第四十七話
レントは気まずい雰囲気に後押しされ、もう一度口を開いた。
「あの…無言は困るな。…その…気恥ずかしいだろ?」
「うん…ごめん。」
レントはそっと手を放し、気まずさからブログを見るのは諦めた。
「今日はもう寝よう。明日は作戦会議だ。」
二人はお互いのベッドで眠りについた。
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レント、万里雄、可憐、サルバの四人は、ギルド長室に集合していた。
作戦会議の場として開放されたのがサルバの部屋だったからだ。奥にある執務席にはゾーイが座っており、本来であればギルド長がするはずである仕事を相変わらずこなしている。
二人掛けの椅子に向かい合って座る中、不意にレントの隣に座る万里雄が口を開いた。
「そういえばレント、僕昨日の記憶がないんだけど、昨日は結局どうなったの?」
「あぁ…それはだな…うん、あれからみんなすぐに眠っただけだ。可憐ちゃんは寮に泊まった。」
真実を巧妙に隠すため、可憐がどこに泊まったかは言わない。
「そうなんだ、確かにギルドは安全だもんね。」
万里雄はそういうと納得したのかレントに笑顔を向ける。もしかすると今日も万里雄には麻酔が必要になるかもしれない。
「それで、話をもどすけど、問題は作戦をどうするかだね。」
サルバが顎に手を当ててそう口にする。敵の情報が少ないい以上、何もできないのが現状だ。
「でも彼女の正体…に気付ける人間はそこまで多くはないのでは?」
レントは昨晩完全に眠りにつくまで、ずっとこの件について考えていた。
彼がたどり着いた結論は、身内の犯行ということだ。そもそも彼女はアイドルであり、一般に露出が多いわけではない。そんな中、彼女の秘密を知ることができるのは、彼女に近しい幾人かである可能性が非常に高いはずだ。
「それは…あんまり考えたくないけどね。」
可憐がうつむく、信用している人間に裏切られているとは、流石に考えたくないものだ。
万里雄がレントの推論を引く次ぐ。
「身内…可憐ちゃんには心当たりはないの?そもそもいつからまた襲われることになったの?アイドルになったおかげで一時的に被害は収まっていたんだよね?」
「そうだね…襲われたのは昨日が初めてだったよ。でも私も冒険者だったから…そういう気配みたいなのは一か月くらい前から感じてたんだ。でも気のせいだと思いたくて、誰にも言えなかったんだけど。」
「その時期に何か心当たりは?例えば吸血鬼的な何かをしちゃったとか。」
「う~ん…特には…ないかな。少なくとも私自身に心当たりはないんだけど…。」
「そっか…。」
万里雄は天井を見て何かを考えている。少なくとも彼の頭脳が優秀であることをサルバもレントも確信しているので、彼がだす結論に期待していた。
「一か月前か…まだこの世界にいなかったしな。」
万里雄がそれはそうかと思える一言をこぼす。それに可憐が反応する。
「え?もしかして万里雄ッちは、異世界から来たの?」
「そうだよ、地球から来たんだ。…そういえば、可憐ちゃんは完全に和名だね?」
「私は最初からこっちの世界の人間だよ。今となっては和名ってやつはこのリーンズであんまり珍しくないけど、この霧島可憐っていう名前は…昔友人からもらった名前でね。」
「貰った名前?」
なんとなく違和感のある言葉だった為、レントはそのまま聞き返した。
「…結構昔の話だけど、色々あってね。」
そういうと霧島可憐は、気まずそうに自分の頬をかいた。多分これ以上踏み込んで欲しくはない話題なのだろう。それを察した万里雄とレントは、この話題を振るのをやめた。
「…一つだけ考えていることがあるんだけど、いいかな?」
万里雄が口を開いた。
「どうしたんだい?」
サルバが聞き返す。
「かつてない規模で、活動休止ライブを開こう。場所は…もちろんアキバで、今度は地下じゃなく、地上でやるんだ。…まぁ言っちゃえば、おとり作戦っていうことになっちゃうけど。」
「待て、どうして彼女のライブがおとり作戦っていうのは理解できるが、確実に敵が現れるとは限らないんだぞ?いたずらに彼女を危険にさらすことは…。」
「確実に現れるよ。」
抗議したレントに、万里雄が断言した。
「そうか…だから活動休止ライブなのか…。」
サルバが納得した。それに続き、レントも万里雄の考えをようやく理解した。
昨日敵が襲ってきた時、彼女はライブの後を狙われていた。つまり敵は彼女の日常の動きを察知しているわけではなく、大まかにイベント規模で理解しているだけだ。
流石に大衆の面前ということは難しいはずだ。今後も狙われるならライブ後が非常に怪しいだろう。そんな中、彼女が活動休止になるとすれば、当然狙いに来るのは間違いない。それがこれ以上のチャンスを望めない、敵にとっての最後のチャンスになるはずだからだ。
それに彼女は隷属化を解くために、実際に活動を休止する。それを大いに利用する万里雄が思いついた画期的な作戦だった。
「でも危険なのは間違いないよ、どうする?」
万里雄が見たのは張本人である彼女の方だった。
「ファンの子たちに…危険はないんだよね?」
彼女が心配するのは自分ではなく、バッターたちだ。
その疑問にはサルバが答えた。
「大胆に行動するメリットはないから問題ないはず。それに…ギルドを上げて警備することを僕が誓おう。」
サルバが可憐の方を見る。確かに正体が分からない以上、敵から来てもらうのが一番になるだろう。
「…わかった。やるよ。仲間たちの弔いを…ライブにする。」
彼女は決意した。全ての死んでいった仲間たちの為、これからしばらく会えなくなるファンたちの為のライブを、全身全霊で行うことを。




