第17話 一歩踏み出す
「持って来たよー。」
俺は糸をエマさんへ渡す。
「ありがとう。とても助かるわ。」
エマさんは作業に戻る。
しばらく作業を眺めていると。
「その服良いね!」
声の方を向くと剣を背負った冒険者がいた。
「お世辞でもそう言ってもらえて嬉しいわ。」
エマさんはパッと笑顔になる。
「お世辞じゃないさ!やべ、あいつ待たせてるんだった、もし良かったら今度何か服を仕立ててくれよ!またな!」
そう早口にまくしたて、こちらの返事を待たずに行ってしまった。
「私に職業さえあれば…。」
そう呟いて、作りかけの服をそっと胸に抱いた。
「あの冒険者さんももっと喜ぶのに…。」
(レオンたちに秘密にしてもらっているのは悪いけど、目の前で夢を諦めようとしている人を、己可愛さで見捨てられない。)
(うまくいくか分からないけど。)
エマさんは大切そうに作りかけの服を抱きしめた。
(この人は本気なんだ。)
(この夢を叶えたい。)
(共想。)
胸の奥が熱くなる。
エマさんの「裁縫師になりたい」という想いが伝わってくる。
『共想中…』
『完了。』
エマ
Lv5
職業 裁縫師
適性 裁縫師
ーーー
スキル 裁縫Lv4
糸加工Lv3
(良かった!うまくいった!)
(……?昔から裁縫やってたからかな?スキルレベルが最初から高い。)
「エマさん…秘密にしておいて欲しいんだけど…。ステータスを見て。」
「急にどうしたの?ソウくん。」
エマさんは困惑している。
「いいから見てみて。」
五歳の俺のお願いを、微笑ましそうに聞いてステータスを見る。
「…え?……職業………裁縫師?うそ…どうして…?まさか……ソウくんが?こんなに嬉しいこと…夢みたい。」
エマさんは驚きと嬉しさで混乱しているようだ。
「他の皆には内緒だよ。」
「もちろんよ!本当にありがとう!ずっと夢だったの。」
エマさんはまだ信じられないという様子だ。
『共想対象2。』
『共有スキルを獲得。』
共想対象 2
想力+20%
共有スキル 火球Lv1
魔力操作Lv1
裁縫Lv1
糸加工Lv1
第17話 終




