第56話 祭影士
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
俺は突然鳴った大きな音に驚き、飛び起きる。
周囲には無数の足音が聞こえる。
「なんだ!?とうとう敵が来たのか!?」
俺はすぐさま周囲を見渡すが誰もいない。
「幻聴……?」
しかし、床一面に小さな紙が無数に散らかっていた。
「なんだこれ?」
俺はこの状況に困惑していると、今度は目の前にひらひらと藁くずが落ちてきた。
俺はそれを掴み、
「なんでこんなものが?」
どこから落ちてきたのか確かめるように上を見上げる。
天井には先ほどの音の数と同じ、五つ、握り拳ほどの穴が空いていた。
遅れて、ドーン! ヒュルルルル……。
同じ音が五回も鳴り響く。
「花火……足音……散らばった無数の紙……サフィア!!」
俺は昨日のサフィアのスキル、[祭花火]、[幻音]、[紙吹雪]を思い出し、この状況を作り出した犯人の名を叫ぶ。
サフィアは急に名前を叫ばれて驚きのあまり、ビクッと飛び跳ね、イタズラが見つかった子どものように笑っていた。
「こんなに朝早くから何やってるの!近所迷惑でしょ!こんなに騒いでたら朧響も勘違いして……まずい!サフィア!目を瞑ってうずくまって!」
俺は早口でサフィアに指示を出す。
「えっ?なんで?」
サフィアは呑気に聞き返してくる。
「いいから早くして!」
俺の剣幕に押されて言われた通りの体勢をとる。
その瞬間、
「何が起きた!?無事か!?」
朧響が扉をものすごい勢いで開く。
それに続いて、
「すごい爆発だったけど大丈夫!?敵が来たなら私の出番のようね!」
なぜか彩羅まで駆けつけてくる。
「えーっと……。」
(心配して駆けつけてくれたのありがたいけど、なんて説明すればいいのやら……。)
今回の首謀者に目をやると、朧響たちの声が聞こえたのだろう。忌畏の影響を受けてガタガタと震えている。
「はぁ……この元暗殺者め。職業が変わったからってはしゃぎすぎだろ。」
俺は溜息をつく。
寝起きで、まだ全てを把握できていないが、
「サフィアが新しい職業に目覚めて、多分だけど、いや……状況から見ると確実に、新しいスキルを我慢できずに発動させました。説明終わり。」
俺は推測で状況を伝える。
「う……うむ。まぁ、何事もなくて良かった。」
朧響、とても寛大な鬼である。
「新しいスキルは試したくなるよな!」
彩羅は、うんうんと笑顔で頷く。
「それでは我らはお暇する。あまり紛らわしい真似はしないようにな。」
「またね、お二人さん!」
そう言うと、踵を返して去っていった。
俺は苦笑いをしつつ手を振り見送った。
振り返りつつ、
「サフィア、新しいスキルを試したい気持ちは分かるよ。分かるけど家の中でやったらダメでしょ。」
「ごべんなさい。」
忌畏の影響を受けたサフィアが涙声で謝ってくる。
「まぁ忌畏もあるし、おいそれと外には出られないから仕方ないか。」
俺がそう言った瞬間。
「そうなのよ!だから家の中で発動したってわけなの!せっかく新しい職業とスキルを手にしたんだから試したいじゃない?」
いつの間にか泣き止み、自分の意見を主張してくる。
(この祭影士、気を許すと調子に乗って……でも、いつまでも泣かれるよりは良いか。)
「分かったから、今度からは気をつけてよ。」
俺はふと目線を床にやると、無数の紙切れは消えていた。
(魔力で作ったから時間が経つと消えるのか。)
掃除の必要がなくて良かった。そう思ったが、屋根はどうしよう、と上を見上げると、すでに穴が塞がっていた。
「……朧響、恐るべし。」
さすができる鬼である。
「爪の垢を煎じてサフィアに飲ませてやりたいよ。」
サフィアを見つめると、キョトンとしていた。
第56話 終




