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妄想好きの転生者。〜他人の職業を目覚めさせ、世界の理を覆す〜  作者: イソ3


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第53話 彩羅

彩羅の後を追うと、里の端、開けた場所で歩みを止める。


鬼族の訓練場なのだろうか、傷だらけの木人。木製の的が二つ並んでいる。


木人の近くにある大きな木箱。その中には、すぐに訓練できるように木剣や弓が雑多に立て掛けられている。


彩羅はその木箱に近づき、木剣を手に取る。


「何しているの?早く剣を取りなさい。」


さっきまで怒っていた彩羅だったのだが、早く剣を取れと笑顔で話しかけられる。


「やっぱりこうなるのか……。」


俺は小声で呟く。訓練場に連れてこられた時点で、薄々は予感していた。


(って言うか、その笑顔めちゃくちゃ怖いんだけど!目が笑ってないから!)


俺は言われるがまま、恐る恐る木剣を手に取る。


(こんなことなら、もっとレオンに剣を習っておけば良かった。)


そんなことを考えつつ、木剣を構え、彩羅と向かい合う。相手まで歩幅にして五歩は離れている。


「それじゃ、始めるわ!」


彩羅がそう言うやいなや、バン、と地面を蹴る激しい音が響く。彩羅は低い姿勢のまま、俺との間合いを一瞬で詰める。


「!?」


反応が遅れる。彩羅の攻撃を慌てて木剣で受け止めようとするがすでに遅い。


俺の防御を嘲笑うかのように、その低い姿勢のまま、遠心力を伴った木剣が、真横へと薙ぎ払われる。ゴッ、という音とともに、防御した木剣は手から弾かれ、重い一撃が脇腹へ直撃した。


「ぐはっ!」


肺の中の空気を絞り出される。


俺は痛みに耐えながら、声を振り絞る。


「俺の負けだ。さっきはひどいことを言ってごめん。……それにしても彩羅、めちゃくちゃ強いな!一瞬で間合いが詰められて驚いたよ。」


俺は素直に謝り、彩羅の強さを褒めつつ、スキル[樹命]で身体を癒す。


褒められたのが嬉しかったのか、両手を腰にあて、得意気に胸を張る。


「私は職業なんて無くても強いのよ!……私の方こそ、話も聞かずに悪かったわ。」


俺たちは木剣を木箱に戻し、訓練場を後にする。


二人で里の中を歩きつつ、


「長老から聞いたよ。職業が発現しないんだって?」


俺は話を戻す。


「またその話?さっきも体験したでしょ。私は職業が無くても強いのよ。少なくとも、馬鹿にしに来たんじゃないのは分かったけど、あまりしつこいとまた訓練場に連れて行くわよ。」


どうやら、相当気にしているようだ。


「訓練場は勘弁して下さい。……でも、もしもだよ。もしも、職業が目覚めるとしたら、やっぱり剣士がいい?めちゃくちゃ強かったし。」


訓練場行きを覚悟して、話をふる。


「あなた人の話を聞いてた?」


俺を睨みつけつつ、


「まぁ……ずっと剣術の訓練してたから、目覚めるとしたらそれがいいかな。」


彩羅は肩をすくめ、小さく笑った。


「でも、もういいの。疲れたわ。」


いくら願っても職業に目覚めることはないと、自分に言い聞かせるように呟く。


そんな彩羅を見つめて、


「……彩羅、俺には他者の職業を目覚めさせる力があるんだ。こんなに都合の良い話なんてあるわけ無いと思うかもしれない。まだ、諦めきれていないのなら俺を信じて欲しい。」


俺は笑顔で手を差し出す。


「……嘘だったら訓練場に連れて行くから。」


彩羅は、俺が差し出した手を握り返す。


その瞬間、俺は[転想]を発動する。


頭の中に、彩羅の訓練の日々が流れ込んでくる。


手にいくつもマメを作り、必死に剣を振っている。


俺はそんな女の子を応援する。


『条件を確認……転想中……完了しました。』


そのまま[共想]を発動する。


雨の日も…雪の日も…


『共想中……。』


必死に剣を振っている。


涙を流しながら……来る日も来る日も……。


俺は、そんな女の子に手を差し出す。


その子は、俺の手を握り返してくる。


『共想中……完了しました。』


俺は彩羅のステータスを[識想]で確認する。



彩羅

Lv30

種族 神鬼族(忌畏)

職業 鬼剣士

適性 鬼剣士

固有スキル

彩滅剣

スキル

閃滅乱舞Lv4

嵐鬼斬Lv4

鬼神速Lv4



(鬼の剣士だからね。職業には突っ込まないよ。ひとまず成功して良かった。)


俺は、彩羅に職業が目覚めて安堵する。しかし、


(……スキル名、物騒なの多くない!?)


『新たに、固有スキル、共有スキルを獲得しました。』


『共想対象12。想力+170%になりました。』


自分のステータスを確認すると、


固有スキル[彩滅剣]

スキル[閃滅乱舞Lv4][嵐鬼斬Lv4]


(固有スキルまで獲得してる。しかも今回はスキルLvまで高い。共想Lv4の効果なのか?)


『はい。』


(答えてくれてありがとうイデアさん。)


イデアさんが答えてくれることにより、確証を得られた気がする。


俺は彩羅の手を離し、


「ステータスを確認してみて。」


彩羅は訝しみつつステータスを確認する。


「うそ……本当に職業が目覚めてる!スキルや固有スキルまで!」


驚きで目を丸くする。


俺は両手を腰にあて、胸を張る。先ほどの彩羅の真似をしてみる。


「俺の言ったこと本当だっただろ?」


得意気に語ってみせる。


「すごい……本当にすごいわ!ありがとう!」


俺は褒められて鼻が高くなる。


「早速スキルを試しに訓練場へ行きましょう!」


彩羅は俺の手を掴む。


「……えっ!?結局、訓練場へ行くのかよ!」


彩羅は俺を引っ張るように、訓練場へと歩き出した。


第53話 終

※作品タイトルを「妄想好きの転生者。〜他人の職業を目覚めさせ、世界の理を覆す〜」に変更しました。今後ともよろしくお願いします。

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