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絶滅俯瞰  作者: 遒�。�
第二章 絢爛王都ディアデム
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第四十話 再会?

 馬車が止まったのはフォリンにも見覚えのある、城門の中の開けた空間だった。ディアデムが健在な今、そこは練兵場として使われているらしい。昨日助けられた人々が、次々と馬車から降りてきていた。これから、彼らを元いた場所へ送り出す為の準備が始まるのだろう。


「君はここにいて。後で団長について行ってね」


 フォリンが馬車から降りたことを確認したリヒャルトは、そのまま彼の職務を全うしに向かった。リヒャルトはフォリンが未来からやって来たという事実こそ知らないが、何やら訳があることは伝えられているらしい。

 人々を誘導しているボルスの姿を、フォリンは静かに目で追った。忙しなく動いていたボルスだったが、そんな彼に杖を片手に近づく華奢な人影が一つ。後ろ姿故に顔は見えなかったが、その人物はどうやらフォリンと同じくらいの背丈らしい。そんな華奢な人物を視界に認めたボルスは、ぱっと明るい笑顔を浮かべて手を振った。


「マルク、久しぶりだな!」


 ボルスが口にしたのは、聞き覚えのある名前だった。その名を聞いたて、見知った顔が思い浮かぶ。


「ボルスさん、お久しぶりです。閃銀騎士の皆さん、お帰りなさい」


 辺りにいた"閃銀騎士"の顔を見る為、マルクが周囲を見渡した。すっかり見慣れて来た人間とは異なる形の耳が、側頭部についている。間違いなく、杜人だった。

 顔立ちも、フォリンがよく知るマルクにとても似ている。両の瞳は健在だが、面影がある。美しいその顔立ちは少女のようだが、衣服からして人間の都では男――少年として振舞っているようだ。


「今回は大変だったそうですね」

「そうでもないさ。ちゃんと全員帰ってこれた」


 談笑している様子からして、仲が良さそうだ。ボルスと少年は既知の仲らしい。少年はボルスの仲間達の様子を見て回っていたが、ある男の前で足を止めた。真面目そうな印象の、ゲオルグという男だ。少年は眉根を寄せながら、ゲオルグの顔を見る。


「もう。怪我をされているなら、隠さず仰って下さい」

「俺は治癒をかけてもらう程のものでもないんだが……」

「小さな傷でも痛みはあるでしょう? 遠慮なさらないで下さい」


 少年は後ろ手に回されていたゲオルグの腕を取ると、その小さくほっそりとした手をかざした。指輪が煌き、柔らかな光が迸る。包帯を外すと、傷はすっかり無くなっていた。

 所作は違うが、やはりどうにも見覚えがある。凝視していたせいか、その視線を受けていた少年がフォリンの方を向く。少年は困った様な笑みを見せた後、ボルスに訊ねた。


「そちらの女の子は? 騎士ではないようですが」

「奴隷商に捕らえられていた所を保護したんだ。――さ、こっちに」


 ボルスに招かれ、フォリンも前に出る。ついつい気になって、困らせてしまうことはわかっていながらも少年の姿を凝視してしまう。少し気まずく思いながら、フォリンは自分の名を名乗った。


「フォリンと言います。はじめ……まして」

「はじめまして。僕はマルク・ヴィッテルスバッハ。お察しかもしれませんが、杜人の救命師です」


 まさかとは思ったが、全く同じ名前だった。似ているだけではなく、この少年は恐らく過去のマルク本人なのだろう。年代的に見ても、杜人にとっては一昔前に過ぎない。人間と違って、彼らは長命なのだ。


「フォリンさん。どこか痛みはありませんか? 怪我の類であれば、僕の治癒が効きますが」

「ううん、平気です。ありがとうございます」


 フォリンが首を横に振ると、マルクは安心した様に微笑んだ。まるで少女の様に美しく可憐な笑顔は、多くの人間の男達を虜にしてやまないことをフォリンは知らない。


「怪我をしている方は、他にいらっしゃいませんか?」

「後続の馬車に、軽傷者が乗っている。診てもらえるかい」

「わかりました。では、行って来ますね」


 言いながら、マルクはボルス達の前を去って行った。小さな背中を見送りながら、ボルスがフォリンへと囁く。


「マルクはまだ若い杜人だが、とんでもなく優秀だ。もし治癒を学びたいのなら、よく見ておくといい」

「……若い?」

「あぁ、あの位の年頃は見分けがつきにくいか。マルクは今年、十八になる。君とそんなに変わらないんじゃ無いか?」

「じゅう、はち……」


 以前マルクから聞いた話では、彼の歳は七百と幾許かであった。自分と変わらない年頃のマルクの存在は、フォリンが時を遡ったという事実に真実味を持たせてくる。

 それと同時に、フォリンはマルクが批判を受けながらも人間達に"肩入れ"している理由を悟った。マルクはかつての人間達の姿を、その繁栄を知っている。そして、衰退をもまた、目の当たりにしていたのだ。知っているからこそ、彼は。人間である自分達に手を差し伸べようとしてくれたのだろう。

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