心清堂にて2
表情に出したら村井にばれてまうな……村井の表情を見て、伊野部は、自分の行動を反省し、小さくため息をついた。
「まぁ今日は無理して答えなくてもよろしいですよ、初めてこの店に来られたのでまだここに慣れておられないんだと思うので、今回の所は、これ以上聞くのはやめておきます」
すぐ伊川の方に目線を戻して目を細めながら笑みを浮かべて言うと
「話しているばかりもあれなので、お飲み物の方を……ひとまずどうされますか?」
村井が笑みを浮かべたまま伊野部と伊川二人の顔を見合わせながら問い掛けてきたのに伊野部は、とっさに伊川にいつも俺が飲んでるやつでええか?と聞けば、あっはい。ぎこちなく頷いてきた。
「なら、いつもので頼むわ」
「分かりました。それじゃあ誰かに持ってきて……」
「店長、持ってきました」
村井の言葉を遮るように後藤が店の奥から出てきた。お盆の上にビール瓶とグラスを乗せて……
「おー準備が良いねぇ」
「……どうも」
笑みを浮かべて言った村井の言葉を綺麗にスルーしながら、微かに笑いながら伊野部に挨拶してきて、おーと挨拶を返してやると
「じゃあ俺はこれで失礼します。あまり店長さんの邪魔する訳にはいかないんで」
嫌みったらしく村井の方に目だけ動かしてわざと大きめの声で告げて目線を俺に戻し、軽く頭を下げて店の奥へと消えていった。
「相変わらずつれないなぁ……」
奥に消え去った後藤の後ろ姿を見つめながら、苦笑いを浮かべて呟いた村井は、
「どうしましょうか?しばらくお二人にした方がよろしいですか?」
「えっ?」
「んー仕事あるんやったら仕事終わらせてきてええで?用事済んだらまた呼ぶし」
村井の言葉に少し戸惑う伊川を横目に伊野部は、村井に笑みを浮かべてそう告げると村井も笑い返して分かりました。とだけ言うと店の奥へと姿を消え去った。
「…………それで何か話でもあるんですか?」
二人っきりになった瞬間に言いづらそうに伊川が口を開いた。
「あー……ちょっと、な」
苦笑いを浮かべて頷いてみれば、聞きづらそうな表情を浮かべてあの……話って何ですか?と聞いてきた。
「あのさ……お前さ、この前会社で誰かに電話してたやろ?」
「あーあの時ですか……」
伊野部の言葉にあからさまに嫌そうな表情を浮かべる伊川は小さく呟いてから少し黙り込んで考える仕草を見せると
「先輩には関係ないんで」
「関係ないんや……あんな周りの目を気にせず誰かに対して電話口に思いっきり怒鳴ってたのにか?」
微かに目を細めて伊川の言葉に続けて言ってみれば、目を見開いてすぐ顔つきが変わり、伊野部の顔をまっすぐ見つめてきた。




