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第62話:最強の女教授、ゴミ屋敷を片付けられて胃袋を掴まれる。

いつも最高の応援と熱い評価をいただき、本当にありがとうございます!

第62話をお届けします。


アレンに四肢を粉砕されたジュリアスは、翌日、全校生徒の前で約束通りの公開土下座謝罪を敢行。リナやセレナお嬢様の尊厳を完璧に回復させたアレンは、名実ともに学園の台風の目となります。


そんな中、特別立会人だったエレノア教授の私的な管理室へと呼び出されたアレン。

重厚な扉の向こうに広がっていたのは、最高峰の魔導士のイメージを覆す、足の踏み場もない「ゴミ屋敷」でした……!


新選組副長時代から規律と美を重んじてきたアレンは、新技【瞬歩】をまさかの「超高速片付け」に応用し、数分で部屋をピカピカに変貌させ、極上のハーブティーで彼女の胃袋を完全に掌握します。


大人の色気でアレンを誘惑しようとするエレノアに対し、かつて幕末の花街で粋を極めた土方歳三の「本物の余裕」が炸裂!

さらに夜、ルシアンの口からグランヴェル公爵家が呼び寄せた新たな増援──僕たちの幼馴染である『彼女』の存在が明かされ――!?


激動の学園編、新たな出会いと変革の刻が迫ります!

ジュリアス・ヴァン・ボルテールとの模擬戦の興奮が冷めやらぬ、第一演習場。 決着の直後、特別立会人であるエレノア・フォン・ローゼンバーグ教授は、妖艶に微笑みながらアレンに問いかけていた。

「見事な勝利ね、アレン。学園の法に則った模擬戦での勝者には、敗者に対して相応の『要求』をする権利があるわ。……さあ、勝者の特権よ。ボルテール家の若君に何をしたいかしら?」

アレンは燕尾服の乱れをすっと整え、冷徹な三白眼で白目を剥いているジュリアスを見下ろした。

「私が望むのは、そんなものではありません。──ジュリアス・ヴァン・ボルテール様には、我が主君の妹君であるセレナ、臨席している私の幼なじみであるリナの二人に、自らの非を認めて土下座し、誠心誠意謝罪していただきたい。それだけです」

貴族の面面めんめんをこれ以上無用に刺激してルシアンの足を引っ張るより、被害者である二人の尊厳を完璧に回復させる。それがアレンの実利的な判断だった。

そして、翌日。 意識を取り戻し、アレンへの恐怖を骨の髄まで刻まれたジュリアスは、約束通り、全校生徒が見守る前でセレナとリナの二人に地を這うような土下座をして謝罪した。 周囲の貴族生徒たちが「平民の分際で……」と苦々しくひそひそ話を交わす中、リナは誇らしげに胸を張り、アレンの後ろ姿を見つめていた。 (周りが何と言おうと関係ない。私には、世界で一番かっこいい幼なじみがついている──) リナは頬を微かに赤く染めながら、アレンへの特別な感情を深く自覚していた。

これで一件落着。そう思っていた放課後、アレンの元に突如としてエレノア教授からの呼び出し状が届いたのだった。

指定された場所に赴いたアレンは、重厚な扉を開けて室内へと足を踏み進めた。 そこは、壁一面を埋め尽くすように本がずらりと並べられた私的な書斎──の奥にある、彼女のプライベート空間(管理室)だった。

一歩足を踏み入れた瞬間、アレンの端正な眉が跳ね上がる。

「……なんだ、これは」

そこは、本や資料、書き散らされた魔導紙が崩れんばかりに散らかり、足の踏み場もない凄まじい「ゴミ屋敷」だった。 その混沌の中心で、優雅に深紅のドレスを纏ったエレノアが、冷めた紅茶を啜りながらソファーに腰掛けている。服のボタンが一つ掛け違っていることすら気にしていない様子だ。

「あら、いらっしゃいアレン。そこに座りなさいな」 エレノアは対面のソファーを指差すが、そこにもうず高く魔導書が積まれている。

「……座れと言われましても、教授。その前に、やることがあるでしょう」 アレンは深々と溜息をつくと、燕尾服の袖をまくり上げた。新選組副長時代から規律と組織の美を重んじてきた男だ。この無秩序を放置することは、彼の几帳面な性格が許さなかった。

