第39話 魔石
「朧響、鬼の里ってどこにあるの?」
着いて行くにしろ行かないにしろ、場所は把握しておきたい。
「ここからそう遠くはない。鬼族の希望がこの地にいると分かったからな。少し前に、この近くへ里を移したのだ。」
どうせ移り住むのなら、鬼族の希望の居る地が良いと移ってきたらしい。
「……でも、俺は村に帰らないと。」
(あの魔物の数なら村は平気だと思う。でも、実際に確認するまで安心できない。それに、きっとレオンたちがいなくなった俺を心配してる。)
「安心しろ。無理に連れ去るつもりはない。村に帰って考えてみてくれ。それでもし、我らに力を貸してくれるというのなら、森でこの精霊を呼ぶが良い。里の場所は森を抜けた先、精霊に場所を教えておく。それで良いか?」
朧響はリュネアに尋ねると、
〔任せるの。ソウを案内するの。〕
俺は頷き、リュネアと朧響に別れを告げる。
そして、村の方へ歩き出す。
(村を飛び出して一晩経っている。レオンたちになんと言い訳をしよう……何言っても叱られそうだな。)
そんなことを考えていると、
「ソウ!大丈夫か!やっと見つけたぞ!」
前方からレオンの声が聞こえ、こちらへ駆け寄ってくる。
「僕は大丈夫!それより村は無事?」
自分のことよりも、村がどうなったのか気になり尋ねる。
「ああ、村は無事だ。一人も犠牲は出ていない。って……服がボロボロじゃないか!?本当に無事なのか!?怪我はしてないか!?」
レオンはあたふたしながら俺を見回す。
(傷は回復したけど、服のことまでは見落としてた…。)
「本当に大丈夫だよ。服は破れちゃったけど怪我はしてないよ。」
もう傷も治っているので、俺は嘘を言っていない。
「怪我してないなら良かった。本当に心配したんだぞ!」
無傷なのを確認しホッとした表情のレオン。しかし、すぐに真剣な顔つきになる。
「ソウ……ここに来るまで、多くの魔石や素材が落ちていた。あれを一人でやったのか?」
レオンはこちらを見つめてくる。
(あの数の魔石や素材を見られたのか…。言い逃れは出来ないな。)
異変の原因はオークで、森で魔物の群れとオークを倒したことを話す。朧響のことは伏せておくことにした。
(朧響のことを話したら、レオンはきっと心配する。それに……人間が鬼族に対してなぜ敵対するのか、何も分かっていない。今は俺だけの判断で話すべきじゃないな。)
朧響との出会いを思い出し、
(……まぁ、出会い頭に吹き飛ばされたと言えば、親バカのレオンのことだ。絶対に面倒なことになる。)
「ソウ……特別な職業を持ってて、スキルも……まぁ、いくつあるかまでは知らないが、普通の人より持っていることは知っている。」
その言葉に、
(……さすが父親だ…スキルのことバレてたか。)
「あの魔石の数だ、強いのは分かった。だけど次からはもっと頼ってくれ。」
どうやらレオンは頼ってもらえなかったことに少し不貞腐れているようだ。
「分かったよ。次はパパの格好いい姿を見せてね。」
その言葉に、レオンは嬉しそうに笑い、
「任せとけ!パパの凄いところ見せちゃうからな!」
そんな会話をしながら森の中を歩く。
ふと、レオンは思い出したように、
「そういえばオークの魔石、拾っておいたぞ。せっかく倒した大物だ。ソウが持って帰るといい。他の魔石や素材は村の者に回収させよう。」
そう言いつつ、懐から出したオークの魔石を俺に手渡す。
「ここまで強いなら、冒険者になったり、学園に通ってもいいかもしれないな。」
レオンは呟く。
俺は魔石を受け取りながら、
(冒険者!?学園!?とうとう俺もデビューの時が近いようだな。その前に鬼族をなんとかしないとだけど。)
まだ見ぬ冒険へワクワクしていると、
「オークはどうだった?力は強いが動きが遅いから、やっぱりソウの火球で倒したのか?」
(やっぱり普通は動き遅いよな。あのスキルが厄介だった。)
「それがあのオーク、かなり厄介な[瞬蹴]っていうスキルを持ってて…」
その瞬間、手に持っていたオークの魔石にひびが入る。
『条件を確認。』
『[転想]の新たな可能性を発動します。』
「…えっ!?」「なんだ!?」
俺とレオンは魔石を見つめる。
すると、魔石は粉々に砕けたかと思うと、破片が光となり俺を包み込む。
『魔石から、スキル[瞬蹴]を獲得しました。』
第39話 終




