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「……。」
奈津のそんな切なそうな顔を見た弘毅も急に
奈津と別れるのが辛くなり、奈津から顔を背けた。
「大丈夫! わしが付いているから……」
哀しげな奈津に狭間はそう言った。
「そうよ…… 休みになったら、またあなたも
ここに戻ってくれば、良いじゃないの?……
私達は待っているから……」
加奈子は優しく、奈津にそう声を掛けた。
「そ、そうよね…… じゃあ。また、来るね!」
奈津はそう言うと東京へと戻って行った。
奈津を見送った狭間は背伸びをし、
「じゃあ。仕事をするか!」
独り言のように呟くと診療所の中に入っていった。
「それじゃ、私は洗濯でもしようかしら?」
加奈子も狭間と同じように診療所の中に戻った。
診療所の前に弘毅は一人、取り残された。
『散歩でも行って来るかな?』
弘毅は一人、哀しく呟くと街の方へと歩き出した。
弘毅は狭間の診療所から森へと続く道を歩いた。
弘毅はその通っている道に何処か、覚えがあった。
『この道、知っているぞ!』
弘毅は辺りを見廻し、辺りの風景を見たが
そこが何処なのか、まったくわからなかった。
そんな時……
森の茂みがガサガサ……と音を立てて、動いた。
何も持っていないに弘毅は咄嗟に後ろの腰の辺りに
手を回し、辺りを警戒をした。
『何をやっているんだ? 俺……』
咄嗟に自分が起こした行動に弘毅は驚いた。
弘毅が自分の行動に驚き、戸惑っていると
音がした茂みから震えながら、一匹の子犬が出てきた。
「なんだ。お前か? 脅かすなよ! お前も一人か?……」
弘毅が目の前に出てきた震えている子犬に
触れようとしたら、弘毅はその子犬に手を咬まれた。
それと同時にまた、弘毅は激しく頭が痛み出し、
記憶が甦ってきた。
それは森の中で奈津と似た女の子・茉里と共に
子犬と戯れる風景だった。
ウゥー・・・・
身体を震わせながら、今にも弘毅に襲い掛かろうとしている
子犬を弘毅は
「大丈夫! 何もしないから落ち着け!……」
子犬の目を見て、子犬を宥めた。
暫くは警戒をしていた子犬も弘毅が危害を加えないとわかると
甘えた声で弘毅に擦り寄ってきた。
「ごめんなぁ…… 驚かせて……お前に危害は
加えないから…… 今、俺も一人なんだ……」
弘毅が優しく、子犬に話しかけた。
その時、再び、別の茂みがガザガサと音がした。
今度は明らかにそれは人の気配だった。
「おいで!……」
弘毅は懐に子犬を入れると子犬が出てきた
茂みの中へと姿を隠した。




