第40話 一段落
『魔石に眠っていたスキル[瞬蹴]を獲得しました。』
(魔石に眠っていたスキル……魔物のスキルを獲得したってことか!?)
『世界の理の一部を覆しました。』
(そして、理を覆すという言葉……朧響のこともある。)
そう思いながらも、今は頭が回らない。
(やっぱり鬼族の里に行くしかないかな。)
そんなことを考えていると、
「ソウ…大丈夫か?魔石が割れたかと思ったら光に包まれて……一体何が起こったんだ?」
レオンは驚き戸惑っている。
(そうだ!魔石から新しいスキルを獲得したんだ!これは試すしかない!)
「今話そうとしていたオークのスキルなんだけど、説明するより実際に見てもらった方が早いから使ってみるよ!」
俺はレオンにスキルを披露する。
「瞬蹴!」
勢いよく地面を蹴る。その瞬間。
(うっ……。)
思っていた以上の速さで身体が進み、
「ソウ!?」
レオンの素っ頓狂な声が聞こえたかと思うと、
ドサドサドサ!
そのままの勢いで茂みに突っ込んでいく。
(痛たたたた…[想力+150%]の補正忘れてた。)
木に激突しなくて良かったと思い、茂みから出る。
レオンに向かって、
「あはははは、失敗しちゃった。」
俺は笑いながら話しかける。
「怪我は無いようだから良かったけど、ものすごい勢いで茂みに突っ込んでいくからパパ変な声でちゃったぞ。」
レオンも、しょうがない奴だなと笑っている。
村が見えてくる頃には、日が暮れかけていた。
村に視線を向けると、ガレスさんとノアさんが村の外で見張りをしている。
レオンは二人に声を上げ、手を振る。
ガレスさんたちもこちらに気付き、手を振り返してくる。
「ソウ、疲れただろ?森でのことはパパが説明しておくから先に家に帰るんだ。きっとママが心配して……森に一人で行ったことはバレてるだろうから、怒っているかもな。」
レオンは脅かしてくる。
俺は返事をして急いで家に帰る。
「ただいま。」
恐る恐るドアを開けると、
「ソウちゃーん…黙ってどこに行っていたのかしら?」
そこには笑顔だが、すごい気迫を出して仁王立ちしたエレナの姿が。
俺は思わず後退りしてしまう。
(我が家にも鬼が……。)
『……人間です。』
(イデアさん、冗談だよ。)
頭の中で会話していると、
「ソウちゃん、どこに行っていたのかしら?」
しかし、目の前の光景は冗談ではないようだ。
「森で魔物と戦ってました。」
「それで?」
圧がすごい。
「……心配かけてごめんなさい。」
俺は素直に謝る。
「……パパの子だものね。あの人も何も言わずに魔物と戦いに行くんだもの。今度から心配する人数が増えるのね。」
諦めたように溜め息を吐く。
(許してもらえた…かな。)
「ソウちゃん、疲れたでしょ。ご飯食べてゆっくり休みなさい。」
「ママありがとう!」
俺はエレナの優しさに笑みを浮かべた。
昨日と今日は色々なことがあった。
魔物との戦い。
鬼族と世界の理。
そして、転想の新たな力。
考えなければならないことが山ほどある。
だけど、
(今日はもう疲れた。考えるのは明日にしよう。)
俺は食事を終えると、考えるのをやめ、ゆっくりと眠りについた。
第40話 終




