悲しみの中に隠された
「出えへん……」
何回も電話をして繋がりはするが、コール音だけが耳に響き渡る……
コール音だけが聞こえ、電話の向こうの相手、藤崎が電話に出る気配は全くなかった。
「何してんねん……」
なんで出てくれんのや
出ない事に対して胸騒ぎを覚えた。
まさかあいつほんまに……
そんな不安を抱いて携帯を片手に飛び出すように家を出た。
まさかの展開が頭に過ぎりながら……
そして鍵が開けっ放しになっていた扉を開けて中に入ると風呂場の方からシャワーの音が聞こえてくるのと一緒に微かに嫌な鉄の匂いが……
そのままの足で風呂場のドアを開けると
「……藤崎!!」
目の前が赤く染まっていて、排水口には湯船から溢れて赤く染まった水が静かに流れ続けていた。
………………‥‥‥‥‥・・・・
「……行ってみたら手首を切って自殺させていたって事ですね」
いつの間にかいつもの店の風景に戻っていて、伊野部が日記を片手に持ち、扉に繋がる通路に無言で佇んでいた。
「だから、あなたも同じ苦しみを知るために自らの手首を……」
「……俺のせいやねん」
村井が言い終える前に伊野部が静かに口を開いた。
「あの時少しでもあいつの事止めていればこんな事にならんかったかもしれん」
「………………………………」
「メールで【ごめん、もう無理やわ……今までありがとう】なんて書かれたのが送られてきた時後悔してん……だからすぐあいつ電話をした
だけどもうこの時には手遅れやった」
自分を悔やむように俯いて日記を片手に拳を力強く握り締めた。
「伊野部さん」
「なんや?」
「その時に送られてきたメールまだ残ってます?残っているんでしたらそのメール見せて頂けませんか?」
「たしかまだ残っていたはずやけど……」
村井の声で我に返ったように返事をすると日記を片手に懐から携帯を取り出すとメールを確認し始めた。そしてしばらくするとあっと小さく言った。
「あったんですね」
「保存してたみたいで、な……」
伊野部は携帯を見たまま答えると一番近くにいた後藤に無言でその携帯を差し出した。
「………………………………」
後藤は、一瞬驚いた仕草を見せたがすぐ平然に戻って差し出された携帯を受け取った。
そして受け取った携帯を後藤は何も言わずに村井の近くまで歩いていき、村井に手渡した。
それを受け取った村井は、後藤に微かに微笑み返してからとメールを見る
店内には沈黙が流れる……
しばらくしてから村井が不意にあーそうゆう事か……と何か分かったような様子で笑みを浮かべて何度か相槌を打った。
周りは訳が分からずに村井を見ていると
「……このメール最後までちゃんと見ました?」
携帯の画面を見つめたまま伊野部に問い掛けた。
「どうゆう事や?」
「そのままの意味です。もう一度聞きます。この送られてきたメール最後までちゃんと見ました?」
伊野部が聞き返してきたのに満更でもない様子で答えるとずっと眺めていた携帯の画面から目を離して、伊野部の顔をしっかり見据えてもう一度聞いた。
「だから【ごめん、もう無理やわ……今までありがとう】やろ……」
「このメールには続きがありますって言ったら驚きます?」
「えっ?……どういう意味」
「だからそのままの意味です」
信じられないと思うなら今見せて頂いたメールをずっと下まで下げてみて下さいと伝えると伊野部に携帯を差し出した。




