第44話 新たな謎
『識想Lv4になりました。』
『新たな機能を解放します。』
(情報に畳み掛けられてる!?…鬼族の情報阻害を突破したからレベル上がったのか?……ダメだ…今回、情報量が多すぎるって!)
「ソウ殿、もう日も暮れて来た。話は儂の家で食事をしてからでどうじゃろうか?」
俺は情報量の多さで頭は回らず、さらに歩きっぱなしで疲れていたので、この申し出はありがたい。
「ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます。」
他の鬼たちに挨拶をしながら、長老と朧響についていこうとすると、
「ん?」
朧響が声をあげ、立ち止まる。
「長老、気になることがあるので少し失礼する。」
長老が頷くと、朧響の姿は朧げになり消えた。
「ささっ、ソウ殿はこちらへ。」
朧響のことが気になったが、長老の後を追い里の奥の民家へついて行く。
茅葺き屋根の直下の土壁が、日に焼けてひび割れている。
入口の戸口を開けて中へ入る。
太い柱に梁、高い天井。居間の中央に囲炉裏があり、薪がパチパチと燃えて、香ばしい煙の匂いが漂っている。
「囲炉裏まであるのか。」
(里の雰囲気といい、日本人が転生してる流れだよな?)
「人間の家にも囲炉裏があるのかのう?」
俺の独り言が聞こえたのか、長老は話しかけてくる。
「いえ、俺の村では見たことないですね。里の造りとか、家の内装とかは昔からですか?」
俺は疑問に思うことをぶつけてみる。
「儂はこの造りの他は見たことないのう。里を移してもだいたい同じような造りになる。ご先祖様の知恵に感謝しておる。」
ゆっくりとした口調で長老は返す。
(人間とは関われない鬼族が、この和風な里を造っている。ご先祖様は日本人なのかな?転生したら鬼でした!って感じか。)
妄想が膨らむが、人間だった鬼が人間に忌み嫌われる……。
(どんな人……いや、鬼だったのだろう。ここまで和風な里を再現したのだ。俺の勝手な願いだが、きっと楽しい人生だったと思いたい……まぁ実際のところ分からない、俺の勝手な妄想だし。)
そんなことを考えていると、囲炉裏の前へ勧められて座る。囲炉裏で、竹の串で突き刺した魚を焼いてくれる。
「さぁ、どうぞ。」
長老は焼き魚を渡してくれる。
「いただきます!」
俺はお腹が空いていたので齧り付く。
「とてもおいしいです!」
長老はそんな俺を見て、嬉しそうに目を細めて頷く。
魚を食べ終えて、話を切り出す。
「朧響から鬼族と予言について聞きました。今の俺に何ができるか分かりませんが力になりたいと思っています。」
長老は俺の言葉を聞くと、
「やはりソウ殿は特別じゃ。人族と会話ができること自体が奇跡なのじゃ。儂の固有スキル『鬼角の先見』が告げた予言は、間違っておらんかったのじゃな。」
スキル名を聞き、反射的に識想を発動する。
(スキル名を聞いた途端に識想って……俺の悪い癖だよな。)
スキルをどうしても補完してしまいたくなる。そして、朧響の時にも疑問に思った神鬼族と忌畏という言葉……長老にもあるのだろうか。
詠角
Lv65
種族 神鬼族(忌畏)
職業 預言者
適性 預言者
固有スキル
鬼角の先見
スキル
???
ーーー
(……長老もレベル高!ってダメだ、どうしてもレベルを見てしまう。スキルといい、ゲーマーの悪い癖だな。とりあえずレベルとスキルは置いといて、やっぱり気になるのは[神鬼族]と[忌畏]って言葉だ。)
「確認したいことがあるのですが、長老たちの種族って鬼族ですか?」
長老たちが、自分たちの種族をきちんと認識しているか確かめる。
「朧響から聞いておらんのかのう?鬼族で合っておるぞ。」
長老は、白く伸びた顎髭を触りながら答える。
識想の情報と、長老たちとに認識のずれがある。
「何か書くものをお借りしても?」
長老は頷き、筆と紙を受け取る。
「この忌畏という言葉に心当たりは?」
紙に筆を走らせて書いた文字を長老に見せる。
「うーむ……初めて聞くのう。種族のことと、その言葉……何か儂たち鬼族の現状に関係があるのじゃろうか?」
(いきなりだと訳が分からないよな。よし、識想について説明しよう。)
俺は識想について説明する。
「ソウ殿にはステータスが見えるんじゃのう。」
長老は不思議そうに反応する。
「はい、そして種族は鬼族ではなく[神鬼族]。その横に先程の[忌畏]という文字が見えます。人や精霊、魔物の種族名の横には何もないので状況からみれば[忌畏]はなにかしらの状態異常?呪い?のようなものだと思います。」
本当の種族名すら自分たちが分からないようになっているのは意図的すぎて怪しい。
「本来は、鬼族ではなく[神鬼族]なのですが、この種族名に心当たりは?」
少し考え込んだあと、ハッとなにかを思い出したように話し出す。
「儂がまだ幼い頃、当時の長老からこんな話をされたことがあるのう。何かを守るために、神から遣わされた一族の一つだと。」
(これめちゃくちゃ重要な話じゃない!?)
「その何かとはなんですか?遣わされた一族の一つって……何種族いるとか覚えてますか?」
長老はまたも考え込む、そして、
「うーむ……儂も同じ質問をしたのじゃが、何も分からんかった。当時の長老も幼い頃に聞いた話らしいからのう。本当かどうかも分からぬ、ただの言い伝えだと思っていたんだがのう……ソウ殿から神鬼族という言葉が出た以上、言い伝えではないのかもしれんのう。」
俺は話を聞き、考え込んでいると、
「ソウ殿、湯浴みはいかがかのう。一度湯に浸かり、ゆっくり休みなされ。」
(そうだな、お湯に浸かりながら考えるのも良いかもしれない。)
長老の家から少し歩くと岩場に階段があり、そこを登っていく。
「ではゆっくりと。」
そう言うと着替えと体を拭く布を置いて、立ち去って行った。
「露天風呂じゃん!?」
俺の目の前には湯気が立っていた。湯の周りは大小の岩でお湯が溢れないよう綺麗に囲まれている。数人入れるかくらいの大きさだ。その湯の脇には小さな松の木が植えられていて風情がある。周りから見えないように竹垣まである。
俺はさっそく服を脱ぎ、湯で身体を流して浸かる。
「あぁ〜。いい湯だ。」
俺は完全にリラックスしていると、
「ソウ、少し相談がある!」
朧響がいきなり姿を現した。
第44話 終




