第64話:ルシアンの隠密メイド、魔力ゼロの執事を「禁忌」と疑い牙を剥く
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第64話をお届けします。
ルシアンの実家から学園へと到着した新たな手練れ──ロベルト家の娘であり、ルシアン直属の隠密メイドであるフェリス。
彼女は挨拶代わりと言わんばかりに、アレンの死角から魔力循環を強制遮断する神速の暗殺剣【詠唱阻害】を放ちます!
しかし、アレンは一歩も動かぬまま、愛刀『兼定』の鞘だけでその一突きを完璧に完全防御。
さらに、相手の魔力を狂わせるフェリスの秘技は、そもそも魔力が「完全ゼロ」のアレンには前提条件すら通用せず……!?
アレンの常識外れの強さを「禁忌の呪い」と疑い、敵意を剥き出しにするフェリス。
だが、部屋に漂うアレン特製のハーブティーの香りを嗅いだ瞬間、メイド(家事能力)としての領分でも、その底知れぬ異常性に激しく動揺し始めてしまい――。
規格外の面々が集結した特級魔導書庫で、アレンの新たな日常(?)が幕を開けます!
(……来るな。だが、妙だ。足音も、呼吸の音もない。それどころか、生き物としての気配すら、完全に死んでいる──)
アレンが極限まで研ぎ澄まされた五感で、特級魔導書庫の薄暗い書架の奥を見据えた、その刹那だった。
背後の空間が、陽炎のように微かに歪む。 魔力の気配すら一切させない、徹底的に鍛え上げられた隠密の足さばき。アレンにとって正真正銘の「初対面」となるその少女は、死角から滑り込むように現れた。
仕立ての良いロングスカートのメイド服に、白いエプロン。長く美しい髪を揺らしたその少女──ルシアン直属の従者メイドであるフェリスは、姿を見せると同時、何の前触れも、何の言葉もなく、完全に無言のまま肉薄した。
その手には、毒の魔力が塗布された不気味な紫色の短刀。
シュッ──!!
唐突に放たれた、容赦のない一突き。 それは、エリート魔術師の喉元を物理的に穿ち、同時にその魔力循環を強制的に遮断するロベルト家独自の護身武術。強烈な『詠唱阻害』の理合を孕んだ、神速の暗殺剣だった。
常人であれば視認することすらできず、傲慢な魔術師であれば防御障壁を張る暇すらなく絶命する、プロの技。
だが、アレンの肉体は、予測不能の『縮地』や、予備動作ゼロの『瞬歩』を極めた、実戦主義の塊だ。
(気配を完全に殺してはいるが、刃を突き出す瞬間のわずかな『空気の動き』と『殺意の指向』までは消せていねえ。闇討ちの技術としちゃあ上等だが、京都の路地裏で命を削り合ってきた連中に比べりゃあ、まだまだ甘い)
キィィィィィン!!!
激しい金属音が書庫の静寂を切り裂き、鮮烈な火花が暗闇を照らす。 アレンは一歩も動かぬまま、愛刀『兼定』の漆黒の鞘を正確に真後ろへと突き出し、フェリスの短刀の切っ先を紙一重で噛み合わせ、完全に受け止めていた。
「(──刀を引き抜かず、鞘のままで完璧に点穴を弾いた!? 刀を抜く価値すらないというわけ? どこまで底が知れないのよ、この男……!)」 ソファーからそれを見ていたエレノアは、その常軌を逸した見切りに、背筋にぞくりと甘い戦慄を走らせていた。
一方、短刀と鞘を押し合わせる至近距離で、フェリスはさらに激しい驚愕に目を見開いていた。 (なっ……!? 私の『詠唱阻害』が、全く作用していない……!?) フェリスの技は、相手の魔力循環を狂わせるもの。だが、眼前の男には狂わせる魔力そのものが最初から完全に『ゼロ』なのだ。技の前提条件すら通用しない未知の異常者に、元暗殺者であるフェリスの背筋に冷たい戦慄が走る。
「グランヴェル家の影ともあろう者が、挨拶代わりに身内の首を狙うのがお前の流儀か? ──ロベルト家の娘」
アレンは完璧な執事の仮面の下から、冷徹な三白眼でフェリスを射抜いた。 フェリスは短刀をサッと引き、華麗にバク転をして距離を取ると、メイド服の裾を正して油断なく身構えた。その表情には、激しい警戒と「嫌悪」が剥き出しになっている。
「……やはり、ただの平民ではありませんね、アレン。魔力ゼロの身でありながら、ルシアン様の秘書に収まり、ボルテール家の神童を叩きのめした不気味な男。魔力も無いくせに私の『詠唱阻害』すら受け付けず、この奇襲を無手同然で防ぐなど、魔法至上主義の理に反しています。……何か学園に持ち込んではならない禁忌の呪いか、暗黒魔術を使っているのでしょう? このフェリスが、必ず暴いてみせます」
アレンは兼定の鞘を静かに腰へ戻し、呆れたように短く鼻で笑った。
