第54話 鬼剣士
俺は再び訓練場へと戻ってくる。
彩羅は木箱に近づき、木剣を手に取る。
「何しているの?早く剣を取りなさい。」
早く剣を取れと笑顔で話しかけられる。
「何これ……デジャブ?」
俺は渋々木剣を手に取る。
木剣を構えて、彩羅と向かい合う。
先ほどと同じ、互いの間合いは五歩は離れている。
「それじゃ、始めるわ!固有スキル[彩滅剣]」
(おいおいマジかよ!いきなりやばそうな固有スキルぶっ放そうとしてやがる!っていうか普通、人に向ける前に試すだろ!)
「くそ!固有スキル[彩滅剣]」
俺も慌てて同じ技を発動させる。
互いの木剣に、赤、青、緑、紫、白の五色の光を纏う。
(待て待て待て!これ至近距離で使う技じゃないだろ!)
光は構えた木剣の五倍くらいは伸びている。
(……離れた距離から放つ技だろ絶対!)
彩羅を見ると、俺と同様に慌てている。
「彩羅!上だ!上に放つぞ!」
「分かったわ!」
俺たちは頭上へと剣を構える。
その瞬間、五色の光が収束し、眩い光へと凝縮される。頭上へ一閃、三日月型の光波。爆音と共に虚空を切り、遥か空の雲を切る。
「「………。」」
二人してしばらく呆然とする。
「あっぶねぇ!気軽に使っていいスキルじゃないだろ!」
俺は額から冷や汗を流す。
「た……確かに……っていうかソウ!なんで同じスキルを使えるのよ!」
(さすがに気になるよな。)
「実は、職業を目覚めさせた者のスキルを、いくつか獲得できるんだ。」
俺は正直に話す。
「何よそれ!ずるいじゃない!」
彩羅は不満そうだ。
「俺は皆から力を貸してもらってるって思ってる。だから、ありがとう彩羅。」
彩羅だけじゃない、改めて皆に感謝を込める。
「そんなこと言われたら、ずるいなんて言えないじゃない……ありがたく使いなさい!きっとあなたに救われた者たちもそう思ってるわ。」
彩羅は急に感謝され気恥ずかしいのか、少し顔を赤くしてそっぽを向く。しかしすぐに、
「それじゃ、続きを始めるわよ!」
「えっ、さっき危なかったの覚えてないの!まずは、あの木人に向かってスキルを……。」
俺が木人に指をさしつつ、スキルの試し打ちを提案している最中に、
「閃滅乱舞!」
(この戦闘民族が!)
俺も反射的に同じスキルを発動する。
「閃滅乱舞!」
身体が勝手に動く。上段斬り、下段斬り、中段斬り、縦、横、斜めと次々と斬りつける。その全てが、ゴッ、ゴッ、と音を立てて、彩羅の木剣と打ち合う。
「話を聞け!まずは木人に……。」
「鬼神速!」
バン、と地面を蹴る激しい音が響く。彩羅は低い姿勢のまま、俺との間合いを一瞬で詰める。
(これ、俺がさっきやられたやつか!だったら次は真横に薙ぎ払いがくるはず!)
「嵐鬼斬!」
その低い姿勢のまま、遠心力を伴った木剣が、真横へと薙ぎ払われる。
しかし、先ほど技を受けていたので、俺は事前に木剣で防御姿勢を整えている。防御した木剣からゴッ、という音が鳴る。しかし、攻撃は一撃で終わらなかった。そのまま回転してさらに一撃、ゴッ、という音とともに木剣は手から弾かれ、さらに回転した木剣の重い一撃が脇腹へ直撃した。
「ぐはっ!」
肺の中の空気を絞り出される。
先ほどよりも重い一撃、スキルの効果だろうか。俺は痛みに耐えながら、スキル[樹命]を発動させ痛みを和らげる。
「もう満足しただろ?終わりにして帰ろう。」
「なんで?まだまだこれからでしょ?」
何を言っているかわからないという顔で、こちらを見る。
「この戦闘狂め!終わりって言ったら終わり!俺はもう疲れた。はい、解散!」
俺は弾かれた木剣を拾い、木箱へ戻す。
「分かったわよ。私はもう少し、スキルを試すわ!またね!」
(初めから木人で試してくれよ!)
話が長くなりそうなので、喉から出かかった言葉を飲み込み、
「うん、ほどほどにね。」
別れの挨拶をして、訓練場を後にする。
「本当に疲れた……。」
『お疲れ様です。』
イデアさんから労いの言葉をもらいつつ、サフィアが待っている家へ帰る。
第54話 終




