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第5話:三人目の王子

【場面】

カラクト山の森の中~剣聖ロデリック邸


【登場人物】

ケイン・アグネシア

アッシュ

レナ

エレオノーラ・ヴァルディア

レオンハルト・ベルグート

セシル

剣聖ロデリック


【その他】

「」は声に出したセリフ、()は心の声です。

ト書き1つ=1コマを想定して書いていますが、必要に応じて分割してください。コマ割りや間の取り方は製作者様の判断にお任せします。



ト書き1

ケイン、アッシュ、エレオノーラの三人が、山道を進む。ケインとアッシュは大荷物を背負っている。


ト書き2

エレオノーラ、溜息とともに悪態をつく。

エレオノーラ

「行けども行けども森の中……ですわね」


ト書き3

アッシュ、振り返り、後ろをついてくるエレオノーラに声をかける。

アッシュ

「だから言っただろ。ついてくるなって」

エレオノーラ

「し、仕方ないでしょう! 師匠、私の分の食事は用意してくださらないって――」


ト書き4

アッシュ、げらげらと笑う。

アッシュ

「当たり前だ。弟子の飯の世話をする師匠なんか、聞いたことねえぜ」


ト書き5

エレオノーラ、悔しそうな顔をする。

エレオノーラ

「食事の準備など、貴族のやることでは――」

アッシュ

「郷に入っては郷に従え、だ。それに――」


ト書き6

アッシュ、隣を歩くケインの肩に手を置く。

アッシュ

「ケイン王子だって、簡単な飯なら作れるぜ」


ト書き7

ケイン、はっとしてアッシュを見る。

ケイン

「えっ?」

アッシュ

「えって……お前、聞いてなかったのかよ」


ト書き8

ケイン、前を向く。

ケイン

「あ、ああ。悪い」

アッシュ

「おいおい。大丈夫か?」


ト書き9

ケイン、呟くように答える。

ケイン

「大丈夫だ……」


ト書き10

アッシュ、険しい顔でケインを見る。


ト書き11

回想。二日前の朝(第4話の続き)。ロデリック邸の食堂で、レナが話す。

レナ

「もう一人。ベルグートにはヴォルフがいる」


ト書き12

アッシュが反応する。

アッシュ

「ヴォルフ?」

レナ

「格闘士だ」


ト書き13

モートンが反応する。

モートン

「確か、二年前の御前試合で――」

レナ

「帝国の精鋭を相手に、十人抜きをやってのけた。奴には絶対に勝てん」


ト書き14

エレオノーラが反応する。

エレオノーラ

「で、では、アグネシア王国が勝利するには――」

レナ

「残り三人、誰も落とせない」


ト書き15

ケイン、考え込むような姿勢をとる。レナが話し続ける。

レナ

「そこでだ」


ト書き16

レナ、腕を組んで話す。槍術士クロフォードのシルエットを描写。

レナ

「アグネシアとベルグートの国境……カラクト山の山頂近くに、槍術の使い手が一人で住んでいる」


ト書き17

レナ、ケインに目を向ける。

レナ

「その男を加えろ。槍術士としては最高の戦力になるはずだ」


ト書き18

ケイン、神妙な面持ちでレナを見る。

アッシュ

「カラクト山っていやあ、ここからだと歩いて二日くらいか」


ト書き19

回想終了。アッシュ、少し前を歩くケインを見る。

アッシュ

(で、とりあえず出てきたけどよ)


ト書き20

アッシュ視点で、ケインの背中を描写。

アッシュ

(だいぶ参ってるみたいだな……)


ト書き21

同じ頃、カラクト山、ベルグート王国側ルート。山頂に向かって、レオンハルトとセシルが並んで歩く。


ト書き22

セシル、少し前を歩くレオンハルトに声をかける。

セシル

「しかし、何も殿下自ら出向かれなくとも――」


ト書き23

レオンハルト、振り返って答える。

レオンハルト

「槍術士クロフォード……奴とは、腹を割って話したいことがある」


ト書き24

セシル、小さくうろたえる。

セシル

「それは……」

レオンハルト

「それより、お前は大丈夫なのか?」


ト書き25

レオンハルト、からかうような目をセシルに向ける。

レオンハルト

「おてんばセシルでも、この山道は辛いだろう」


ト書き26

セシル、幼少期の渾名で呼ばれ、顔を紅潮させる。


ト書き27

セシル、下を向いてまごつく。レオンハルトはくすりと笑う。

セシル

「ご、ご冗談を……」


ト書き28

レオンハルト、前を向き、柔らかい笑顔を浮かべる。

レオンハルト

(お前だけだった)


