6
「でも……」
奈津は弘毅と祐子のどっちに行って良いのかわからず、
困っていると
「ねぇ…… どうしたの?奈津!」
祐子は急かすように奈津のことを再び、呼んだ。
奈津は蹲っている弘毅を一瞬、見ると振り返り、
「ごめん! 先に行っていて!……」
祐子にそう言った。
『え? どうして?……』
弘毅が驚いた顔で奈津のことを見詰めていると
奈津は弘毅の方に振り向くと
「大丈夫だから……」
弘毅に優しく、微笑んだ。
さっき、警察官から逃げてきた公園に弘毅は奈津と共に
舞い戻ると公園のベンチに腰掛け、頭を抱え、蹲った。
奈津は心配そうに弘毅の顔を覗き込みながら
「ねぇ。 本当に大丈夫? 救急車を呼ぼうか?……」
弘毅に優しく、声を掛けた。
「だ、大丈夫だから……」
弘毅は奈津に心配させないように明るく振舞ったが……
実際は弘毅は頭が割れるほど、痛かった。
奈津も隣にいる弘毅が辛いことはわかっていた。
心配そうに弘毅のことを見ていた奈津は
いきなり、立ち上がると
「ちょっと、待っていて!……」
と弘毅にいうと夜の闇に駆け出していった。
『ああぁ…… やっぱりかぁ……』
弘毅は蹲ったまま、いなくなった奈津のことを
少し名残惜しんでいると夜の闇から奈津が再び、
弘毅のもとに帰ってきた。
「はい! これを使って……」
奈津は弘毅の前に濡れたハンカチを差し出した。
「(え?……)良いよ!……」
驚いた弘毅は奈津がせっかく、差し出した
濡れたハンカチを返した。
「良いから…… 少しは気持ちよくなるから……」
奈津は半ば、強引に弘毅の額に濡れたハンカチを
押し当てた。
奈津が行ったように濡れたハンカチは冷たくて、
とても気持ちよかった。
「ねぇ? 気持ち良いでしょ?……」
奈津は弘毅ににっこりと微笑んだ。




