではまだ8時間近くあり、

弘毅は行く宛てもなかったがとりあえず、奈津との

約束の時間まで暇を潰すために新宿の街に出た。

 弘毅がいた未来新宿は治安の悪く、殺伐とした街だったから

弘毅は夜の新宿の街を歩くのは怖かった。

 「こ、これが新宿の街か?……」

 今の夜の新宿の街を見た弘毅は驚いていた。

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