第四十一話
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霧島可憐の体調に気遣いつつ、レントがまず最初に来たのはギルドの受付だった。現在の時刻は二十三時半を回っており、ギルドの終了時間ギリギリだった。
人狼の牙は二十四時まで営業しており、遅くに帰ってきた冒険者も迎えることができる
流石に女性一人を背負って動き続けたレントの体力はもはや限界に近い。受付には倒れ込むように入っていった。その様子をいつも通りの無表情で観察していたアイシャと、レントは目があった。
「アイシャさん…回復魔法って使えますか?」
レントはアイシャを見つけるとすぐに回復魔法を頼もうとする。
彼女が魔法に精通していることは、事前に万里雄に魔法を教えてくれていたことから推測できていた。
「十五歳・ドマゾ…ついにSMプレイで被害者を出したんですか?」
「違います…いいから、早く彼女を助けてあげてください。」
レントはアイシャに疲労を加算させられたせいで、受付のカウンターに片手を置いて下を向く。すると背中に背負っていた彼女の顔が前に出て、フードが軽くずれた。
その瞬間にアイシャの態度は一瞬で変わった。
「そ…そんなまさか…。」
アイシャはレントが背負う女性の顔を見る。一目見れば見間違えることなどないほど彼女のファンであるアイシャは、その瞬間時が止まったかのようだった。
「そのまさかだよ。だからアイシャさん、早めにお願い。」
万里雄がそう付け足すと、アイシャはカウンターから飛び出した。そして丁寧にレントから霧島可憐を降ろすと、床に寝かせた。
「背中に刺し傷があります。」
万里雄がそういうと、アイシャは彼女をうつ伏せにしておもむろにその服をめくった。彼女の陶器のように美しい肌があらわになる。
幸いにも夜遅くだった為、他の冒険者の姿はない。
ただ念のために入り口側に体の大きな万里雄が霧島可憐に背を向けるようにして座る。体の大きな彼は器用に彼女を視線からかばう。万里雄はこう見えて女性に対して非常に紳士だ。
レントに関しては受付で倒れるように休んでおり、同様に彼女を見るような事はない。
だからこそ誰も気づいていなかったが、この時アイシャは少なくないよだれを垂らしていた。霧島可憐は確かに女性だが、女性からも性的に映るほど美しいのだ。
無論アイシャも他を隔絶するほどの器量を持っているが、その彼女をもっしても彼女には見とれていた。
「癒しよ。」
アイシャが魔法を行使すると、手元が緑色の光を放つ。そうしてその光が彼女の刺し傷を照らすと、徐々に傷がふさがっていく。
アイシャは一通り治療を終えると、額にかいた汗をぬぐった。
「ふぅっ、もう大丈夫です。彼女の体に傷が残るようなことはありません。治癒魔法は私の得意分野の一つですから。」
「そ、それは良かった。服はもう元に戻した?」
「ええ、ですがこの服は血がしみ込んでますから。奥で着替えさせてきます。」
そういうとアイシャは霧島可憐に肩を貸す形で背負い、そのまま受付の奥へと消えていった。
万里雄は彼女が無事であったことに安堵する。そしてすぐにレントの元へと駆け寄った。
「レント、彼女は無事だって。本当によかったよ。」
「そうか…それはよかった。彼女の曲が聞けなくなるのだけは避けたかった。」
「ハハハ。君もすっかりファンだね。」
「あぁ…そのうち俺もバッターになるかもな。」
しばらく横になり続けるレントは、万里雄の心配そうな顔を見て笑う。
二人がギルドの受付の前で休憩していると、奥からアイシャが戻ってきた。
「これでもう大丈夫です。サルバギルド長に伝えてきますから、しばらくここで待っていてください。」
アイシャはそういうとギルド長室へと向かった。
もろもろの事情聴取などもある、二人が眠りにつくのはもう少し後になりそうだった。
するとアイシャが出ていった受付奥の扉から霧島可憐が出てきた。
寝巻のような上下スウェットで。おそらくアイシャに着替えさせられたのだろう。
「ダメだ…いい匂いもするし…血も足りない…もう我慢できないよ。」
何事かと横になったままのレントは霧島可憐を眺める。すでに疲労困憊だったレントは、未来を見続けるほどの体力がなかった。
「可憐ちゃん…大丈夫?」
万里雄が心配そうに可憐の方を見る。ただ彼女の顔色はライブ中よりも悪く、調子も良くなさそうだ。
「このままじゃ…あんまり良くないかも…。最近…飲んでなかったし…。だから…ごめんね。」
よくわからないことを霧島可憐が告げると、そのまま横になったレントの横にかがんだ。
そして彼女はそのままレントの首元にかじりついた。




