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第45話:不骨な願いと、少女たちの切符

いつも最高の応援をいただき、本当にありがとうございます!

第45話をお届けします。


王宮審問会を完全勝利で乗り切った特務隊。

凄まじい戦果を挙げたアレンに対し、現領主ガラルド公爵は「一つだけ願いを叶えてやる」と破格の褒美を提示します。


金か、地位か、それとも特務隊の新たなる力か。


そんな並の人間なら目を眩ませる好機に、アレンが求めたのは、腰の兼定に結ばれた「不器用なお守り」の主への、あまりにも不骨で不器用な情でした。


舞台は、四大貴族の狂犬どもが待ち受ける【聖アイビス国立魔法学園】へ。

裏稼業(御用改め)の任務を背負ったアレンと、彼の隣を巡って火花を散らす少女たちの、新たなる章が幕を開けます――!

審問会から数日後。 第一王子ラインハルトから下された特務隊への「完全無罪」の裁定は、領都の貴族社会に凄まじい衝撃を与えた。平民のドブネズミと蔑まれていた特務隊が、四大貴族の喉元に刃を突き立て、完全にねじ伏せたのだ。

そんな興奮冷めやらぬ中、アレンは夜のド・グランヴェル公爵邸の執務室に呼び出されていた。

重厚なマホガニーのデスクの向こう側。現領主ガラルド・ド・グランヴェル公爵は、上質なブランデーのグラスを傾けながら、相変わらず切れ長の鋭い瞳でアレンを見つめていた。その傍らには、息子のルシアンも静かに佇んでいる。

「待たせたな、アレン。先の審問会、実に見事だった。王国の最高機密を帝国の黒鉄衆に売り渡そうとしていたネズミどもを、完璧な証拠と共に白日の下に晒してのけた。我がド・グランヴェル家の面目もこれ以上ないほどに立った。お前はまたしても、私に最高の戦果を持ち帰ってくれたな」

ガラルドは満足げに喉を鳴らし、グラスを置いた。しかし、その直後、公爵としての厳格な顔つきに戻り、アレンに一枚の漆黒の紋章が刻まれた書状を差し出してきた。

「時に、アレン。お前に新たなる任務を与える。――近々、ルシアンと共に【聖アイビス国立魔法学園】へ入ってもらう」

「……あ?」

アレンは眉を寄せ、露骨に嫌そうな声を漏らした。

「学園、だと? ガラルド様、冗談は勘勘弁してください。俺はスラムのゴロツキどもを率いる特務隊の局長だ。今さら貴族の坊ちゃんお嬢ちゃんが集まるお遊びの学校に、何の用があるってんです」

「お遊び、か。お前ならそう言うと思ったよ」

ルシアンが肩をすくめ、苦笑交じりに口を挟む。

「だけどね、アレン。これは冗談でもお遊びでもないんだ。先の審問会で君が五家連合を叩き潰した結果、奴らは完全に狂犬と化した。特にボルテール侯爵の怨念は凄まじい。奴らは、王宮の騎士団の目が届かない学園内で、僕やセレナを直接狙ってくる可能性が極めて高い」

ガラルドが低く、地響きのような声で引き継いだ。

「学園は、四大貴族や王族の子ていが通う聖域であり、若き魔法師たちの治外法権だ。いくら特務隊が功績を挙げたとはいえ、平民の武装組織が公然と立ち入れば国家規模の政治問題になる。……だからこそアレン、お前には表向き『ルシアンの私的な召使い(秘書)』として牙を隠し、学園に潜り込んでもらいたい。陰から這い寄る害虫を、特務隊の長として秘密裏に駆除(御用改め)しろ。――受けてくれるな?」

アレンは和泉守兼定の柄をポンと叩くと、不敵に笑った。

「なるほど、表立って動けねえからこそ、裏で仕留めろってわけですか。……公にできねえ裏稼業(暗殺・諜報)なら、俺の本領だ。いいでしょう、お上の腰抜けどもが学園で小細工を仕掛けてくるってんなら、裏で綺麗に片付けてやりますよ。その任務、引き受けます」

「フッ、頼もしいな」

ガラルドは満足げに頷き、身を乗り出した。

「さて、ここからが本題だ。お前はいつも『休暇』だの『身内の情』だのでお茶を濁すが、今回は国難を防いだ大功績だ。ガラルド・ド・グランヴェルとして、お前に何も報いぬわけにはいかん。……金か? 地位か? それとも新しい特務隊の兵装か? 一つだけ、お前の願いを叶えてやろう」

公爵からの破格の提示。並の人間なら気絶するような好機に、アレンは少しだけ視線を落とした。 その指先が、腰の兼定の下げ緒に結ばれた、少し不器用な縫い目の「手作りのお守り」にそっと触れる。

どれだけ才能や覚悟があっても、平民という身分だけで中央の舞台に立つことすら許されない。そんな理不尽は、前世の多摩で嫌というほど見てきた。武士の身分を持たない田舎者バラガキたちが、泥をすすり、命を懸けて京の都へと這い上がっていったあの頃の記憶が、故郷で必死に泥を這う幼馴染の姿と重なる。

