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第30話:死線を駆ける浅葱

いつも本作をお読みいただき、本当にありがとうございます!

前回、故郷の村を襲った魔獣事件の背後に「バルディア帝国」の影を察知したアレン。 今回、特務隊(異世界新選組)が誇る密偵・ミアの情報により、ついに帝国の密輸拠点を完全に捕捉します。

ついに放たれる、あの「お馴染み」の怒号。 泥臭く、しかし圧倒的な特務隊の「御用改め」が今、夜の領都に響き渡ります!

激動のアクションと、不穏な戦火の予兆をお楽しみください!


夜の領都。特務隊の詰所(屯所)の作戦室では、緊迫した空気が張り詰めていた。

机の上に広げられた敵拠点の地図。それを囲む隊士たちの先頭に立つのは、190センチ近い巨躯を持つ筋肉の塊――特務隊の特攻隊長、ボルドだ。

「……局長。ミアの奴が、完璧な仕事をしてきやがりましたぜ」

ボルドが太い指で地図の一点を指す。 スラムの孤児たちのリーダーであり、現在は特務隊の影(密偵)を率いる猫耳の少女・ミア。彼女がその天性の隠密センスを活かし、他国バルディア帝国と繋がる密輸組織の拠点の構造、見張りの交代時間、さらには隠し通路の位置までを完璧に洗い出してきたのだ。

「裏口の退路には、すでに三番隊を回してあります。ネズミ一匹通しやせん。……局長、いつでもいけますぜ」

普段は豪快なボルドだが、アレン(土方)の前では直立不動の忠犬となる。 アレンは和泉守兼定の柄に手をかけ、切れ長の目を冷徹に細めた。

「よくやった、ミア。……ボルド、野郎どもを動かせ。誠の道から外れたネズミ共を、根こそぎ狩り出すぞ」

「はっ!!」

ボルドの地を震わせるような野太い返事が響く。アレンの足元では、相棒の黒角狼アルクが、主の放つ凄絶な殺気に呼応して琥珀色の瞳をギラつかせていた。

夜闇に紛れ、特務隊が裏通りの廃倉庫を完全に包囲する。

「――御用改めである! 神妙にしやがれッ!!」

ボルドの怒号と共に、倉庫の頑丈な木扉が文字通り「粉砕」された。 突入する浅葱色の羽織。暗がりのなか、密輸組織の悪党たちが驚愕して跳ね起きる。

「な、なんだァ!? 騎士団じゃねえ、何だこのガキどもは!」 「構うな、魔法で焼き殺せ!」

敵の魔術師が慌てて杖を突き出し、炎の弾丸を放とうとする。だが、ボルドはその前に立ち塞がり、特大の鉄製大盾タワーシールドを地面に激しく叩きつけた。

ズガァァァン!!!

「へへっ、局長の『法』を舐めたヤクザ者がどうなるか……その身体にキッチリ教えてやるよ!」

凄まじい衝撃波が、敵の魔法の詠唱を強引に中断させる。ボルドの「大盾と剛剣」による重戦車のような突撃は、敵の防陣を文字通り粉砕していく。 指示通りの完璧な連携に、アレンの神速の踏み込みが滑り込んだ。

――一閃。

抜刀すら見えぬ天然理心流の刃が、敵の首魁の喉元でピタリと止まる。

「実戦に美しさなんざ要らねえ。……生き残りてぇなら、先に首を差し出しな」

アレンの冷徹な声に、悪党たちは恐怖で完全に戦意を喪失し、その場にへたり込んだ。

わずか数刻で、密輸組織の拠点は完全に制圧された。 縄をかけられた帝国の工作員たるボスの男が、血を吐きながらアレンを睨みつけ、勝ち誇ったように歪んだ笑みを浮かべる。

「ハハッ、制圧したつもりか……? だがその奥にある地図を見たなら分かるだろう。我が帝国の鉄槌が、この王国の『心臓』へ振り下ろされるのは、もう誰にも止められん……!」

