第三十九話 共感
初めて見る、活気溢れる王都。どこに目を向けても人がいるディアデムを、フォリンは生まれて初めて目の当たりにした。人々の営みがあるが故に、目の前に広がる景色は目まぐるしく変わっていく。幌から顔を出して外を見渡す少女の目は、初めて法術を目にした時の様に輝いていた。ずっと外を眺めていても飽きが来そうにはなかったが、「ちょっとの間、中に入っていてくれるかな?」というボルスの一言にフォリンは大人しく従い、馬車の中で腰を落ち着ける。
「初めて王都を見ると、感動するよね」
声の主は、向かいに座っていた青年――リヒャルトだった。まだあどけなさの残る顔立ちをした彼は、つい先程閃銀騎士の中で最も若いと紹介されていた。彼は少し前のめりになりながら、フォリンへと話し掛ける。
「俺、田舎から出てきたんだ。だから、王都に来た時は今の君みたいにわくわくしてた」
「田舎というと……」
「ヘニンベルク。東部の田舎町だよ。人よりも家畜の方が多い、そんなトコロ」
フォリンにとって、人間の街はとにかく馴染みがなかった。東部と聞いても、マルクやミリアといった"東の杜の民"のことばかりが頭に浮かぶ。自分が暮らしていたディアデムのような場所なのだろうか、とフォリンは田舎町を想像した。
「でもね。この話をしたら、団長が言うんだ。『俺はもっともーっとド田舎の生まれだ』って」
「ボルスさんが?」
「うん。ファロスっていう村の出身だそうだよ。たかーい山の上にあるんだって」
そう語るリヒャルトは、どこか嬉しそうだった。自分と似た境遇にある人物がいることに、親近感を感じているらしい。その対象として自分も含まれていることを、フォリンは少し嬉しく感じていた。
その時、一定の速度で進んでいた馬車が止まった。リヒャルトが前方を向き、「着いたみたいだね」と呟く。
「降りようか。ついてきて」
自分の荷物を肩に担いだリヒャルトが、立ち上がりながらフォリンへ声をかけた。身軽な彼女はそのまま、彼の後に続く。薄暗かった幌から出たフォリンは外の明るさに少し目が眩んだが、その原因は明るさだけでは無かったらしい。
目の前に聳える、荘厳な城。城壁を上回る圧倒的な豪華さと存在感。生きた王都を前にした彼女の心はずっと、揺さぶられ続けている。




