第四十三話 傷付きし戦姫達
今日は太平洋戦争勃発から71年目の日、アジア解放の為に立ち上がった英霊達を忘れないようにしていきましょう。
互いに空襲を受け、傷付いた戦姫達は互いに傷を癒しあった。
武蔵 医務室
武蔵「いたたたたた!姉上、そんなに激しくしないで下さい!」
大和「もう!心配かけて、本当にしょうがないんだから!」
信濃「ね、姉さん。怒ってる?」
大和「怒ってません!」
越後「怒ってる〜、バレバレだよ。」
下手すれば主砲が吹っ飛んでいたかもしれないだけに、大和は少し怒りながら武蔵の手当てをしていた。
隼「大和さん、武蔵さんは無事だったんだから良かったじゃないですか。」
大和「本当に、本当に心配かけて・・・」
武蔵「姉上・・・」
初の戦闘で沈んでしまうより、大切な姉妹を失う方が大和には耐えられない事だろう。
きっとそれは、米太平洋艦隊の艦魂も同じだろう。
エンタープライズ
作戦会議室
ここは現在、損害を受けた艦魂を臨時に診る医務室として使っていた。
ヨークタウン
「・・・・・」
右腕を包帯で巻き、首から吊っているヨークタウンは難しい顔をしていた。
ホーネット
「大丈夫ですか?」
セントルイス
「あ、有り難うございます。」
頭に包帯を巻き、大破した軽巡のセントルイスを診ているのはホーネット。
タイコンデロガ
「・・・・・」
右目から頭まで包帯で包まれたタイコンデロガは、行ったり来たりしているエンタープライズを見ていた。
イントレピッド
「・・・エンター。」
軍服をはだけさせて、身体中に包帯を巻いたイントレピッドは、愛用のカットラス磨きを止めずにエンタープライズを呼んだ。
エンタープライズ
「・・・何?」
イントレピッド
「イライラするのは分かるけど、怪我しているのだから落ち着いたら?」
エンタープライズ
「・・・私は落ち着いているわ。」
イントレピッド
「だったら一先ず座りなさい。傷口が開くわよ。」
エンタープライズ
「座ってなんか、いられないわ。」
イントレピッド
「矛盾してるわね。結局落ち着いてないのよ。」
その一言にエンタープライズが吠えた。
エンタープライズ
「そうよ!落ち着いていられる訳ないでしょう!極東のイエローモンキーにボコボコにされて、相手には被害は皆無、これで落ち着いていたら異常よ!」
タイコンデロガ
「エンター、落ち着いて・・・」
エンタープライズ
「寄りにもよってあんな、劣等民族のイエローモンキーに、モンゴロイドごときに私達合衆国海軍が負けるわけない!不意討ちしか能の無い低知能の有色人種に・・・!」
タイコンデロガ
「エンター!」
さすがに聞いていられなくなったのか、タイコンデロガが止めようとする。
その時、
パシン、と乾いた音が会議室に響く。
ヨークタウン
「・・・・・」
ヨークタウンがエンタープライズの左頬を叩いたのだ。
エンタープライズ
「姉、さん。」
ヨークタウン
「エンター、いい加減にしなさい!」
震えながらヨークタウンは叫んだ。
ヨークタウン
「戦争に綺麗事は言ってられないわ、貴女だって分かるでしょ!それに私達は不意討ちではないわ。正々堂々勝負して負けたのよ!」
エンタープライズ
「けど、姉さん。」
ヨークタウン
「けどじゃないわ!貴女のそれは言い訳よ!白色人種が優れていて、それ以外は下等人種?冗談じゃないわ!それなら私達は何?アジア人に負けた私達はそれ以外?違うでしょ!ここでしっかりしないと、合衆国海軍は永遠にIJN(大日本帝國海軍)には勝てないわ。」
そこで切ってヨークタウンは続ける。
ヨークタウン
「エンター、貴女が人一倍勝利に固執しているのは分かるわ。けどね、負ける事も大切なの。沈まなければまた戦える。そうでしょ?」
エンタープライズ
「・・・・・」
ヨークタウン
「それに、ペンシルヴァニアさん達がIJNの戦艦を撃滅してくれるはず。そうすれば、ハワイはまた私達の故郷になるわ。それまで、我慢して。」
エンタープライズ
「・・・はい、姉さん。」
臥薪嘗胆、負けるからこそ勝つ事ができる。それは、世界中の軍隊に言える事なのである。
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