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弘毅は目の前の狭間を見た瞬間、とても懐かしい感覚と
共に頭の中に”父さん!”と言う言葉が浮かんできた。
「と、父さん……」
弘毅はそう呟くと狭間を見詰めたまま、気を失った。
弘毅が次に気が付くと小さな診察室のベットの上にいた。
『ここは何処だ?……』
弘毅がベットの上で混乱していると診察室の奥から奈津と
狭間の話し声が聴こえてきた。
そう!ここは弘毅が浜辺であった狭間がやっている
診療所だった。
街外れの狭間の診療所は昼間なのに診察者は
誰もおらず、静かだった。
弘毅はしばらく、ベットの上の天井を見詰め、
自分が今、何処に向かい、何をしようとしているのか、
考えた。
だが、今の弘毅には答えが出なかった。
しばらくすると、話が終った奈津と狭間が
弘毅の元に戻ってきた。
弘毅が気が付いたことに気付いた奈津は
「だ、大丈夫?……」
弘毅が寝ているベットに駆け寄ってきた。
「ああぁ……」
弘毅は困ったように顔を顰めた。
弘毅を気遣った狭間は
「コラッ!もう少し、休ませんか!」
奈津のことを叱った。
「はーい!」
奈津は少し残念そうに弘毅のもとから離れた。
「さて! ちょっと、見せてくれ?……」
狭間は弘毅の服を開けると弘毅の胸に聴診器を
当てた。
「こんなことは初めてかね?……」
弘毅の心臓の音を聞きながら、狭間は弘毅に訊いた。
『え?……』
弘毅が驚いた顔で狭間のことを見詰めていると
「昨日からだよ!……」
奈津は弘毅の代わりに狭間に答えた。
「君には訊いていないから……
少し、黙っていてくれ……」
狭間は奈津を少し怖い顔で注意をし、聴診器を
弘毅に再び当て、弘毅の心臓の音を聞き入った。
奈津の少し哀しげな顔を見ながら、弘毅は
「ええぇ…… たぶん……」
と狭間に言った。