「ちょっと、アレン? 何をする気に──」 「静かに聞いていてください。目が回る」

アレンは『瞬歩』の重心移動を応用し、音もなく、しかし爆速で部屋の中を動き回った。

「え? ちょっと、私の最高機密の魔導書が……あ、綺麗に分類されて並んでる。え!? 脱ぎ散らかしたドレスや衣服が……あ、完璧に畳まれてる!?」 エレノアは、あまりの片付けの手際の良さに頭の処理が追いつかず、ただ唖然とアレンの残像を目で追うことしかできない。

アレンは整理しながら、その本の量──その大半に、彼女が読み込んだであろう凄まじい量の書き込みがなされていることに驚きつつも、数分で塵一つない完璧な空間へと部屋を変貌させた。

「……嘘。私の部屋って、こんなに広かったかしら……?」 ぽかんとするエレノアに、アレンはおくびにも出さずに手元を指差す。 「教授、その紅茶は完全に冷めています。新しく淹れ直しますので」

アレンは前世の薬草の知見を活かした極上のハーブティーを用意し、美しい所作で彼女の前へ差し出し、ようやく自身も席へと腰を下ろした。

エレノアが一口含んだ瞬間、その切れ長の瞳が劇的に見開かれた。 「っ……! なにこれ、美味しい……! 私、こんなにおいしい紅茶、生まれて初めて飲んだわ……!」 「私はルシアン様の秘書ですので、これくらいは当然の嗜みです」

アレンは淡々と謙遜した。一息入れたあと、エレノアはカップを置き、妖艶な笑みを浮かべて身を乗り出してきた。大人の女性としての色気を武器に、距離を詰めてくる。

「それにしてもアレン、昨日のあなたの戦い方には本当に感動したわ。あの魔力ゼロの体で放った、赤黒い炎を纏った一撃……私の助手になれば、夜の個人授業でその秘密をじっくり教えてあげてもいいのよ?」

じっと見つめてくるエレノア。並の男なら生唾を呑むような誘惑。だが、アレンの中身は吉原や嶋原の超一流の粋を経験してきた土方歳三だ。アレンは全く動じることなく、完璧な執事の微笑みを浮かべたまま、静かに紅茶を口に運んだ。

「お言葉ですがエレノア教授。誘惑してくださる割には、少々腰が引けていらっしゃいますね。私の知る街の芸者たちの方が、もう少しマシな色気を売りますよ?」

「な……っ!? なによその慣れた反応……!」 まさか十代の少年に、完璧な敬語で、しかも大人の余裕で一刀両断に受け流されるとは思わなかったのだろう。エレノアは予想外の反撃に顔を真っ赤にし、ドギマギしながら慌てて視線を逸らした。

しかし、エレノアはコホンと一つ咳払いをすると、元暗部トップとしての冷徹な大人の顔に戻った。 「……はぐらかされたわね。でも、一つ忠告よ。あなたがジュリアスを完璧に粉砕したことで、ボルテール侯爵家の本家も、もう黙ってはいないでしょうね」

アレンは紅茶を飲みながら、心の中でその言葉を肯定していた。 向こうにどんな非があっても、この世界において権力を持っている者たちの執念と力は恐ろしいものだ。

「……つまり、このままでは私はおろか、主君であるグランヴェル家にまで迷惑をおかけすることになりますね」 「その通りよ。だから、しばらく私の『助手』として、この書庫を手伝いなさい。学園の教師の直属の助手ということになれば、外の貴族たちも容易には手出しが出来なくなるわ。この聖アイビス国立魔法学園は高位貴族の介入を受け付けない独立領域だし、この私自身もね、この学園ではかなりの地位にいるのよ」

自慢げに胸を張るエレノアに、アレンは静かに言葉を重ねた。 「なるほど。確かに、エレノア教授の仰る通りですね。ですが、教授。貴女は当然、知っていますよね。私はグランヴェル家において、すでに役職を持っていることを」

エレノアはクスクスと艶然に笑った。 「もちろん分かっているわ。拘束するのは、あなたがこの学園に居る間だけ。学園の外では、あなたの本来の仕事に集中しなさい。それで手を打ちましょ?」

アレンはしばらく紅茶を見つめた後、ふっと口元を緩めた。 「……分かりました。しばらく、よろしくお願いします。エレノア教授」

席を立ち、扉の外へ去っていくアレン。 残されたエレノアは、誰もいなくなった静かな部屋で、両手で顔を覆いながら、声に出ない悦びを爆発させていた。あの底の知れない少年の剣技、そして佇まい──彼女の知的好奇心と興奮は、もう限界を突破していた。

その夜、男子寮のルシアンの部屋。 二人きりの空間になり、アレンはいつもの執事の仮面を外し、昼間のエレノアとのやり取り、そして助手として籍を置くことになった経緯を淡々とルシアンに伝えた。

