第61話:硝煙の灯
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第61話をお届けします。
ついに始まった、魔力ゼロの平民執事アレンと、ボルテール家の神童ジュリアスによる公式決闘。
観客席の貴族たちが嘲笑する中、ジュリアスの放った凶悪な雷撃を、アレンは予備動作ゼロの【瞬歩】で完全に消失。
「――まず、一つ目だ」
主君ルシアンを侮辱し、セレナお嬢様を怯えさせ、幼なじみのリナの腕を傷つけた傲慢な貴族に対し、鬼の副長による容赦なき「五つの粛清」が執行されます。
恐怖に狂ったジュリアスが全魔力を暴発させようとした瞬間、アレンの愛刀『兼定』に、硝煙の臭いを発するおどろおどろしい“赤黒い業火”が纏いつき――!
魔法の常識をその前提ごと爆破する、天然理心流の極大の一撃を目撃してください!
翌日の放課後。聖アイビス国立魔法学園・第一演習場は、異様な熱気に包まれていた。 「平民の補助員がボルテール家の神童に挑む」という噂は瞬く間に広がり、観客席には野次馬根性の貴族生徒たちが鈴なりになっている。
「ふん、身の程知らずな平民の公開処刑か。退屈極まりないな」 「ジュリアス様の雷魔法だ、一撃で消し炭だろうよ」
そんな嘲笑が飛び交う演習場の中央。 豪華な外套を翻したジュリアス・ヴァン・ボルテールは、手にした一級品の魔導杖を弄びながら、酷薄な笑みを浮かべていた。 対するアレンは、完璧に仕立てられた燕尾服のまま、ただ静かに佇んでいる。腰にあるのは、いつも主君から携帯を許されている愛刀『和泉守兼定』のみ。魔力値は「ゼロ」のままだ。
「アレン、無理はしないでね……!」 観客席の最前列から、セレナが祈るように両手を組んで声をかける。 その隣で息を呑むリナの脳裏には、懐かしい情景が鮮がえっていた。──まだ幼かった頃、町で行きずりのいじめっ子たちから自分を庇って、ボロボロになりながらも不敵に笑っていた少年アレンの姿。 (アレンは変わっていない。いつも、私が本当に辛いときに、誰よりも先に怒ってくれる──) リナは胸を熱くし、幼なじみとしての深い信頼を瞳に宿してその背中を見つめていた。
「それでは、これより模擬戦を執り行う。──始め!」
特別立会人として中央に立つエレノア・フォン・ローゼンバーグが、合図の声を放った。
「死ね、平民! 【天雷の紫電】!!」
開始の合図と同時に、ジュリアスが杖を突き出し、凶悪な雷撃が一直線に放たれる。しかし──シュル、と空間が歪んだ。 誰もアレンの『瞬歩』を認識できない。放たれた紫電は、無人の地面を穿ち、轟音とともに土煙を爆発させる。
「どこを見ている」 「なっ──ひ、う!?」
ジュリアスの背後。アレンはすでにいつでも勝負を決められる位置にいた。だが、その三白眼には、冷徹極まりない「処刑人」の光が宿っていた。
「──まず、一つ目だ」
アレンは『縮地』で肉薄し、ジュリアスの耳元で冷酷に囁くと同時に、その拳を顔面にめり込ませた。
「がはっ!?」 歯が数本吹き飛び、ジュリアスが派手に吹っ飛ぶ。 (一つ、我が主君ルシアンを、無能と呼び侮辱した罪)
「追撃を──」とジュリアスが必死に距離を取ろうとするが、衣服の乱れすらなく先回りしたアレンが、その逃げ道を塞ぐ。
「二つ目」
アレンの強靭な前蹴りが、ジュリアスの腹部を容赦なく抉った。
「ごふっ、あ、げ……っ!」 (二つ、セレナを執拗に囲み、恐怖を与えた罪) 胃液を吐き散らしながら崩れ落ちるジュリアスの髪を、アレンは無慈悲に掴み上げ、無理やり立たせる。
