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第56話:残響と追跡

いつも最高の応援と熱い評価をいただき、本当にありがとうございます!

第56話をお届けします。


魔力ゼロの『鬼の副長』アレンと、多重魔法の『神童』ルシアン。

互いの死角を完璧に補い合う二人の天才による過酷な連携は、炎を纏い狂乱する亜竜の群れをも瞬く間に物言わぬ肉塊へと変えていきます。


死者ゼロという奇跡的な勝利の余韻も束の間、アレンの野生の勘が地面に隠された「不気味な魔導具」を発見。

そして、それと同時に耳に届いた、草木を乱暴にかき分ける微かな足音――。


「誰か逃げてます。追う!」


優しい執事の顔を脱ぎ捨て、かつて夜の京都で不逞浪士を狩り続けた『新選組副長』の獣の眼を剥き出しにするアレン。

陰謀の首謀者である黒ローブの男を、鬼の牙が容赦なく追い詰めます!

「ルシアン様、跳びます!」 「任せて、アレン──【ソニック・ブースト】!」

アレンの短い掛け声に、ルシアンの多重魔法が完璧なタイミングで応じる。 ルシアンの放った猛烈な追い風。魔力を持たないアレンだが、その風の指向性と気流の渦を一瞬で理解し、己の身体を完璧にその流れへと乗せてみせた。魔法を誰よりも『使いこなす』その狂気的な戦闘センスにより、アレンの身体は文字通り「弾丸」となって、炎を纏う【熔岩大蜥蜴サラマンダー・ラプトル】の群れの中心へと突っ込んだ。

凄まじい熱気がアレンの肌を焼きにかかるが、前世で幾多の返り血と硝煙に塗れてきた執事は、眉一つ動かさない。 むしろ、魔物たちが炎を放つために「大きく口を開けた瞬間」──その喉の奥の最も柔らかい肉を、冷徹に狙い定めていた。

キィィィン──ッ!!

鋭い金属音が響くと同時に、アレンの手にする『兼定』が目にも留まらぬ速度で三連突を放つ。鋭い切っ先が、熱気を吹き出す魔物たちの喉笛を正確に、深く貫いた。 間髪入れず、アレンは返り血を避けるようにバックステップで後退する。

「させないよ! 【フレイム・バレット:バースト】!」

アレンが下がった瞬間の死角を補うように、ルシアンの精密な火炎弾が、別の魔物の目をピンポイントで爆破する。 魔力ゼロの『鬼の副長』による神速の近接剣技と、戦況を完全にコントロールする『神童』の多重並列魔法。二人の天才による阿吽の呼吸の連携は、もはや一つの芸術だった。

補助員たちが呆然と立ち尽くしている間に、戦場を埋め尽くしていた凶暴な魔物の大群は、瞬く間に物言わぬ肉塊へと変えられていった。

やがて、最後の一頭が地響きを立てて倒れ伏し、漆黒の森に静寂が戻る。

アレンは流れるような動作で刀身の血を鋭く払うと、一滴の血も残さず、一閃の元に刃を鞘へと滑り込ませた。カチャリ、と静かに響いたその美しい所作に、クリスティア王女は呆然と自らの胸を押さえていた。 (ああ……あれが、本物の武士もののふの嗜み……。お淑やかなだけの騎士たちの演武が、いかに退屈なものだったかよく分かったわ……!) これまでにない激しい胸の高鳴りとともに、王女はアレンへの妄信的なロマンをさらに加速させていく。

アレンは油断なく周囲の警戒を続けながら、救護の指揮を執るルシアンの元へと歩み寄った。

「ルシアン様」 「ああ、アレン。……改めて、本当に助かったよ。君が来てくれなければ、今頃どうなっていたか分からない」

ルシアンは心からの感謝を込めて、相棒の目を真っ直ぐに見つめた。 対するアレンは、ふっといつもの沈着冷静な執事の表情に戻り、淡々と応じる。

「当然の務めです。ルシアン様を無事にお返しするまでが、俺の仕事ですから」 「ふふ、相変わらず手厳しいな。でも、本当に頼りになるよ」

ルシアンはくすっと笑い、少しだけ肩の力を抜いた。しかし、生き残った学生たちの救護状況を確認すると、幸いなことに重軽傷者は数名出たものの、死者は一人も出ていなかった。この大惨事の中で死者ゼロというのは、奇跡に近い。

すぐに引き締まった表情に戻ったルシアンは、倒れ伏す亜竜たちの巨躯を見やる。 「それにしても……おかしいな。【熔岩大蜥蜴サラマンダー・ラプトル】は、この時期の、しかもこんな王都近郊の演習場に現れるような魔物じゃない。なぜこんなところに……」