「呪い、か。手品師(魔法使い)の身内は、自分の理解できない技術をすべてオカルトで片付けたがる。……勝手に疑っていろ。ただし、ルシアン様の邪魔をすることだけは許さんぞ」
二人の間に流れる、一触即発の緊迫した空気。 それを作戦室のソファーから眺めていたエレノアは、楽しそうに瞳を輝かせ、不敵な笑みを浮かべた。
「あらあら……。アレン、あなたを『禁忌の魔術師』だと疑う暗殺メイドさんのお出ましね。……彼女、あなたのその『魔法に頼らない強さ』の秘密を暴こうと、これからストーカーみたいにつきまとってくるんじゃないかしら? 学園生活が、ますます賑やかになりそうね」
「笑い事ではありません、教授。不法侵入者への対処をご苦労様と言っていただきたいところです」 アレンはため息交じりに燕尾服の埃を払った。
フェリスはフンと鼻を鳴らし、短刀を隠すと、すっと表情を消して冷徹なメイドの顔に戻る。 「エレノア教授、お騒がせいたしました。ルシアン様より、アレンとの合流、および今後の護衛任務についての拝命を受けて参りました。以後、お見知り置きを」
深々と一礼するフェリス。だがその時、彼女の鼻腔に、部屋に漂うハーブティーの芳醇な香りが届いた。
(……待って。何、このお茶の香り。ロベルト家が秘伝とする特級の疲労回復薬より、薬草の比率と調合が完璧じゃない……!? なんでただの平民が、こんな王宮の薬師を越えるような真似ができるの……!?)
戦闘能力だけでなく、メイドとしての領分(家事能力)ですら底の知れないアレンの異常性に、フェリスは心の中で激しく動揺していた。しかしそれを表に出さず、ただアレンの挙動を一瞬たりとも見逃さないと言わんばかりに注視し続ける。
魔力ゼロの執事アレン、元暗部トップのエレノア、そしてアレンを危険視する従者メイド・フェリス。 特級魔導書庫という独立領域に、常識外れの「規格外」たちが集結した。フェリスという強力な「身内の監視の目」が加わった日常の中で、アレンの次なる戦いの幕が上がろうとしていた──。
第64話をご覧いただき、ありがとうございました!
実家からの新増援・フェリスちゃん、めちゃくちゃ有能で最高に可愛い「疑心暗鬼メイド」でしたね……!!
気配を完全に死滅させたフェリスの不意打ちに対し、「刃を突き出す瞬間のわずかな空気の動きと殺意の指向までは消せていねえ。京都の路地裏に比べりゃ甘い」と、抜刀すら略して鞘のままで弾き返すアレン。幕末の死線を潜り抜けた男の格の違いに、読んでいて鳥肌が立ちました。ソファーでそれを見ながら「刀を抜く価値すらないというわけ?」とゾクゾクしているエレノア教授のヒロイン力も相変わらず高いです(笑)。
そして何より、フェリスの誇る『詠唱阻害』が、「そもそも狂わせる魔力がないから無効」というアレンのバグレベルの特異体質。
理解できないフェリスが「禁忌の呪いだ!暴いてみせます!」とツンツンしているのが最高に微笑ましいです。魔法使いの世界の住人は、すぐにアレンの技術をオカルト認定したくなりますね。
エレノア教授の言う通り、「秘密を暴こうとストーカーみたいにつきまとってくる」未来しか見えませんが、戦闘だけでなく、アレンの淹れたハーブティーの完璧な薬草調合にメイドとしても「な、何この完璧な調合は……!?」と内心で大動揺しているのが可愛すぎます。アレンの前世の薬草知識、戦闘以外でもマウントが取れて無敵すぎませんか?
これから「身内の監視の目(でも内心大動揺)」というフェリスが加わり、アレンの学園生活がどう引っかき回されるのか。そしてボルテール本家の動きは……!?
65話からの新たな戦いも、どうぞお楽しみに!
【作者からのお願い】
「アレンが鞘のままで神速の暗殺剣を弾くシーンに痺れた!」「魔力ゼロだから詠唱阻害が効かないという無敵理論が痛快すぎる!」「ハーブティーの調合にメイドとして動揺するフェリスが可愛い!」と思ってくださった方は、ぜひ作品への応援をお願いします!
皆様のブックマークと評価(★5)が、禁忌と疑われつきまとわれることになったアレン(土方)が、その圧倒的な背中と家事能力(笑)で隠密メイドの心を根こそぎマウント屈服させる最強のバフになります!
なろう読者様:下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に染めて、新キャラに実力の違いを見せつけた副長へ熱きエールを!
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