第三十二話 面会
馨艦長復帰と、あの少女が出ます。
出撃まで2時間の猶予が与えられた真・八八艦隊の作戦参加艦艇は、最終確認が行われていた。
隼は、意識が回復した馨艦長を迎えに行くため海軍基地の医務室(倒れた後、移動した)へ向かった。
海軍基地 医務室前
医務室の前に来た隼は、2・3回扉を叩いた。
隼「野田艦長、入っても宜しいですか?」
すると、中から直ぐに返事が返って来た。
馨「どうぞ。」
隼「失礼します。」
そう言って隼は、医務室に入った。
海軍基地 医務室
午後の日差しが入っている医務室は、ベッドが幾つか並んでいた。奥のベッドはカーテンが閉まっていた。
そこから少し離れた所に馨は立っていた。きっちりと軍服を着こなしており、すっかり回復したようだ。
馨「この前は、ごめんなさいね。みっともない所見せてしまって。」
隼「いえ、お元気そうで何よりです。此方が作戦指令書になります。」
馨「ありがとう。それじゃあ、私は戻るわ。」
馨は扉に向かう。が、途中で振り向いて隼に言った。
馨「あぁそれと、ベッドで寝ている金髪少女にも、お見舞いよろしくね?」
隼「・・・はい、分かりました。」
今度こそ、馨は出ていった。
隼「・・・・・・」
金髪少女、キャシーの事に間違いないと思った隼。奥のベッドのカーテンを開けると、案の定キャシーが寝ていた。
ぐっすり眠っているようだ。一見すると。
隼「・・・嘘寝は本当に上手だね、君は。」
キャシー
「・・・良く分かったわね?」
悪びれる訳も無く、むくりと起き上がるキャシー。起きたのは数分前らしい。
隼「まぁ、勘だけどね。」
キャシー
「ふーん。で、何の用?」
あまり興味無さそうにキャシーは訊いた。
隼「お見舞いだよ。・・・もうじき出撃するから。」
キャシー
「・・・・・」
先程の話を聞いていた様で、何も言わなかった。
隼「これが、最後かもしれないから・・・」
日米艦隊決戦、互いの巨砲が唸りを上げて鎌の様に砲弾を振り下ろす。艦橋に当たれば、全員戦死の可能性もある。
つまり、死を覚悟してキャシーに会いに来たのだ。
キャシー
「・・・・・」
それでも彼女は何も言わなかった。もうすぐ1時間前、大和に帰らなければならない時間だ。
隼「それじゃ、キャシー。元気で。」
キャシー
「・・・なさい。」
隼が行こうとした時キャシーが呟いた。
キャシー
「貴方が居ないと、退屈なの。必ず、帰ってきなさい。」
隼「・・・了解。」
笑いながら隼はキャシーの頭を撫でた。
キャシー
「〜〜〜〜!!」
顔が真っ赤になったキャシー、知ってか知らないでか分からないが、隼は撫で続けた。
隼「それじゃあ、また今度!」
そして、隼は医務室を出ていった。
キャシー
「・・・バカ。」
ぼそりと呟いて、枕に埋めたキャシーの顔は、林檎顔負けの赤さだった。
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