第46話 追跡者
俺は温泉でリラックスしていると、
「ソウ、少し相談がある!」
朧響がいきなり姿を現す。
「うわ!?」
俺は驚きで身体が跳ね、水飛沫をあげた。
「里に着いた時も言ったけど、普通に出てきてよ!心臓に悪いから。」
(完全に油断していた。この神出鬼没の鬼め!)
「すまぬ。我も急いでいたものですっかり忘れていた。」
そんな朧響をマジマジと眺める。
(よくよく見ると容姿は整っているよなぁ、角が生えている以外は人間に似ているし。少し色白ではあるけれど……ん!?)
朧響の右肩に視線を向けると、肩に黒い軽装備をした女性が担がれている。青みがかった黒色の髪がゆらゆらと揺れている。
「朧響!何やってんの!?人間を誘拐してきちゃったの!?」
人間を里に入れたら大変なのでは、と考えていると、
「待て、誘拐なんぞしておらんわ!長老の家へ食事に行く直前に、儂のスキル『鬼陣』に反応があったのだ。里の外を見廻ってみたところ、この人間を見つけたというわけだ。」
(スキル『鬼陣』……陣を張って侵入者を感知する能力なのかな?)
スキル考察モードに入るところをやめて、
「それで誘拐してきたと?」
「くどい!」
(やばい、ちょっと調子に乗りすぎて怒らせちゃったか。)
すると朧響はニヤリと笑みを浮かべる。
「この者はソウ追って来ていたのだがなぁ。この場合は後をつけられたソウが悪いのではないか?」
(朧響のやつ、まるで鬼の首を取ったかのように勝ち誇っているな。)
『鬼の…』
(首は取ってないですよ!イデアさんごめん。今は朧響との戦いなんだ。)
『……ふん。』
(えっ……イデアさん怒ってるの?ごめんイデアさん。もう喋るの遮らないから許して。)
『転想Lv3になりました。』
(なんでこのタイミングで!?)
『嘘です。』
(……騙された。)
かなりご機嫌斜めのようだ。イデアさんにどんどん感情が芽生えている気がする。
『共想Lv4になりました。』
『新たな機能を解放します。』
(いやいや、そんな連続で騙され……共想Lv4は本当なのかよ!)
『………。』
(そっとしておこう……って朧響のこと忘れてた。)
朧響は反論しない俺を眺めている。
「わかったよ、俺が全部悪かった。皆、ごめん。」
朧響は皆?と不思議そうに首を傾げている。
「それにしても誰なんだ?朧響、その人を下ろして。」
朧響は抱えていた女性をそっと地面に寝かせる。
「うーん、見覚えはないなぁ。『識想』。」
???
Lv43
種族 人間
職業 暗殺者
適性 暗殺者
スキル
???
ーーー
「ん?暗殺者……村にいた見覚えの無い旅人か!」
綺麗で整った顔立ちをしている暗殺者だが、
「……めちゃくちゃ気持ちよさそうに、涎垂らして寝てる。」
しかし、油断はならない。レオンの目を掻い潜ってこの里まで俺を付けて来ている。暗殺者としての実力はあるのだろう。
「それで、相談ってもしかして……。」
俺は、爆睡している暗殺者を指差した。
「もしかしなくてもこれしか無いであろう。そのまま帰せば我らのことが報告されて、人族が里を襲ってくる。このタイミングでは事を荒立てたくはない。」
朧響は短剣を見せてきて、
「こやつの武器は取り上げている。我ら鬼族と出会えば、否応なく戦闘になるのでソウにしか頼めないのだ。」
(武器は取り上げていてもスキルがあるし、暗殺者だから隠し武器とかもあるんじゃないのか?)
やばくなったらスキル『号令』で朧響を呼ぼう。
「わかったよ。元はと言えば俺が付けられてたわけだし。その代わり呼んだらすぐに駆けつけて来てくれよ?」
朧響にも協力を頼むと、
「その時は普通に現れた方が良いのか?」
朧響はニヤリと笑う。
「緊急事態だったら『鬼渡り』で転移して来て下さい。」
(……この鬼め。)
第46話 終