ミアが奥の執務机の隠し引き出しから見つけ出してきたのは、一通の密書と、詳細な王国領の地図だった。そこにはある特定の場所に、鮮烈な「赤い烙印」が打たれている。

アレンは地図を見下ろしたまま、冷徹に思考を巡らせる。

(……なるほどな。ただの横流しのコソ泥じゃねえ。帝国側が本国での武器増強を行うために、この街の裏で巨額の資金を集めてやがったか。 shadow(影)で集めたその資金を注ぎ込む目標地点は……ここか)

地図に打たれた烙印の地――そこは、退路を断ち、兵力を集中させるには格好の要害であった。 アレンの脳裏に、かつて前世の最期に戦った、あの「五稜郭」の峻烈な光景がよぎる。

(ただの小競り合いじゃねえ。国を奪りにくる『本物の戦』の構えだぞ)

その時、スープの器を隠すように持ちながら、ミアがツンとした態度のまま呟いた。

「……ちなみに、その赤丸の場所。今かなりキナ臭い噂が流れてる。帝国のスパイが潜んでるって、スラムの耳にも入ってくるくらい。何も知らないのは、おめでたいお上の人間だけ」

「そうか。大金星だな、ミア」 「っ……! 別に、あんたのために言ったんじゃないから」

フン、とそっぽを向くミアだったが、猫耳がわずかに照れくそうに震えている。

「……ふぅ、一件落着だな! よし野郎ども、今夜は宴だ!」

襲撃を終え、詰所の厨房に戻ったボルドは、さっきまでの戦闘狂の顔から一転、巨大な鍋の前に立っていた。手際よく肉や野菜を刻み、特務隊特製『屯所鍋』を大鍋で煮込んでいく。

「おい、ミア! お前も大金星だったんだ、遠慮しねえでバカスカ食え!」

ボルドが並外れた大声でスープを差し出す。ミアは漂うスープの絶妙な香りに抗えず、恐る恐る一口口にした。その瞬間、ピクンと猫耳が跳ね上がる。

(……美味しい。悔しいけど、すっごく美味しい……!)

ツンツンしつつもスープの手が止まらないミアと、それを見てガハハと笑うボルド。特務隊の日常の一コマに、アレンはふっと息を漏らした。

だが、その視線の先にある地図を見つめる目は、再び「鬼」のものへと戻る。

「ボルド」

アレンが低く、冷たい声で名前を呼んだ。

「ヒッ……!! は、はい局長っ!!」

さっきまで豪快に笑っていた190センチの巨躯が、ビクッと跳ね上がり、直立不動で冷や汗を流す。その様子に、ミアが少しだけ呆れたようにクスクスと笑った。

「明朝、この地図を持ってルシアンの元へ行く。……これより先は、本当の戦場になるぞ」

(あの坊主は賢い。この地図を見せれば、すぐに事態の重さを理解するだろう。だが、理解できることと、本物の戦場に足を踏み出す覚候(覚悟)ができるかは別問題だ。……もし迷うようなら、その時は俺が背中を叩いてやるだけだ)

それは、修羅場をくぐり抜けてきた「大人」として、そして彼を主と決めた「腹心」としての確固たる決意だった。

「はっ! 御意に!!」

新たな仲間、最強の牙、そして頼れる密偵。新選組の陣容を異世界に揃え、鬼の副長は、国を揺るがす巨大な戦火の予兆の中へと、迷うことなくその足を踏み出すのだった――。


第30話をお読みいただき、ありがとうございました!

ついに「御用改め」が炸裂しました! 騎士団のような華麗さはありませんが、ボルドの盾とアレンの神速の連携こそ、この特務隊の真骨頂です。 戦いの後の「屯所鍋」を美味しそうに食べるミアの猫耳ピクピクに、少しでも癒やされていただければ幸いです。

しかし、掴んだ情報は「国家規模の戦争」の予兆。 アレンの脳裏をよぎる五稜郭の記憶――。次回、アレンはこの危機をルシアンに突きつけ、主君としての覚悟を迫ります。物語は一気にスケールアップしていきます!

【作者からのお願い】 「御用改め、最高だった!」「ボルドの直立不動に笑った!」という方は、ぜひ画面下部にある評価の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援してください! ブックマークや感想も、次の話を動かす大きな原動力になります。よろしくお願いいたします!


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