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第47話:執事の昼休憩、深淵の図書館

いつも最高の応援をいただき、本当にありがとうございます!

本日から新章【魔法学園編】がスタートします!第47話をお届けします。


王国中のエリートが集う聖アイビス国立魔法学園に、ルシアンの「秘書(執事)」として潜入したアレン。

いつもの浅葱色の羽織から、仕立ての良い漆黒の燕尾服に白手袋という「完璧な執事姿」へと変身します。


声をかけたくて堪らないのに立場上近づけず、遠くから金髪縦ロールをいじりながら赤面して睨みつけるセレナお嬢様のリアクションにもご注目ください(笑)。


周りの貴族たちが「ただの平民の奉公人」とナメて通り過ぎる中、アレンは犬に擬態したアルクを連れ、学園の大図書館へと足を運び――。

牙を隠した鬼の副長による、学園隠密御用改め編、いよいよ開幕です!

王立聖アイビス国立魔法学園の朝は、目も眩むような華やかさに満ちている。 白亜の校舎、美しく整えられた庭園、そしてそこに集うのは、贅を尽くした制服に身を包んだ王国中のエリート貴族や王族の子弟たちだ。彼らは誇らしげに己の魔力を誇示し、輝かしい学園生活の始まりに胸を躍らせていた。

だが、そんな華やかな喧騒から一歩引いた「影」の場所に、アレンの姿はあった。

「――ルシアン様、本日の午前講義に必要な魔導書、および筆記用具の用意が整いました。どうぞ」 「ありがとう、アレン。それにしても……うん、やっぱりすごく似合ってるよ」

回廊の隅で、ルシアンがこらえきれないといった様子でクスクスと笑う。

現在のアレンの姿は、いつもの特務隊の黒衣ではない。仕立ての良い漆黒の燕尾服に、汚れ一つない白手袋。髪も端正に整えられ、どこからどう見ても「ド・グランヴェル公爵家の若き一級執事」そのものだった。

「ルシアン様、からかうのは止めてください。この窮屈な服のせいで、刀(兼定)が懐に隠しづらくて敵いません。……あと、あっちからの視線もいい加減鬱陶しいです」

アレンがわずかに視線を動かした先。少し離れた場所から、ド・グランヴェル家の令嬢セレナが、頬を朱に染めながらこちらを強烈に睨みつけていた。 声をかけたいが、建前上「兄の召使い」であるアレンに公然と話しかけるわけにもいかず、もどかしそうに金髪の縦ロールを指でいじっている。

「はは、セレナもアレンのその格好が新鮮で仕方ないんだよ。じゃあ、僕は講義に行ってくる。お昼まで自由にしていていいよ、僕の『優秀な執事』殿」

「はっ。良き学びを、ルシアン様」

アレンはお上品に深く一礼し、ルシアンを見送った。 周囲のエリート学生たちは、アレンを「公爵家のただの平民の奉公人」と見做し、一瞥をくれた後は一様に興味を失って通り過ぎていく。

(それでいい。誰も俺を見ねえなら、これほど動きやすい環境はねえからな)

アレンは完璧な執事の歩調で、誰も注目しない死角へと移動する。その足元から、トコトコと小さな黒い影がついてきた。可愛い黒犬に擬態した『黒角狼』の子供、アルクだ。

「クゥ」

「静かにしろ、アルク。ここからは俺たちの時間だ」

アレンが指先で合図を出すと、アルクは気配を完全に殺し、アレンの燕尾服の影へと滑り込むように同化した。

昼休憩。他の学生たちが食堂で優雅に談笑している間、アレンが向かったのは、学園の中心にそびえ立つ大図書館だった。 あらゆる基礎魔法、応用魔法、果ては失われた古代魔術の文献まで、この世界の「すべての魔法の知識」が詰め込まれた、知の深淵。

一般の学生たちが、歴史や高尚な魔法理論の棚に群がる中、アレンが迷わず手を伸ばしたのは『魔力循環の構造と変異』『詠唱破棄における体内パスの構築』といった、極めて泥臭く、かつ実戦的な技術書だった。

パサリ、と白手袋をはめた手でページをめくる。 アレンの黒い瞳が、猛烈な速度で文字列を、そして魔法陣の構造を「暗殺者の目」で解析していく。

(……なるほどな。この世界の魔法使いどもは、魔法を『放つもの』だと信じ込んでやがる。だから詠唱という隙が生まれるし、外されたら無防備になる。だが、この構造を反転させて、最初から体内の『内圧』として固定したらどうなる……?)

