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第57話:影の組織

いつも熱い応援と最高の評価をいただき、本当にありがとうございます!

第57話をお届けします。


逃げる黒ローブの不審者を完全に退路を断って追い詰めたアレン。

襲いかかる魔法を『兼定』の一閃で霧散させ、新選組の体術「骨浸みの勁」を叩き込みます。


「俺の故郷じゃ、口の堅い奴の爪を剥ぐのが得意な奴がいてな」


完璧な執事から、夜の京都を恐怖で支配した「拷問官」へと変貌するアレン。

男の口から漏れたのは、世界を揺るがす闇の組織『黒の円卓ノワール・カノン』の名。

しかし、異世界の冷酷な呪いによって男は口を封じられてしまい――。


激動の演習を終え、男子寮の自室で二人きりになったアレンとルシアン。

表舞台の主従から「対等な相棒」へと戻った二人が、学園に忍び寄る巨大な陰謀の深淵へと迫ります!

「よく、ここまでやってきましたね」

行く手を遮られた黒いローブの男は、怯えるどころか、フードの奥から不気味な笑みを漏らした。 アレンは静かに『兼定』の柄に手をかけ、いつでも打ち込める構えをとる。その鋭い眼光が、男の全身の隙を瞬時に見定めていた。

「あんたは何者だ」 「ククク……我々は『黒の円卓ノワール・カノン』ですよ」

男は嘲笑うようにその組織名を口にした。 「黒の円卓……」 アレンが低くその名を呟くと、男はさらに言葉を続ける。 「あなた、随分と我々の計画を邪魔してくれましたね。まさか、用意した魔導具をこうも早く見つけ出され、サラマンダー・ラプトルが全滅させられるとは計算外でしたよ」

「確かに、あんな念入りの計画を潰したんだから、大層ご立腹だろうな」 アレンは淡々と言い放ち、次の瞬間、悍ましいまでの「鬼の気迫」を全開にして男を睨みつけた。 「だが、そんなちっぽけな策で、この俺を止められるとでも思ったのか?」

「っ……!?」 魔力ゼロの平民から放たれたとは信じがたい、命のやり取りを幾度もくぐり抜けた者だけが持つ圧倒的な殺気。黒いローブの男は、本能的な恐怖から一瞬、明確にたじろいだ。 だが、男はすぐに正気を取り戻すと、狂ったように叫びながら右手を突き出す。 「調子に乗るな、平民がぁ! 【ウインド・カッター】!」

至近距離から放たれる、肉体をも両断する鋭利な風の刃。 しかし、アレンの動体視力と極限まで研ぎ澄まされた剣技の前では、それすらも遅すぎた。

シィィン──ッ!

アレンは抜刀一閃、迫り来る魔法の刃を『兼定』の身で正面から叩き斬り、霧散させる。そのまま減速することなく、男の懐へと爆発的な踏み込みで突っ込んだ。

「な、詠唱が──」 男が次の魔法を紡ぎかけるよりも早く、アレンの腕が奔る。 アレンは刀を反転させ、刃のない『みね』の部分で、男の鳩尾を正確に、かつ凄まじい質量で叩き据えた。

魔術師が身に纏う受動的な魔力の防壁。だが、それを壁ごと骨と肉に響かせるのは、新選組時代に培った『骨浸ほねがらみのけい』だ。外傷はなくとも、衝撃だけを内部に浸透させる打撃が、男の鳩尾を完璧に捉えた。

ごふっ……!!

肺の空気をすべて搾り取られた男は、まともな悲鳴すら上げられずに後方へと弾け飛び、背後にあった大木の幹に背中を激しく打ち付けて、どうにかその場に留まった。 アレンは無駄のない足取りで距離を詰め、男の逃げ道を塞ぐように、その細い指の隙間に『兼定』の切っ先を深く突き立てる。あと数ミリで肉が裂ける極限の距離。その喉元へ、冷たい刃を突きつけた。

「誰の差し金だ。あと、目的も言え。そうすれば、楽に殺してあげてもいい」

アレンの唇に、底冷えするような笑みが浮かぶ。 「俺の故郷じゃ、口の堅い奴の爪を剥ぐのが得意な奴がいてな。あんたが魔法を紡ぐ速度と、俺がその指を一本ずつ叩き折る速度、どっちが早いか試してみるか?」 その尋問は、執事のそれではなく、完全に夜の京都を恐怖で支配した拷問官のそれだった。