観客席のセレナとリナは、ハッと息を呑んだ。アレンの攻撃の理由が、自分たちの傷を癒すための「粛清」であると気づいたからだ。 「リナちゃん……アレン、私たちの代わりに、あの男に罰を与えてくれているのね……!」 セレナの言葉に、リナは誇らしさと愛おしさで涙をにじませた。あれは自分だけの、最高の幼なじみだ。
「三つ目」
アレンの肘打ちが、ジュリアスの右肩を完璧に粉砕した。ボキリ、と嫌な音が響く。
「あ、ぎゃあああああッ!! 肩が、俺の肩がぁ!」 (三つ、平民だからと見下し、リナの腕を傷つけた罪)
「ひ、うぅ……助け……っ」 涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにし、完全に戦意を喪失して這いつくばるジュリアス。だが、鬼の副長が身内に牙を剥いた外道を許すはずがない。アレンは冷酷に兼定の鞘を引き抜き、ジュリアスの両腕を容赦なく叩き折った。
「四つ目」
「ひ、ぎぃぃぃぃぃっ!?」 (四つ、反省もせず、昨日さらにリナへもう一度手を挙げようとした罪)
四肢を破壊され、もはや芋虫のように地面を転がるジュリアス。しかし、最後の力を振り絞るように、恐怖に狂った目で杖をアレンへ向けた。 「バ、化け物め……っ! くるな、近寄るなぁぁぁッ!!」
ジュリアスが絶望の叫びとともに、ありったけの魔力を暴発させようとした、まさにその一瞬──。
アレンの身体が、ジュリアスの驚愕の隙を突いて爆発的に加速した。 『縮地』。 敵が驚愕した一瞬の隙を見逃さず、認識の遥か外から一瞬で正面へと肉薄する超高速の移動術。 あまりの神速に、ジュリアスは自らの魔力ごと、完全に思考を停止させられた。
アレンはゆっくりと兼定の白刃を抜き放つ。その刃に、硝煙の臭いを発するおどろおどろしい「赤黒い業火」が纏いついた。 火魔特化剣術:〈業火流〉『硝煙ノ灯』。
ジュリアスは、自分の上に立つアレンの背後に、数多の死線を超えてきた本物の「鬼」の幻影を見た。
「ひ……、あ、ああ……っ!」 「ボルテール様。これが最後です」
アレンは兼定を真っ直ぐに、独特の平正眼に構えた。 肉体の全バネ、あるいは『名付け』以来、体内で脈打つあの未知のエネルギーが、兼定の切っ先へと超圧縮されていく。
「五つ目。──お前は大局を見誤り、相手を見下した。我々平民を、そしてグランヴェル家を侮ったことが、お前の最大の敗因だ」
天然理心流──『絶空・平突き(ぜっくう・ひらづき)』。
ドゴァァァァァン!!!
目に見えぬ気魄の衝撃波が、大爆発の赤黒い炎を巻き込みながら放たれた。
「(魔法の炎じゃない……!?)」 観客席のエレノアは、国家最高峰の魔術師としてその異質さに戦慄していた。 「(あれは、奴の『気魄』そのものが空気を摩擦し、圧縮して生み出した疑似的な熱量……! どんな修羅場をくぐれば、人間があんな技を編み出せるのよ……!)」
ジュリアスが身に纏っていた最高級の防壁は、一瞬で木っ端微塵に粉砕された。ジュリアスは受け身も取れず、演習場の壁まで真っ直ぐに吹き飛び、激突した。壁に巨大なクレーターを作り、立ち込める硝煙の臭い。
「ひ、あ……」 ガチガチと恐怖で体を震わせ、ジュリアスは恐怖のあまり失禁しながら、そのまま白目を剥いて完全に気絶した。
「しょ、勝者……アレン!」
エレノアの高らかな宣言が響いた瞬間、演習場は静まり返った。 すると、青ざめる取り巻きの貴族たちや、ジュリアスに加担していたあの中年教師に向けて、ルシアンがゆっくりと歩み出た。公爵家次期当主としての圧倒的な威圧感が、その場を支配する。