前世、剣一本で数多の戦場を潜り抜けてきた土方歳三の合理主義。 アレンは魔法を綺麗で高尚なものとしては見ていない。どうすれば「最も速く、最も確実に、敵の命を刈り取れるか」。その一点のみを基準に、最高峰の知識を独自の戦闘思想へと変換していく。

アレンが本をめくる傍らで、影から這い出たアルクが、まるで主人の勉強を手伝うように、前脚で次の本をトントンと叩いた。

「ん?……『魔獣の生態と影の使役』か。こいつはお前用だな、アルク」

アレンが頭を撫でてやると、アルクは嬉しそうに目を細めた。 誰もが羨む最高峰の学園。しかしアレンにとっては、ここもまた特務隊の屯所と同じ、牙を磨くための「修練場」に過ぎなかった。

「ふぅ……」

数冊の難解な魔導書を完全に頭に叩き込み、時計を見る。そろそろルシアンの昼食の手配をする時間だ。アレンは本を綺麗に元の位置へ戻し、燕尾服の埃をスッと払った。

「さて、アルク。仕事に戻るぞ。午後からは、お上の犬どもがルシアン様にどんなちょっかいをかけてくるか……陰から間引きに行くとしようや」

「グルル……」

可愛い子犬の鳴き声の裏で、アルクの瞳に一瞬だけ、最凶の魔獣としての鋭い光が宿る。 完璧な執事の微笑みを浮かべたアレンは、再び音もなく、学園の華やかな光の裏へと消えていくのだった。


第47話をご覧いただき、ありがとうございました!


ついに始まりました学園編!

アレンの燕尾服&白手袋姿、書いていて脳内再生が余裕なほどスタイリッシュで最高でした。刀が隠しにくいと文句を言いつつも、完璧な執事の所作をこなしてしまうあたりが流石アレンです。そして、そんなアレンに話しかけられずもどかしそうに悶絶しているセレナお嬢様が可愛すぎて、ルシアン様と一緒にクスクス笑ってしまいました。


ですが、お遊びモードはここまで。後半の大図書館でのアレンの思考には、まさに「鬼の副長」の凄みが詰まっていましたね。

綺麗で高尚な魔法を、「どうすれば最も速く確実に命を刈り取れるか」という暗殺・実戦のキャパシティでハッキングしていくアレン。前世の剣一本で修羅場を生き抜いた土方歳三の合理主義が、この学園のすべての魔法知識を『最強の凶器』へとアップデートさせていく予感に、今からゾクゾクが止まりません!

カバン(影)の中から勉強を手伝うアルクも、可愛いフリして一瞬見せた最凶の魔獣としての眼光が最高に頼もしかったです。


貴族の坊ちゃんお嬢ちゃんたちが優雅にランチを楽しんでいる裏で、静かに、しかし確実に「間引き」の準備を進めるアレン。

ここからどんなお上の犬どもがルシアンたちに牙を剥き、そしてアレンに返り討ちにされていくのか――。


ちなみに、村で死ぬ気で特訓を始めたリナがどのタイミングでここに乱入してくるのかも、どうぞお楽しみに!


【作者からのお願い】

「アレンの執事服姿が想像以上に格好良すぎる!」「セレナお嬢様のツンデレな視線が可愛すぎる!」「アレン独自の魔法解析にシビれた!学園編のこれからが楽しみ!」と思ってくださった方は、ぜひ作品への応援をお願いします!


皆様のブックマークと評価(★5)が、アレンが学園の特権貴族どもの鼻柱を裏からへし折っていく最大の武器になります!


なろう読者様:下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に染めて、新章への熱いエールを!


カクヨム読者様:【★で称える】ボタンや【フォロー】のワンタップをぜひお願いいたします!

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