第14話 報告
「早くパパとママに伝えないと!」
ティアは明るい声で俺に言う。
「ソウも一緒に来て!」
興奮しているのか俺の腕を力一杯引っ張る。
「そんなに引っ張らなくても一緒に行くよ。」
そんなティアを見て俺は改めて嬉しく思う。
(さっき頭に響いた声のことを考えたいが、ティアの件が終わってからだな。)
うんうん。と一人頷く。
ティアは家に着くなり、家の中へ飛び込む。
「パパ!ママ!魔法が使えた!」
「おかえりティアー。」
見た目は寡黙そうだが、娘を見る笑顔だけで甘い父親だと分かる。レオンの戦友のアルド。職業は弓使い。
「あらあら、何か良いことでもあったの?最近元気がなかったから心配していたのよ。」
塞ぎ込んでいたティアをとても心配していたのがすぐに見て取れる。薬師のリリア。最近寝込む日が多いとは聞いていたが、慢性的な病気で長時間働けないらしい。
ティアの両親は後ろにいる俺に気付き、
「いらっしゃい。」
さっきまで娘に見せていた笑顔が嘘のように、アルドは照れ隠しなのか真顔に戻っている。
「いらっしゃいソウ君。いつもティアのことありがとねぇ。」
「こんにちは!こちらこそありがとうございます。」
呑気に挨拶をしていると、
「そんなことより!私!魔法が使えたの!」
アルドとリリアは顔を見合わせた。
「…え?」
「ティア、魔法は魔法使いにならないと使えないのよ…。」
木の枝を持つティアを見ながら、とても言いにくそうに、しかし優しく諭す。
「いいから!これを見て!」
ティアは木の枝を前に向ける。
すると、小さな火の玉がポッと生まれる。
2人は開いた口が塞がらないという風にティアを見ている。
「職業も…魔法使いになったのよ!だから…ママを助ける方法を探せるわ!」
ティアは胸を張って伝える。
「もう大丈夫。絶対ママを助けるから。」
アルドとリリアは涙を流す。
それは病気が治る希望に涙したのではない。
娘が夢を叶えたことへの、親としての涙だった。
落ち着きを取り戻したアルドは慌ててレオンとエレナを呼びにいく。
レオンとエレナも話を聞いてすぐに駆けつけた。
「どうしたんだ?」
「ティアが…魔法を…。」
ティアはもう一度火球を見せる。
「………!」
レオンとエレナは言葉を失う。
「ティア、ステータスを見せてくれないかい?」
「うん!」
ティア
Lv1
職業 魔法使い
「そんな…。」
「神が授けた職業が…変わったというのか。」
二人はティアに聞こえないほど小さな声で呟いた。
レオンは俺を見つめる。
俺もレオンから目を逸らさない。
(さすがにバレるか…。)
「……場所を変えよう。」
アルドに促され、全員が家の中へ入る。
「ソウ…何が起きたのか分かるかい?」
(やっぱりその質問だよな。)
「僕も全部は分からない。でも…ティアが本当に魔法使いになりたいって願って。僕もその願いを叶えたいって強く思った。」
俺は親の前では僕っ子なのだ。
そんな俺の言葉をレオンたちは黙って聞く。
「ソウ。この力は人を救える。俺はそれがとても誇らしい。しかし、この力を欲しがる者も必ずいる。だからこの話はここにいる者だけの秘密にしよう。これはソウ自身を守るためでもある。」
誰一人として反対する者はいなかった。
全員が静かに頷いた。
家を後にする際、
アルドは拳を強く握る。
何か言おうとして、
何度も口を開きかけ、
そして……
「娘を救ってくれてありがとう。」
五歳の俺に深く頭を下げた。
「本当にありがとう。」
そんなアルドに、
「…僕だけの力じゃありません。」
ティアが僕を信じてくれたからだ。
第14話 終
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
今回でティア編は一区切りです。
ソウとティアの成長、そしてソウの「共想」がこれからどんな可能性を生み出していくのか。
引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。
これからもよろしくお願いします!