アレンは顔を上げ、真っ直ぐにガラルドを見据えた。

「――なら、一つだけ願い出ます。俺の故郷の幼馴染に、リナって娘がいます。平民ですが、実戦特化の魔法の才能と、死んでもへこたれねえ根性は間違いなく本物だ。……あいつに、中央(学園)への切符をやってくれませんか。平民の身分でも学園に入学できるよう、ガラルド様の権力で手配していただきたい」

その言葉に、ガラルドは一瞬、意外そうに目を丸くした。 だが、すぐに思い当たったようにククッと低く笑った。

「……リナ、か。なるほど、あの娘のことだな」

「ご存知なのですか?」

「ああ。以前、お前の村での『休暇』から帰ってきたセレナを見た時、私は我が目を疑ったのだ。あのプライドの高い娘が、服を泥まみれにし、金髪に草を絡ませ、平民の出す不骨な猪の鍋を美味そうに貪り食っていた。さらに、魔獣の目を拳で殴りつけたなどと誇らしげに語るのだからな」

ガラルドはブランデーを一口含むと、感慨深げに目を細めた。

「魔法至上主義の我が家で、魔力を持たぬセレナはずっと孤独だった。そんな彼女が『リナという、平民ながら物凄い工夫で魔法を使う、生意気で恐ろしいライバルがいますわ』と、初めて他人に強い執着を見せた。セレナが夜遅くまで木刀を振るうようになったのは、間違いなくそのリナという少女の影響だ。……我が娘にそこまでの火をつけ、ハングリー精神を植え付けた戦友なら、学園に引き入れる価値はある。平民の特別枠として入学を許可するに何の手間もない。よかろう、その願い、私が引き受けた」

「……感謝します、ガラルド様」

アレンは深く一礼した。 これでよし、と胸の内で小さく息を吐く。 あの村で、魔獣の襲撃から命懸けで村を守り、アレンの背中に追いつくために強くなろうと誓ったリナ。彼女に、最高峰の舞台へと進むための「切符」を、これで渡すことができた。

(特務隊の頭領として、身内の面倒を見るのは当然だからな。……まぁ、あの馬鹿正直なリナのことだ。『アレンと同じ学校に行ける!』なんて知ったら、今度は嬉しさでひっくり返るかもしれねぇが……)

アレンの胸に、不骨ながらも温かい情が去来していた。

「話は決まりだ。ルシアン、アレン、あるいはセレナ。リナという娘も加え、次なる戦場は学園となる。……ド・グランヴェル家の牙を、思い知らせてやれ」

「御意」

ガラルドの冷徹な号令に、アレンは黒い瞳に鋭い闘志の炎を灯しながら、静かに答えた。

――四大貴族の跡取りたちが待ち受ける、若き魔法師たちの治外法権、【聖アイビス国立魔法学園】。 そこは、新選組副長・土方歳三の思想を継ぐ少年アレンと、彼の隣を巡って激しく火花を散らす二人の少女、リナとセレナが織り成す、新たなる激闘と恋の修羅場の幕開けの舞台であった。


第45話をご覧いただき、ありがとうございました!


アレン、お前って男はどこまで格好いいんだ……!!


公爵からの「何でも願いを叶えてやる」という言葉に対し、迷わず幼馴染のリナに学園への切符(入学許可)を求めたアレン。前世の多摩で、身分なきバラガキたちが命を懸けて京の都へと這い上がっていった記憶とリナの姿を重ねる描写は、書いていて胸が熱くなりました。地位や名誉ではなく、身内のために最高の環境を引っ張ってくるあたり、まさに新選組を裏から支えた「頭領」としての器量そのものです。


そしてガラルド公爵の口から語られた、休暇帰りのセレナお嬢様の様子が最高でしたね(笑)。ドレスを泥まみれにし、猪鍋を貪り食い、魔獣を拳で殴ったと誇らしげに語る愛娘を見て、父親としてリナの価値を認めていたガラルド公爵もまた粋な男です。


アレンの本領である「公にできない裏稼業(学園での隠密御用改め)」の任務も決まり、いよいよ次なる戦舞台へのピースが揃いました。

自分が同じ学校に行けるとも知らず、中央への切符を貰ってひっくり返るであろうリナ。そして、学園でリナと再会し、アレンの隣を巡って本格的に「恋と魔法の修羅場」を開幕させるセレナお嬢様。


貴族の坊ちゃんお嬢ちゃんたちのお遊びの場(治外法権)で、浅葱色の牙がどう裏社会を恐怖に陥れるのか、そしてヒロインレースの行方はどうなるのか!?

新章【国立魔法学園編】、どうぞご期待ください!


【作者からのお願い】

「アレンの不骨な優しさに惚れた!」「リナに切符を渡す展開が最高にエモい!」「セレナとリナが学園で激突する次章が楽しみすぎる!」と思ってくださった方は、ぜひ作品への応援をお願いします!


皆様の評価(★5)とブックマークが、アレン(土方)が学園の老害ジュニアどもを完膚なきまでに叩き潰す最高の燃料になります!


なろう読者様:下部にある【☆☆☆☆市】を【★★★★★】に染めて熱いエールを!


カクヨム読者様:【★で称える】や【フォロー】のワンタップをぜひお願いいたします!

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