第四十話 接敵・日本艦隊2
午前8時37分、米戦爆連合隊は壊滅的被害を受けながらも、日本艦隊に攻撃を仕掛けるべく、零戦の追撃を必死に振り切った。しかし・・・・
大和CIC
見張り員「敵機接近!」
小沢「全艦対空戦闘用意!射程に入りしだい、全艦一斉射!」
馨「主砲射撃警報発令、艦外の乗組員全員は艦内に退避!」
電探員「主砲電探との連動を終了、誤差修正の必要無し!」
通信員「各艦より『対空戦闘用意完了』との返電を確認。全艦対空戦闘用意完了!」
砲術長「主砲弾、一式対空弾を使用します!」
馨「総員の艦内への退避を確認しました!」
電探員「敵機全艦の射程に入りました。」
小沢「射ち方、始め!!」
再び大和の主砲が咆哮する。今回は2回目なので、全員手すり等に掴まり体を固定したので、転倒する事は無かった。
隼「・・・2回目とはいえ、凄い迫力ですね。」
小沢「史上最大の艦載砲である46㎝砲だ。一発あたり約1.7t、3発で30,000tクラスの艦艇を戦闘不能にさせる。最強の主砲だよ。」
隼「しかし、主要目的は・・・」
小沢「対地支援砲撃、戦艦の主砲ほど適した兵装は無い。」
46㎝砲、インチに直すと約18.11インチになる。アメリカ海軍のコロラド級戦艦の40.64㎝(16インチ)砲や長門型の41㎝(16.14インチ)砲より強力な砲なのは間違いない。
しかし列強各国と異なり、すでに艦隊決戦から航空攻撃主体へとシフトチェンジした亜細亜連合各国の戦艦は、先に述べた対地支援砲撃のために戦艦を運用していた。
理由は幾つかある。
現時点で1t以上の爆載能力を持つ艦載機が存在しないこと、コスト的に考えると超重爆撃機を開発し実戦配備するより安価なこと等が挙げられる。
見張り員「大半の敵機を撃墜、しかし数機が接近!」
小沢「主砲射撃中止、高角砲及び機銃にて応戦!」
ここで、主砲射撃中止の命令が飛ぶ。接近してきた敵機に対して主砲射撃を行うと、発砲煙によって照準が付けにくくなるからである。
高角砲弾と機銃弾が交差し、敵機の近くで炸裂する。円形状に広がる零式対空弾は高角砲の主弾になっており、しっかり照準を付ければそれなりの効果が出る。
今回、真・八八艦隊を攻撃した米戦爆連合隊の機数は、
ヨークタウン
艦戦 12機
艦攻 18機
艦爆 15機
計 45機
エンタープライズ
艦戦 18機
艦攻 22機
艦爆 18機
計 58機
ホーネット
艦戦 16機
艦攻 12機
艦爆 12機
計 40機
イントレピッド
艦戦 15機
艦攻 18機
艦爆 12機
計 45機
タイコンデロガ
艦戦 12機
艦攻 15機
艦爆 15機
計 42機
合計230機の戦爆連合隊となっている。
各艦の稼働率は、
ヨークタウン 50%
エンタープライズ
64%
ホーネット 44%
イントレピッド 50%
タイコンデロガ 46%
全体 51%
となっており、エンタープライズの稼働率のみが64%と高くなっているのは、ハルゼー司令が大打撃を与える為に出撃させたからであった。
しかし、最初の時点で50機の零戦の迎撃を受け、その後思わぬ方向からの迎撃機によって更に数を減らしていた。
その思わぬ方向からの迎撃機と言うのが、隼が真・八八艦隊の北東50海里(92.6㎞)にいる赤城以下空母艦隊からの迎撃機だった。
戦前から、アメリカ海軍の艦載機の航続距離は短いとされていたので、攻撃が及ばず尚且つ此方を余裕で往復できる距離、それが50海里だった。
まさにその通りであり、アメリカ太平洋艦隊から約310海里(574.12㎞)の海域の空母郡には気付く事さえ出来なかった。
だがその時、
見張り員「武蔵に急降下!」
小沢「何?!」
1機の急降下爆撃機が武蔵目がけて向かっていた。
武蔵 戦闘艦橋
見張り員「敵機直上、急降下!」
匠「取り舵一杯!」
そう指令を出したのは、武蔵艦長の秋野 匠少将である。
操舵員「取り舵一杯、ヨーソロー!」
ゆっくりと取り舵が切られる。しかし、
見張り員「ダメです。敵機投弾!」
匠「総員衝撃に備えろ!」
その瞬間、艦橋が轟然と震えた。
大和 戦闘艦橋
見張り員「武蔵被弾!2番砲塔に命中!」
大和「武蔵!」
艦橋が騒めき、大和が狼狽える。
小沢「狼狽えるな!」
小沢の一言で騒がしかった艦橋が静まる。
小沢「武蔵は沈んだ訳では無い!今は戦闘中だぞ。損害無しの戦闘など無い!落ち着かんか!」
参謀「しかし、米軍の爆弾は1,000lb(約453㎏)で貫通力に優れています。いくら大和型の主砲と言えど・・・」
小沢「煙は上がっているが、火を噴いた訳では無いだろう。まずは武蔵に確認を・・・」
その時、左舷後方から轟音が轟いた。
見張り員「む、武蔵発砲!」
おお、と今度は別の意味で艦橋が騒めく。
見張り員「武蔵より発光信号『我、攻撃ヲ受ケルモ主砲健全ナリ』。武蔵無事です!」
小沢「よし!全艦に通達、武蔵は無事だ!」
大和「武蔵・・・全く、心配させて・・・」
大和も安心したのか、涙を浮かべて呟いた。
その後、更に援軍として到着した零戦隊によって殆どの敵機は撃墜され、残った敵機はほうほうの体で逃げていった。
日米初の艦載機同士の空戦は、日本側損失12機(被弾、着艦後破棄)に対し、米軍側損失65機に登り殆ど稼働不能に陥った。
最初の防空戦を制した真・八八艦隊、次は太平洋艦隊空襲である。
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