だが──男からの反応はない。 ぐったりと首を垂れ、ピクリとも動かない男の様子に、アレンは不審を抱いて眉をひそめた。 峰打ちの加減は完璧だった。気絶はさせても、死ぬような威力では叩き込んでいない。

アレンは左手で男のフードを乱暴に剥ぎ取った。 「……死んでるな」

男の瞳は完全に濁り、呼吸も心音も完全に停止していた。 自殺か、とアレンは即座に男の身体を改める。だが、懐に刃物は持っておらず、口元に毒を仕込んだカプセルを噛み砕いたような素振りも、独特の薬品の臭いもない。

男の肌に、一瞬だけ奇妙な黒い紋様が浮かび上がり、煙のように消えていく。魔法による遠隔での口封じ──『呪印』だ。

(おそらく、もう何人かこの場に居て、俺がこいつを無力化した瞬間に術を発動させ、すでに逃げた後か……)

アレンは周囲の闇を見つめ、僅かに残る不審な気配の残滓を察知した。 「チッ……逃がしたか」 忌々しげに舌打ちをすると、アレンは静かに『兼定』を鞘に収めた。アレンは身を翻し、ルシアンたちの待つ演習場へと戻っていった。

演習場に戻ると、そこにはすでに学園の教官や、武装した教師たちが大勢合流し、辺りは騒然としていた。 アレンの姿を見つけるや否や、ルシアンが真っ先に駆け寄ってくる。

アレンが無事に戻ってきた姿を見た瞬間、ルシアンの瞳に明らかな安堵の色が走った。駆け寄り、アレンの肩を強く掴む。もし君を失っていたら、という胸を締め付けるような恐怖を押し殺しながら、ルシアンは声を少し震わせた。 「アレン! 無事かい!? 怪我はないか!?」

心配そうに顔を覗き込んでくる主君に、アレンはいつもの冷静な声で頭を下げた。 「お騒がせしました、ルシアン様。怪我はありません。……ただ、黒いローブの男は捕らえたのですが、詳細を聞き出す前に死んでしまいました」

「死んだ……? 君が殺したわけじゃないんだろう?」 「ええ、おそらく遠隔からの魔法による口封じかと」 「そうか……」 ルシアンは悔しそうに表情を歪めたが、すぐに柔らかい笑みを浮かべてアレンの肩を叩いた。 「でも、君が無事で戻ってきてくれた。それだけで十分だよ。本当にありがとう、アレン」

「アレン君、無事だったようだね」

そこへ、凛とした足取りで一人の女性が歩み寄ってきた。学園の特別顧問であり、最高峰の魔導士でもあるエレノア・フォン・ローゼンバーグ教授だ。

「エレノア教授。他のグループの状況は……?」 アレンが尋ねると、エレノアは小さく頷いた。 「安心しなさい。他のグループもすべて保護したよ。負傷者は出たが、全員命に別状はない。もう大丈夫だ」

「そうですか……」 アレンが小さく安堵の息を吐くと、エレノアはその燃えるような瞳でアレンを真っ直ぐに見つめ、感嘆の声を漏らした。 「それにしても驚いたよ。生徒たちから聞いたが、君がその剣一本でサラマンダー・ラプトルを次々と一刀両断し、ルシアン君との見事な連携で群れを壊滅させたそうだね。平民の執事と聞いていたが……まさかこれほどの傑物とは」

「いえ、私はただ、ルシアン様の執事として当たり前のことをしたまでです」 淡々と返すアレンに、エレノアは呆れたように、しかし嬉しそうに笑った。 「当たり前の執事は、亜竜の大群を一人で切り伏せたりはしないさ。君のこの桁外れの活躍は、私から学園長にもしっかりと報告させてもらうよ。今後の処遇も含めてね」 そう言い残し、エレノアは他の教師たちの指揮に戻るため、颯爽と立ち去っていった。

「僕たちも、一度寮に戻ろうか」 ルシアンが歩き出そうとしたその時、アレンはその背中に向けて、少し低いトーンで声をかけた。 「ルシアン様。これが終わって落ち着いたら、少しお話ししたいことがあります」

その声の真剣さに、ルシアンは何かを察したように足を止め、振り返って優しく微笑んだ。 「分かったよ。……僕も少し疲れたから、次の講義は休むとしよう。それに、こんな大事件があったんだ、しばらく講義自体が中止になるだろうしね。部屋でゆっくり話そう」

