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戦えない元補給係の廃ダンジョン食堂 ~血まみれのSランクを救ったら、最強探索者たちの帰還拠点になりました~  作者: sakumaaa
同じ町に別の未来を置く

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105/105

全員一致を待たずに、朝食を出す

「あの人たちが出たら、水の当番はどうなる」


 朝食前に始まった話し合いは、同じ所へ三度戻った。九人の移動希望者のうち、二人が倉庫の共同作業を担っている。外側の受け入れ先と今日の通行条件は整ったが、残る側の当番が決まらない。


「その人がいないと困る」と言うのは、事実だ。「だから出るな」まで一息で言ってしまうと、その人の返事を奪う。


 藤森さんの鍋は火にかかっていない。彼女は俺を見る。


「食べるのも、決議が要る?」


「要りません。四十七人分です」


「じゃ、先に出すね」


 俺は朝食の列を開けた。今日出るかもしれない九人も含めて四十七人。食べ終わってから出る人の分を、表から先に消さない。


「話してる途中だぞ」と東野さん。


「聞いています。朝食は止めません」


「それで九人が勝手に出たら?」


「出発を決めるのは食堂ではありません。本人、受け入れ先、通行の担当が確認します」


 東野さんは椀を受け取り、脇へよけた。俺たちの味噌汁に、移送の許可証を添えるわけにはいかない。


 ◇


 音羽さんは九人それぞれに、受け入れ先と移動の意思を再確認した。消防は南外縁の足場を見直し、医療担当は今日歩けるかを本人ごとに判断した。先日の六人が通れた道でも、今朝の九人が同じ条件とは限らない。


 共同作業の方は、残る人が決めた。水の容器を運んでいた一人は、残すメモの場所を三浦君に教えた。もう一人は、掲示板の当番を東野さんへ渡す。


「俺に全部か」と東野さんが言う。


「全部じゃない。水の確認は設備の人と。掲示板だけお願いしたい」


 東野さんは二つの仕事を分けてから、頷いた。九人がいなくなる穴を、誰か一人へ押しつける案なら決まらなかっただろう。


 神代さんが南外縁から連絡を入れた。


「足場、今日は使える。消防が入口で見てる」


「そちらの昼は?」


「受け取った。今は先に九人を案内する」


 彼女の昼食を心配するのと、移送を指揮するのは別の話だ。俺は外側へ持って行く水と、途中で食べられる包みだけを確認した。


 ◇


 出発直前、一人が立ち止まった。


「俺が行けば、あっちの人は怒るかな」


 東野さんは朝の椀を返しに来たところだった。


「当番は引き受けた。怒るかどうかを、出発の条件にするな」


「ありがとう」


「礼は、外に着いてから連絡しろ」


 九人は一人ずつ通路へ進んだ。消防が内側から送り出し、外側の担当が受ける。俺は順番の紙に印をつけず、音羽さんが本人と受け入れ先の記録を照合するのを待った。


 九件目の到着確認がそろったのは昼過ぎだった。同行した担当も外側と内側でそれぞれ所在を報告する。残った人の昼食を届けた確認も別に届いた。


「九人、外側で受け入れ済みです」と音羽さん。


 ここで初めて倉庫の人数を四十七から三十八へ直した。朝食の紙に遡って書き込まない。食べた四十七人と、昼にここにいる三十八人は、どちらも今日の本当の数だ。


 東野さんが掲示板へ、新しい当番表を留めた。


「全員が同じ答えじゃなくても、動いたな」


「はい。朝食も出せました」


「それを勝ち誇るなよ」


「すみません」


 笑われた。三十八人の昼食の列ができる。九人の帰還を喜ぶ人と、残された仕事を心配する人が同じ列に並んだ。俺はどちらにも、同じ温度の椀を渡した。

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