ト書き29

レオンハルトの回想。七歳のセシルが、五歳のレオンハルトの手を引いて野原を走っている。

レオンハルト

(お前だけが、俺と一緒にいてくれた)


ト書き30

レオンハルトの少し後ろを歩くセシル、前を指差す。

レオンハルト

(代表戦が終わったら――)

セシル

「殿下。あれを……」


ト書き31

セシルの指差す先。遠くの森の中から、細い煙が上がっている。

セシル

「あの煙……猟師でしょうか?」


ト書き32

レオンハルト、顔を引き締め、遠くの煙を見る。

レオンハルト

「さあ……な」


ト書き33

ケイン一行、森の中の開けた場所でキャンプ中。三人で焚き火を囲み、マグカップを傾ける。


ト書き34

両手でマグカップを持ったエレオノーラ、満面の笑みで話す。

エレオノーラ

「温かいココア……疲れが吹き飛びますわね」

アッシュ

「牛乳で作る方がうまいけどな」


ト書き35

エレオノーラ、アッシュに目を向ける。

エレオノーラ

「本当? じゃあ、帰ったら作ってよ」

アッシュ

「ああ。それくらいなら……って」


ト書き36

アッシュ、広場につながる小道に目を向ける。

エレオノーラ

「ど……どうしたの?」

アッシュ

「何かが近付いてる」


ト書き37

ケインとアッシュ、立ち上がって小道を見る。

アッシュ

「なあ。あの道――」

ケイン

「ああ。ベルグートに続いてる」


ト書き38

ケインとアッシュ、剣を抜く。エレオノーラも立ち上がる。

エレオノーラ

「な……何が来てますの?」

アッシュ

「静かにしろ」


ト書き39

ケイン、アッシュ、エレオノーラの顔のアップ。ケインとアッシュは緊張。エレオノーラは怖がっている。


ト書き40

小道の茂みの陰から、レオンハルトとセシルが姿を現す。


ト書き41

レオンハルト、三人に鋭い目を向ける。

レオンハルト

「子供が三人か。こんなところで何をしている?」


ト書き42

アッシュ、剣を両手で構え、言い返す。

アッシュ

「知りてえんなら、そっちが先に名乗りな」


ト書き43

セシルが大声をあげる。ケインが反応。

セシル

「貴様! 殿下に対してその口の利き方――」

ケイン

「殿下?」


ト書き44

ケイン視点。レオンハルト、苦笑しながらセシルを諫める。

レオンハルト

「お前……いきなりバラさないでくれるか?」

セシル

「あ……」

ケイン

(ベルグートの王子……)


ト書き45

ケイン視点。セシルがレオンハルトに頭を下げる。

セシル

「も、申し訳ありません!」

レオンハルト

「よい。気にするな」

ケイン

(けど、こんな奴は見たことがない……)


ト書き46

ケイン、アッシュに小声で話しかける。

ケイン

「アッシュ。こいつが――」


ト書き47

ケインとアッシュ視点。レオンハルト、剣を抜く。

ケイン

「レナさんが言ってた『三人目の王子』だ」


ト書き48

アッシュ、視線をレオンハルトに向けたまま、にいっと口角を上げる。

 ※強がっているが、内心は恐れている

アッシュ

「……何だよ。ツキまくりじゃねえか」


ト書き49

アッシュ視点で、剣を片手で持ち、脱力した様子のレオンハルトを描写。

アッシュ

「こんな人気のねえところで、敵の大将に会えるなんてよ」

アッシュ

(こいつをここで殺せば――)


ト書き50

アッシュのバストアップ。額から大量の汗が噴き出している。

アッシュ

「埋めちまえば、絶対に見つからねえよな!」

アッシュ

(ケインが戦わなくて済む)


ト書き51

レオンハルト、くすりと笑う。

レオンハルト

「勇ましいことだ」


ト書き52

レオンハルト、地面に足で円を描く。

レオンハルト

「しかし……結果が分かっている戦いほど、面白くないものはない」


ト書き53

レオンハルト、描いた円(直径一メートルほど)の中に立つ。

レオンハルト

「俺をこの円の外に出してみろ」


ト書き54

レオンハルト、剣先をアッシュに向け、不敵に笑う。

レオンハルト

「それができたら、この首をお前にくれてやろう」


ト書き55

アッシュ、歯を食いしばる。

アッシュ

「な……舐めやがって!」


ト書き56

アッシュ、高速で踏み込み、横薙ぎに剣を振る。

アッシュ

「後悔すんなよ!」


ト書き57

レオンハルト、微笑を浮かべる。


ト書き58

アッシュの両手による剣撃が、レオンハルトの片手による剣に弾かれる。


ト書き59

アッシュ、バランスを崩し、大きく後退する。

アッシュ

「くっ!」


ト書き60

アッシュのバストアップ。額から汗が流れ落ちる。

アッシュ

(何だ……こいつ)


