第四十一話 オーパーツ
「マルク。一仕事終えた後で悪いんだが、ちょっと頼まれてくれないか」
マルクが怪我人の治療を終えた頃を見計らって、ボルスが彼に声をかける。少年は「何でしょう?」と返しながら、ボルスとフォリンの方へと歩み寄ってくる。ボルスはフォリンへ目配せすると、少女の右手で煌く獣避けを示した。
「この娘の獣避けを見て欲しいんだ」
獣避けの腕環。それを見た瞬間、マルクは両の瞳を輝かせ、歓声を上げる。
「わ……凄い! こんなに精度の高い物、見たことありません。素晴らしい……!」
「そんなに凄いのか?」
「えぇ! 僕も装具の制作ができるようになりたいので勉強しているのですけれど……ミテラの装具師の作品でも、ここまでの品を見たことがありません。一体何方の作品なのでしょう……」
マルクが絶賛するのは、至極当然だった。何せフォリンの獣避けは、七百余年もの未来の品なのだから。所謂オーパーツともいえるそれは、本来ここにあってはいけない代物だ。未知の技術に目を輝かせるマルクの姿は、つい先程のフォリンのようだった。ボルスは二人の姿を頭の中で重ねながら、訊ねる。
「どのくらい負荷がかかっているかわかるか?」
「殆ど無傷です。物理的な攻撃は勿論、妖精騎士の八番機程度の出力の法撃は無効化できるでしょう」
「よかった。なら、暫く彼女の安全は保障されるな」
上等な獣避けは、持ち主をあらゆる危険から守る。奴隷商の一件で効力を発揮していたことからも、それは明らかだ。ボルスはフォリンの腕に触れながら、真っ直ぐに彼女に告げる。
「肌身離さず付けておくんだぞ。これを作ったヒトも、君の無事を願っているはずだからね」
その言葉に、フォリンは最後に見たマルクの顔を思い出す。彼は今、どうしているだろうか。そう考えると、少女の小さな胸の奥はきしりと痛んだ。




