第19話 ガレスの後悔
俺はガレスさんが気になり、エマさんに挨拶をして後をつける。
しばらく歩くと村の中央にある二階建ての宿屋に入る。
俺も中に入ろうとすると、
「ソウ坊、ついて来るなら言ってくれたら良いのによ。」
ドアの横から声をかけられる。
(さすが冒険者、バレてたか。)
「ごめんなさい、ガレスさん。相棒さんのことが気になって…。」
俺は正直に話す。
「ソウ坊は優しいんだな。相棒も小さな子がお見舞いに来たら喜ぶか…ついてきな。」
そう言って俺を中に通す。
俺は宿屋の主人に会釈をして奥の部屋へついていく。
「見舞いに来たぞノア!今日は小さなお客さんがいるぜ!レオンさんの息子のソウ坊だ!」
「こんにちは。初めまして、父…レオンの息子のソウです。」
俺はガレスさんの後ろから横に並び挨拶をする。
「村で何度か見かけたことがあるよ。それにレオンさんからも話は良く聞いている。僕はノア。弓使いなんだが、この通り腕をやっちゃってね。」
ガレスさんとは対照的に、どこか知的そうな雰囲気を持つノアさん。右腕には包帯を巻かれている。
「エレナさんに診てもらって傷は大分良くなったんだけど暫く安静にするようにと言われてね。僕はすぐにでも魔物を狩りに出かけたいのだけれどね。」
(レオンと知り合いならエレナとも知り合いか。そう言えばエレナがスキルを使ったところを見たことがないなぁ。俺が転んで傷ついても使わなかったし…もしかして重傷な人にだけ使用するのかな?)
「魔物は俺とレオンさんに任せて暫く休んどけって。あっ…見舞いに来たのに差し入れ忘れっちまった!ちょっと席を外すぜ。ソウ坊、ノアの話し相手よろしくな。」
そう言ってガレスは部屋を後にする。
すれ違い様のガレスはどこか悲しそうな目をしていた。
(…まずい、ついガレスさんが心配で追いかけてきてしまったが、どうしよう…怪我をしている人を前にガレスさんが心配で…とも言えないし…。)
どう切り出したものかと考えていると、
「ソウ君はガレスを心配してついてきたんだろう?」
(エスパーか!?察し良すぎでしょノアさん!)
「…そうですね、ガレスさんがどこか無理をしてそうだったので心配で。」
俺は正直に話す。
「ガレスのやつ、僕の怪我のことをまだ自分のせいだと思っているのか。」
ノアさんはため息をつく。
「何があったか聞いてもいいですか?」
「…ソウ君は見た目とは違ってなかなか大人びているね…不思議な感覚だ。うん、ソウ君に話をしてみようかな。」
ノアさんは魔物との戦闘の様子を話し始める。
「あれはガレスと二人、村外れでビッグベアとの戦闘中、弱らせたまでは良かったんだけど、運悪くブラックウルフに遭遇してしまってね…。」
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「おいおいおい!なんでブラックウルフがビッグベアと共闘してやがる!」
「僕がそんなこと知る訳ないだろ!そんなことより目の前に集中しろ!幸い、ビッグベアはもう虫の息、目の前のブラックウルフは二頭だ。機動力はあるがブラックウルフはそこまで強くはない。先に二頭を片付けよう。」
一頭のブラックウルフがガレス目掛けて突進してくる。
いつものように両手で握った剣で両断しようとするが、
「こいつ…いつもの奴らより早い!」
ガレスは咄嗟に剣を盾にして身を守る。
もう一頭にノアは矢を放つが躱されてしまい、そのままノアに突進してくる。
「しまっ…!」
ガレスは剣に噛み付いているブラックウルフを蹴り飛ばし、
「ノア!」
ガレスは咄嗟にノアの前へ飛び出し、攻撃を受け止める。
「今だノア!」
すかさず矢を放ちガレスに攻撃していたブラックウルフを撃破する。
撃破すると同時に、
「威嚇!」
ガレスが鋭い目つきでスキルを発動する。
残ったブラックウルフはそれに怯み逃げて行った。
ノアはスキル一点射撃を発動する。
射撃までに時間を有するが、虫の息のビッグベアにはノアを止める術はない。
「少しひやっとしたが今日も楽勝だったな!ノア!」
ノアの矢はビッグベアの眉間を貫き、巨体は崩れ落ちた。
勝利を確信した瞬間、ノアの後方からブラックウルフが現れ右手に噛み付く。
茂みには、もう一頭ブラックウルフが身を潜めていたようだ。
「くっ……。」
痛みで顔が歪むノア。
「ノア!…この野郎!」
ガレスは噛み付いたブラックウルフを切り捨てる。
「すまんノア…油断した。俺がもっと周囲を警戒していれば。」
ガレスは唇を噛む。
「気にするな。戦闘を続行したのは僕だ。ガレスのせいではないさ。」
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「ということがあってね。どうもガレスは自分が油断したのを気に病んでいるようなんだ。あの時、引くという選択をしなかった僕自身に非があるというのに。」
ノアさんもまた無理をした笑顔を作る。
「そんなことが…話してくれてありがとうございます。僕なりにガレスさんを励ましてみます!」
「帰ったぞ!ほら、見舞いの果物だ。しっかり休んでくれ。」
そこへガレスさんが帰ってきた。
(この人たちにも無理なく笑っていてほしい。)
俺は強くそう思った。
第19話 終