ルシアンは机の上の書類から目を離し、小さく息を吐いた。 「なるほどね、ローゼンバーグ教授の助手か。……分かった。執事としての仕事は、君の出来る範囲でやってくれればいいさ」

「いいのかよ? 俺の負担が減る分、お前の身の回りの世話が疎かになるぞ」

「構わないよ。今回の件を受けて、父上も実家からもう一人、手練れの者をこちらに呼び寄せる手配をしてくれたからね。……僕たちの幼馴染でもある、君と同じくらいの年齢の『彼女』をね。だからアレン、君は君のできることをしてくれ」

実家からの新たな増援、それも「彼女」という言葉に、アレンは少しだけ目を細めたが、すぐに不敵な笑みを浮かべた。 「分かった。……ありがとうな、ルシアン」

「アレン」

部屋を出ようとしたアレンを、ルシアンが引き留めるように呼んだ。 ルシアンは少しだけ気まずそうに、しかし真摯な瞳でアレンを見つめていた。

「……ごめんね。僕の力不足のせいで、君にはいつも苦労をかける。今回のいざこざも、君に迷惑をかけた」

その謝罪を聞いた瞬間、アレンは呆れたように短く鼻で笑った。

「今更かよ、お前。あの時──スラムでお前の秘書になると決めた時、とっくにあの世までの覚悟は決まってんだ。そんな殊勝な謝罪はいらねえよ」

ルシアンは一瞬目を見開いた後、クスッと悪戯っぽく笑った。 「……そうだね。君はそういう男だった。ありがとう、アレン」

アレンは今度こそ背を向け、部屋を出た。 目まぐるしく変わりゆく日常。しかし、アレンの胸に灯る火が消えることはない。聖アイビス国立魔法学園という巨大な揺り籠もまた、この「鬼」の存在によって、少しずつ、しかし確実に変革のときを迎えようとしていた。


第62話をご覧いただき、ありがとうございました!


エレノア教授、チョロ……いえ、めちゃくちゃ可愛い最高のお姉様でしたね!!(笑)


前半のジュリアスのスカッとする公開土下座から一転、エレノア教授の部屋がまさかのゴミ屋敷というポンコツギャップ。それを『瞬歩』の重心移動による残像レベルの超高速片付けで更地(?)にし、極上のハーブティーを差し出すアレンの完璧超人ぶりが最高でした。


そして何より、エレノア教授の妖艶な夜の個人授業(誘惑)のお誘いに対し、完璧な笑顔のまま「私の知る街の芸者たちの方が、もう少しマシな色気を売りますよ」と言い放つアレン!!

相手は十代の少年だと思ってからかおうとしたエレノア教授が、中身は京都の嶋原や吉原でブイブイ言わせていた(※モテすぎて恋文を実家に仕送りするレベルの)土方歳三だとは知る由もありません。大人の余裕で完全論破されて顔を真っ赤にする教授、最高にご馳走様でした。


ですが、そんな教授も「ボルテール本家からの報復」を先回りして防ぐために、アレンを自分の『助手』として囲うという政治的防壁を用意してくれるあたり、さすが元暗部トップ、やる時はやる頼れる大人の女性です。


最後にルシアン様の自室で交わされた、二人きりの相棒トークも胸が熱くなりました。ルシアンの「ごめんね」に対し、「スラムでお前の秘書になると決めた時、とっくにあの世までの覚応は決まってんだ」と淡々と返すアレン。この二人の絆の深さはやはり特別です。


そしてルシアンの口から語られた、実家からの手練れの増援、僕たちの幼馴染でもある「彼女」の存在……!

一体どんな少女がこの激動の学園にやってくるのか!?アレンの女難の相(?)がさらに加速する予感がしますね(笑)。

次回、新キャラクター登場(?)の第63話もどうぞお楽しみに!


【作者からのお願い】

「アレンの花街仕込みの大人カウンターにシビれた!」「エレノア教授のポンコツ&ドギマギギャップが最高に可愛い!」「ラストの主従の熱い絆と、新キャラ『彼女』の予感にワクワクした!」と思ってくださった方は、ぜひ作品への応援をお願いします!


皆様のブックマークと評価(★5)が、エレノア教授を助手に従え(?)、実家からの新たな相棒を迎え撃つアレン(土方)の、異世界御用改めロードをさらに大爆進させる最強のエネルギーになります!


なろう読者様:下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に染めて、最強の胃袋掴み執事へ熱き一票を!


カクヨム読者様:【★で称える】ボタンや【フォロー】のワンタップをぜひお願いいたします!

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