その日の夕方。安全が確保された男子寮のルシアンの自室にて。 アレンは紅茶を淹れ終えると、男が死に際に口にした言葉をルシアンに告げた。

「──『黒の円卓ノワール・カノン』、ですか」 ルシアンは、運ばれたカップに手を付けぬまま、その顔を深刻に曇らせた。

「ルシアン、その名に心当たりがあるのか?」

アレンがいつもの丁寧な執事の口調を崩し、低い声で尋ねる。二人きりの時だけ許された、対等な相棒としての口調だった。

アレンのその言葉を聞いた瞬間、ルシアンは張り詰めていた緊張が少しだけ解けるのを感じた。表舞台では完璧な執事として振る舞うアレンが、自分の前だけで見せる『素の顔』。それこそが、ルシアンにとって最も信頼できる安全基地だった。

「……僕も、父様の書斎にある機密文書で名前を見たことがある程度だけどね」 ルシアンはいつもの穏やかなトーンで、アレンに向けて語りだす。 「彼らは、国境を越えて暗躍する、歴史上最も危険な魔導犯罪組織の一つだよ。王国の転覆や、禁忌とされた古代魔導具の強奪など、世界の秩序を破壊するためなら手段を選ばない過激派だ」

ルシアンは窓の外の沈みゆく夕日を見つめながら、声を潜める。 「彼らの最大の特徴は、任務に失敗した末端の構成員を、遠隔の『呪印』で容赦なく脳死させて口を封じる冷酷さにある。アレン、君が見たあの紋様は、まさにその呪印の目印だよ。まさか、そんな組織が学園の演習場にまで手を伸ばしているなんて……」

ルシアンの説明を聞きながら、アレンは胸の奥で、かつてないほどの鋭い直感を抱いていた。

(魔物を狂暴化させる魔導具、解呪と同時に即座に下される冷酷な口封じ。これはただの犯罪組織の規模じゃねえ。国の上層部、あるいは学園の内部にまで、奴らの『根』が張っている可能性があるな……)

異世界の闇は、アレンが想像していたよりも遥かに深く、そして冷酷だった。 だが、鬼の副長の魂を持つ男の心に宿ったのは、恐怖ではなく、それを根絶やしにするための、より一層深い「警戒」と「闘志」だった。


第57話をご覧いただき、ありがとうございました!


これです、これが見たかった……!「新選組副長・土方歳三」としての容赦なき尋問タイム!!


前半のバトル&尋問、めちゃくちゃ興奮しました。魔法をまともに受けるのではなく兼定の身で叩き斬り、内部に衝撃を通す峰打ちで一撃無力化。そこからの「指を一本ずつ叩き折る速度、どっちが早いか試してみるか?」という底冷えするセリフ……。温室育ちの魔導犯罪組織の末端に、本物の幕末の修羅の恐怖をこれでもかと刻みつける姿は、ダークヒーローとしての魅力が爆発していました。


呪印によって口を封じられたのは悔しいですが、それによって敵が「国の上層部や学園の内部にまで根を張っている」というアレンの鋭い直感に繋がるのが流石です。


そして後半、アレンが無事に戻ってきたことに本気で安堵し、肩を強く掴むルシアン様の姿に胸が熱くなりました。夕方の自室、運ばれた紅茶を前に、二人だけの時にだけ許された「対等な相棒としての口調」で話すアレン。常に気を張るルシアン様にとって、アレンの前だけが「本当の安全基地」になっているという関係性が本当に尊すぎます……!


エレノア教授からの特大の評価もあり、アレンの学園での存在感は増すばかり。しかし、判明した敵『黒の円卓ノワール・カノン』の影はあまりにも不気味です。


牙を剥いた狼の闘志は、この深い闇をどう切り裂いていくのか!?

学園での裏稼業、そして内政、ここからの新展開も目が離せません。どうぞお楽しみに!


【作者からのお願い】

「アレンの副長(拷問官)モードのセリフにシビれた!」「ルシアン様の安全基地になっている二人の距離感が好き!」「巨大な敵の登場でこれからの展開が楽しみ!」と思ってくださった方は、ぜひ作品への応援をお願いします!


皆様のブックマークと評価(★5)が、アレン(土方)がルシアンと共に、学園に潜む『黒の円卓』の犬どもを根こそぎ炙り出し、兼定で塵一つ残さず叩き斬る最強の原動力になります!


なろう読者様:下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に染めて、闇の組織へ宣戦布告のブーストを!


カクヨム読者様:【★で称える】ボタンや【フォロー】のワンタップをぜひお願いいたします!

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