「学園の法に則った正当な模擬戦だ。文句を言う者は、我がグランヴェル公爵家がいつでも相手になろう。──教官、ボルテール家の不始末の片付け、よろしく頼みますよ?」 冷徹なクギ刺しに、教師は震え上がり「は、はいっ!」と平伏するしかなかった。政治的な報復の芽も、ルシアンが完全に摘み取ったのだ。
演習場の中央、アレンは燕尾服の袖をすっと正し、何事もなかったかのようにルシアンの背後へと戻った。その表情は、先ほどの「鬼」のそれではなく、いつもの澄ました執事の仮面に戻っている。
「お待たせいたしました、ルシアン様。お弁当の重箱を回収いたします。……ローゼンバーグ教授、明日の放課後、例の『ゴミ屋敷』の清掃に伺いますので、お茶の準備をしてお待ちください」 「う……、ええ、善処するわ……」 私生活のポンコツぶりを突かれ、ばつが悪そうに頬を染めて視線を逸らすエレノア。
「アレン! 凄かったわ!」 「うん……! さすがアレンだよ!」 駆け寄ってくるセレナと、目を輝かせる幼なじみのリナ。
こうして、傲慢な貴族たちの鼻を完璧にへし折ったアレン。しかし、この圧倒的な勝利は、学園内に潜むさらなる闇と、ボルテール侯爵家本家をも本気にさせる引き金となるのだった──。
第61話をご覧いただき、ありがとうございました!
ジュリアス、完・全・論・破&粉砕完了です!!!(大爆笑)
いやもう、今回の決闘は書いていて爽快感が限界突破しました!
ジュリアスの雷魔法を瞬歩で避けて背後に回り、「ルシアン様への侮辱」「セレナへの脅迫」「リナへの暴力」と、アレンがキッチリと身内の傷を数え上げながら骨をへし折っていくシーンの格好良さ。ただの無双ではなく、大切な人たちのための「粛清」だからこそ、セレナ様もリナもアレンへの愛おしさと信仰心がカンストしています。特にリナにとっての「最高の幼なじみ」描写は書いていて胸が熱くなりました。
そしてラストの〈業火流〉『硝煙ノ灯』×天然理心流『絶空・平突き』の破壊力!
魔法の炎ではなく、アレンの圧倒的な「気魄」が空気を引き裂き圧縮して生み出した疑似的な熱量という設定、国家最高峰の魔術師であるエレノア教授が戦慄するのも無理はありません。壁にクレーターを作って失禁気絶するジュリアス、これ以上ない最高の噛ませ犬っぷりでしたね。
戦後処理も、ルシアン様が公爵家次期当主としての圧倒的な威圧感で腐った教官ごと政治的に圧殺するコンビネーションが最高にシビれました。これぞ最強の主従です!
なのに、勝った本人は燕尾服を直して「お弁当の重箱を回収します」からの、エレノア教授へ「明日の放課後、例のゴミ屋敷の清掃に伺います」という私生活ポンコツいじり(笑)。頬を染めて視線を逸らすエレノア教授、めちゃくちゃ可愛いです。
しかし、この圧倒的な勝利はボルテール侯爵家の本家を本気にさせる引き金に……。
牙を剥いた狼の快進撃はどこまで続くのか!?
次回からの新展開も、どうぞお楽しみに!
【作者からのお願い】
「ジュリアスへの五つの粛清が容赦なさすぎて最高にスカッとした!」「気魄の炎で魔法の防壁ごと粉砕するラストに鳥肌が立った!」「ルシアン様の戦後処理と、エレノア教授のゴミ屋敷いじりのギャップが好き!」と思ってくださった方は、ぜひ作品への応援をお願いします!
皆様のブックマークと評価(★5)が、傲慢な貴族の鼻をへし折り、学園の闇をさらに深く切り裂いていくアレン(土方)の兼定をさらに鋭く研ぎ澄ます最強の砥石になります!
なろう読者様:下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に染めて、完全勝利を収めた副長へ突撃の喝采を!
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