第23話 村の外
あれから数ヶ月が過ぎた。
「そう言えばイデアさん、ヒントくれた時とか普通に話してたよね?」
『………。』
重要そうなことは聞いてみても大きな収穫はない…。
しかし!今はそんなことはどうでも良い!
なぜなら俺は今、初めて村の外へ来ている。
長いチュートリアルを終えた気分だ。
村では職業を得て、ところ構わずスキルを放つ子供に手を焼かされているらしい。特に戦闘職系統。
忘れていたが俺たちはまだ五歳なのだ。
好奇心旺盛、手にしたものは何でも使う。
(この前ティアと村の中で普通に火球試してたけど危険だよね。)
俺は冷静に思う。
と、いうことで今日は訓練もかねて外へ出る。
村の周囲は開けている。目の前には小さな小川が流れる。しかし、岩や所々に小さな窪地や低木。子供なら簡単に隠れてしまえるような草まである。遠くに見える森。村から森まで目測で五百メートルくらいの距離だろうか。
村の中から何度も眺めていた景色だが、いざ外に出てみると俄然テンションが上がる。
「私の火球すごいのよ!木の杖を買ってもらって、村の外れでいっぱい練習してきたんだから!」
淡い銀髪をなびかせ誇らしげに語る。
(いっぱい練習って!たまに村の中が焦げ臭かった犯人はティアか。)
放火魔法使いのティア。
「俺だって家にあった斧でめちゃくちゃ練習してきたんだぞ!家がすごいことになったぜ!」
八重歯を見せながらニヤリと笑う。
(すごいことって…頭のタンコブもすごいことになってるぞ…親に怒られたんだな。)
タンコブの戦士カイル。
(そして村の中で挑発スキルを試し、家畜に追い回される…逃想士の俺。)
そんな笑えないあだ名を妄想しつつ…
(…二人のことは何も言えないな。)
『はい。』
頭の中で呼んでもいない声が響く。
とにかく、この三人でパーティーを組む。
レインは治癒士なので、村でエレナの訓練を受けている。
そして、俺たちの訓練の指導者は剣士のレオン。
毎年、子供たちの訓練をしているらしい。
一緒に住んでいるのに全然知らなかったが、レオンだと頼もしく思う。
「村を出たばかりだから、周りに気をつけて付いてくるんだぞ。」
「「「はーい!」」」
(…遠足みたいだな。)
レオンは歩きながら話す。
「魔物は馬鹿じゃない。見つからないようにそこらにある草陰を利用する。この周辺で注意すべきはスライムだな。小さくて草陰などに潜んでいる。」
(スライム!序盤の敵の代表!いつもありがとうございます!)
異世界でもその地位は揺るがないようだ。
そんなことを考えていると、
ガサガサ。
草陰からスライムが飛びだす。
見た目は球体に近い。目や口はなく半透明な水色だ。
「噂をすればスライムだな!まずはカイル、スキルを見せてくれ。」
俺はカイルに識想を使う。
カイル
Lv1
職業 戦士
適性 戦士
ーーー
スキル ???
???
「やってやるぜ!」
カイルは赤茶色の髪を手で整え、気合を入れる。
斧を握り締め、力を溜める。
「溜め斬り!」
しかし、スライムに避けられてしまう。
「くっそー!それなら…。」
琥珀色の目で目標を捉えて、
「回転斬り!」
斧の刃先を横にし、自分を軸に回転する。
縦より横の攻撃は範囲が広く、スライムに命中する。
スライムはゼリーの塊と小さな石を落として光となって消えた。
(…え!?消えるのか!?しかもドロップ方式!?ノアさんとガレスさんが魔物と戦った時の話ではそこまでは聞いてなかったな。)
そんなことを考えながらカイルを見る。
「よっしゃ!倒したぜ!」
嬉しそうに八重歯を見せる。
(識想)
カイル
Lv2
職業 戦士
適性 戦士
ーーー
スキル 溜め斬りLv1
回転斬りLv1
(スキルを使ってるところを見れば補完された!?ゲームみたいに都合の良い仕様だった!)
(そしてレベルは予想通り魔物を倒せば上がるんだな。)
俺は一つずつ情報を整理する。
第23話 終




