第33話 森の魔物
(…なんでイデアさんが返事をするの?)
『来ます。』
(えっ…イデアさん…共想レベルが上がって少し話せるようになった?)
『はい。』
相変わらず短い言葉しか話せないらしい。
(…って、来ますって何がーー)
「ごふぁ!?」
ものすごい勢いで光が鳩尾に飛び込んで来た。
(なにが起こった……?)
不意打ちをくらい俺は警戒する。
〔ソウーーー!!!〕
(聞き覚えのある声が…リュネアか。)
「いててて…その慌てよう…何か動きがあったの?」
〔よく分かったの!森の魔物が動き始めたの!このままだとすぐに村へ向かってくるの!〕
「まずいな…まだ準備を始めたばかりだぞ。このままじゃ時間が足りない。」
自分のスキルを確認して、
(村に魔物が到達する前に森で数を減らす。これだけスキルがあれば多少の無理は出来るはずだ。)
そして村の事を考える。
(村には統率者のハロルドさんがいる。レオンやガレスさんたち。エリクさんの気配察知もある。俺が森で魔物を減らしている間に、村の防衛も整うはずだ。皆、準備で忙しい…手の空いている俺一人で行くのが適任だな。)
「リュネア、魔物の居場所に案内して。今から魔物に奇襲を仕掛けて時間を稼ぐ。」
〔分かったの。ソウを案内するの。でも無理したらダメなの。〕
俺は頷き、皆に心配されないよう隠密スキルを発動し、村から抜け出す。
隠密を発動したまま、リュネアの後を追って森の奥へ進む。
ドス……ドス……。
一つではない。
いくつもの足音が、森の奥からこちらへ近づいてくる。
「…何だ?」
木々の隙間から、一匹のゴブリンが見えた。
「リュネア、危険だから離れていて。」
〔分かったの!ソウ、気をつけるの。〕
リュネアが遠くへ離れていくのを確認して、識想を発動する。
木々の隙間から、さらにゴブリン。
ブラックウルフ。
ホーンラビット。
人間ほどの大きさをした熊型の魔物。
ビッグベア
Lv30
種族 熊種
スキル
ーーー
「あれがガレスさんたちが話してたビッグベアか。」
種族の違う魔物たちが、互いに争うこともなく、同じ方向を歩いている。
その先にあるのはーー俺たちの村だ。
「話を聞いた通りだな。」
さらに森の奥から、別のゴブリンが出現する。
手には弓。
その隣には剣と盾を持ったゴブリン。
「はいはい、分かってますよ。ゴブリンには武器を持った個体もいるよね。」
ゲームやアニメなら定番だ。
「どうせゴブリンアーチャーとかゴブリンファイターとかそんな名前だろ?」
そんなのお見通しさ、というように識想で見てみると。
ゴブリン
Lv22
種族 ゴブリン種
スキル
ーーー
ただ武器を持っているだけだった。
(誰も聞いてなくて良かった。)
『違いました。』
(!?……イデアさん。ツッコミいらないから!恥ずかしいからそっとしといて!)
イデアさんにも油断できない…と考えていると。
ドス…ドス…。
さらに一匹、二匹……十匹……。
(って何匹出てくるんだ…もう冗談は言っていられないな。全部で三十匹くらいか?)
そして、最後に姿を現したのはーー
豚のような鼻。
その左右から突き出した二本の角。
手には、体に見合う大きな棍棒。
人間よりも一回り大きな体を持つ、中型の魔物。
「…もしかしてオークか!?」
ゲームなどで知ってはいたが、実物を見て俺は思わず息を呑んだ。
識想を発動する。
オーク
Lv35
種族 オーク種
スキル
???
ーーー
「めっちゃ強そうなんだけど…スキルも持ってるし…特にあいつには近づきたくないな。」
この数の魔物にオーク…ふと我に返り足が震えだす。
これはゲームじゃない、やられたら終わりだ…しかし、ここでやらないと村が危ない。
俺には多数のスキルに想力のバフがある。そう言い聞かせ、深呼吸する。
「…村には行かせない!」
第33話 終




