第四十八話
霧島可憐活動休止ライブは、過去一番の盛り上がりを見せていた。
場所はもちろんアキバ、そして例の地下箱ではなく、今回は作戦通り地上を確保した。アキバ地区を代表する者に許可を取り、当日もっと大通りでもあるアキバの通りそのものを、彼女のライブ会場とした。
交通規制をかけられるほど大衆から指示される彼女の人気を、レントは改めて理解した。
非常に危険だが、彼女の安全を守るため関係者にこのライブの真意は伝えていない。その代わり、今回はさりげなく人狼の牙からかなりの冒険者が派遣されており、出来る限り安全性を高めている。
おそらく身内に危険人物がいる可能性が高いので、あえて誰かに伝えることはできなかったのだ。
ライブ終了後、霧島可憐が一人になった時を狙わせるため、今回ライブ中の道路にはサルバが配置されている。知らない仲ではないため、サルバも彼女を守るのに全力をかける気でいた。それにサルバがいれば、敵もライブ中に聞けんな行動はとれないはずだ。
お決まりの謎のスタッフシャツを全員が着せられ、念入りな会場(道路)チェックをし、すでに一同は会場にて待機していた。
おとり作戦という強硬手段をとった以上、こうした警戒は限界までしておくに越したことはない。
すでに道路には溢れんばかりの人が集まり、ビル上部に設置された巨大モニターたちは、それぞれ霧島可憐を映し出していた。普段彼女を応援しているビルだけはなく、全てのビルが共通して彼女を映している。
「サルバさん、俺たちは一体どこで待機すれば?」
レントの万里雄の二人が、サルバに待機場所を確認する。彼女が実際に歌う場所は、当日道路を一台だけ通ることが許された巨大トラックの上だ。トラック一台分の幅を急遽用意した鉄柵で区切り、そこを往復運動できるようになっている。
活動休止する彼女をなるべくバッターたちの側で見せるために、せめてもの工夫だ。
そんな中、サルバは超人的な視力を生かすため、ビルの屋上で待機していた。会場全体を見下ろすことができるため、ここが一番警戒できるそうだ。
有事の際、ここからでは移動に時間がかかると思われるが、最強の一角である彼にとって、この程度の距離は何の問題もないらしい。
「この作戦を提案したのは万里雄君だし、君たち二人はトラックの中から外を警戒するんだ。」
「エッ!?」
二人は同時に同じ驚き方をした。
「今回使うトラックにはギミックを仕掛けてある。まず特別な魔法がいくつかかかっていて、とても頑丈であること。それに荷台の中から外を見渡せること。無論外からは中を見ることはできない。次に荷台からすぐに上部に移動できること。これで彼女のもとまで一瞬で移動できる。テレポータルを設置してあるから、そこに乗るだけだ。」
「な、なるほど。」
サルバが本気で動けば、この程度の準備は速攻で仕上がる。
二人は彼の存在を改めて認識した。
「もちろん二人が新米冒険者であることも理解しているから、中にはもう一人だけ力強い味方を待機させているよ。」
レントと万里雄の二人は、同時に見合い、そしてレントがしゃべり始めた。
「でも俺たち、他の冒険者には嫌われているらしいですよ。」
「ハハハ、知っているよ。でもまさか本人の口から聞くことになるとはね…。まぁそれもそのうち変わっていくと思うけど…ね。それはさておき、味方っていうのは冒険者ではないよ。」
「え?それじゃぁ?」
「アイシャだよ。彼女の魔法は一級品だし、万が一の時の対応力も実証済みだ。」
「まさかアイシャさんも元冒険者なんですか?」
レントがふと疑問に思えたことを口にする。
「いや、彼女は違う。でも‥‥まぁ強いことは確かだ。安心するといい。」
二人はサルバが一瞬何かを言おうとして迷ったような素振りをしたのを見逃さなかったが、なぜかそれに関して聞くには慣れなかった。もしも聞くとすれば、それはサルバにではなくアイシャに聞くべきことだと思えたからだろう。
「ありがとうございます。」
「ほら、ライブがもうすぐ始まる。二人はすぐにトラックへ!」
「わ、分かりました!」
二人同時に返事をし、トラックへとすぐに向かった。