「──理由なら、これかもしれません」

アレンの視線は、すでに別の場所を捉えていた。 何かに導かれるように、アレンは無駄のない足取りで、少し離れた草むらの陰へと進んでいく。

「アレン?」

ルシアンが不審そうにその後を追う。 アレンが鬱蒼とした草木を払いのけ、地面から何かを拾い上げた。 それは、手のひらサイズの歪な形をした石の塊──いや、その表面には複雑な魔力回路が刻まれており、不気味に、鈍い赤色に明滅していた。

「これは……不自然な魔導具ですね。魔物を狂暴化させ、ここまで誘導していたのは、おそらくこいつです」 「何だって……!? ということは、やっぱり誰かが意図的に──」

「──ルシアン様」

アレンの言葉が、鋭く遮られた。 その瞬間、アレンの瞳から『有能な執事』の光が完全に消え失せた。代わりに出現したのは、かつて夜の京都で不逞浪士を狩り続けた、冷酷無比な新選組副長としての『獣の眼』。

魔導具の明滅の周期。周囲の空気の僅かな歪み。そして、微かに聞こえた、草木を乱暴にかき分ける「人間の足音」──。

(魔導具が壊されたのを確認して、今、この場から逃げようとしている奴がいる……!)

「アレン!?」 「誰か逃げてます。追う!」

アレンは拾い上げた魔導具をルシアンの手元へと放り投げると、弾かれたように地を蹴った。背後で叫ぶルシアンの声すら、戦う鬼の耳にはすでに心地よい雑音でしかなかった。

「待って、アレン! 僕も行く!」 ルシアンが声を張り上げて叫ぶが、アレンは振り返ることなく、猛然と森の奥へと突き進みながら鋭い声を響かせた。

「駄目です! ルシアン様はここに残って、王女さまたちを護ってください! 敵の本命がまだ潜んでいるかもしれない!」

「っ……!」 その合理的かつ絶対的な正論に、ルシアンは足を止めざるを得なかった。自分の役割は、ここにいる学生たちの安全を確保することだ。 「頼んだよ、アレン……! 無茶はしないでくれ!」

ルシアンの祈るような声を背に受けながら、アレンは風となって木々の隙間を駆け抜けていく。 前方の茂みが激しく揺れている。間違いない、人間の逃げ足だ。前世の実戦で培った気配の察知能力と、日々鍛え直してきたこの肉体があれば、逃がすはずがなかった。

「そこを動くんじゃねえ……!」

アレンは『兼定』の柄に手をかけ、一気に距離を詰め──茂みを強引に突き破って、その『逃亡者』の前に回り込んだ。

「──しまっ……!?」

行く手を遮られ、驚愕の声を上げて足を止めたそいつは。

全身を泥と深夜のような黒いローブで包み、深くフードを被った、明らかにこの学院の関係者ではない──『不審者の男』だった。


第56話をご覧いただき、ありがとうございました!


アレンとルシアン様の連携、あまりにも格好良すぎて語彙力が消失しました……!!


ルシアン様の【ソニック・ブースト】の風を完璧に理解して弾丸のように突っ込み、魔物が口を開けた一瞬の隙を狙って喉笛を三連突で貫くアレン。そしてアレンが下がった瞬間に視角をカバーするルシアン様の精密爆破。魔力ゼロの剣士と多重魔法の魔法師という、この二人だからこそできる芸術的な実戦コンビネーションに最高に痺れました。


兼定を鞘に納める「カチャリ」という一音だけで、クリスティア王女のハートがさらにとんでもない勢いで撃ち抜かれているのには笑ってしまいました(笑)。お姫様、もうアレンの私設騎士にでも就職した方がいいのでは……!


しかし、ラストは一転して新選組の「御用改め」の時間へ。

現場に残された狂暴化の魔導具から、即座に逃亡者の存在を察知したアレン。ルシアン様に「王女を護れ」と絶対的な正論を言い残して単身で森を爆走し、黒ローブの不審者の前に回り込んで『兼定』の柄に手をかけるシーンの緊迫感、最高に土方歳三でしたね。


牙を剥いた狼から、本物の戦場を知らない温室育ちの暗殺者(?)が逃げ切れるはずもありません。

次回、ついに不審者の身柄確保&お仕置き(?)タイムの開幕です!この学園の裏で蠢く陰謀の正体とは一体何なのか。

怒りの副長による容赦なき尋問編、どうぞお楽しみに!


【作者からのお願い】

「主従の息の合ったコンビネーションが無双すぎて熱い!」「王女の妄信っぷりが最高に可愛い」「ラストの鬼の副長モードのアレンにゾクゾクした!」と思ってくださった方は、ぜひ作品への応援をお願いします!


皆様のブックマークと評価(★5)が、アレン(土方)が逃げる黒ローブの足をへし折って陰謀の黒幕を根こそぎ引きずり出す最強の捕縛縄になります!


なろう読者様:下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に染めて、御用改めの副長へ最高の応援を!


カクヨム読者様:【★で称える】ボタンや【フォロー】のワンタップをぜひお願いいたします!

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