ト書き61

アッシュ視点でレオンハルトを描写。オーラを纏っている。

 ※強者を前に、圧倒されているような演出

アッシュ

(片手で払っただけなのに……)


ト書き62

レオンハルト、笑みを浮かべる。

レオンハルト

「どうした? 戦意喪失か?」


ト書き63

アッシュ、自分を奮い立たせようと激昂する。

アッシュ

「ざけんな! 俺が、このくらいのことで――」


ト書き64

アッシュ、上段から剣を振り下ろす。レオンハルトは片手で受け止める。

アッシュ

「ビビるかよ!」


ト書き65

延々と攻撃を繰り返すアッシュ。表情が憔悴していく。

アッシュ

(駄目だ……)


ト書き66

アッシュ視点で、レオンハルトを描写。汗一滴かいておらず、余裕の笑みを浮かべている。

アッシュ

(まるで通用しない……)


ト書き67

アッシュ、必死に攻撃を続けるも、顔に絶望の色が差す。

アッシュ

(こいつが本気を出した瞬間、俺は……)


ト書き68

ケイン、剣を持って駆け寄ろうとするが、セシルに阻まれる。

ケイン

「アッシュ!」

セシル

「待て!」


ト書き69

セシル、剣先をケインに向ける。

セシル

「殿下の元には行かせんぞ」


ト書き70

ケイン、額に汗を浮かべ、たじろぐ。

ケイン

(女性……)


ト書き71

ケイン、アッシュに向かって叫ぶ。

ケイン

「アッシュ! もういい! 帰ろう――」

アッシュ

「うるせえ!」


ト書き72

アッシュ、右からの横薙ぎを弾かれる。

アッシュ

「仲間なら応援――」


ト書き73

アッシュ、踏みとどまり、渾身の上段斬りを放つ。

アッシュ

「しろよ!」


ト書き74

レオンハルトの目のアップ。


ト書き75

レオンハルト、アッシュの上段をはじき返す。


ト書き76

レオンハルト、アッシュの伸びた上半身に、斜めに剣を振り下ろす。


ト書き77

ケイン、アッシュ、エレオノーラの顔のアップ。ケインとエレオノーラは放心状態。アッシュは目の光を失っている。


ト書き78

レオンハルトの目の前で、アッシュが崩れ落ちる。


ト書き79

ケイン、ガタガタと震える。

ケイン

「ア……アッシュ……」


ト書き80

レオンハルト、ケインに目を向ける。

レオンハルト

「お前たち、この先に住んでいる槍術士に会いに来たのだろうが――」


ト書き81

レオンハルトの足元、うつ伏せに倒れるアッシュを描写。

 ※出血は少なめ

レオンハルト

「この男を連れて、すぐに引き返せ」


ト書き82

レオンハルト、ケインに冷酷な目を向ける。

レオンハルト

「急所は外しているが、何もしなければ一日も持つまい」


ト書き83

ケイン、震える足でレオンハルトの前に歩み出る。


ト書き84

ケイン、しゃがんでアッシュを肩に担ぐ。


ト書き85

大ゴマ。ケイン、しゃがんだ姿勢のまま、レオンハルトを睨むように見上げる。レオンハルト、冷酷な笑みを湛えてケインを見下ろす。


ト書き86

意識を取り戻したアッシュ、ケインに話し掛ける。

アッシュ

「ケ……ケイン……俺に構うな」


ト書き87

ケイン、アッシュの肩を抱き、レオンハルトに背を向ける。

ケイン

「エリーさん、急ぎましょう」


ト書き88

エレオノーラ、泣きながらケインの反対側からアッシュを支える。

エレオノーラ

「アッシュ!」


ト書き89

ケインの顔のアップ。恐怖は消え、決意に燃えた眼差し。


ト書き90

去っていくケイン一行を眺めながら、セシルがレオンハルトに問う。

セシル

「殿下。あの男、ケインという名のようですが……」

レオンハルト

「ああ。知ってた」


ト書き91

セシル、驚いてレオンハルトに目を向ける。

レオンハルト

「奴はアグネシアの王子……ケイン・アグネシアだ」


ト書き92

セシル、怪訝な目を向ける。

セシル

「帰してよいのですか?」

レオンハルト

「構わん」


ト書き93

レオンハルト、くすくす笑う。

レオンハルト

「あんな子供に何ができる」


ト書き94

レオンハルト視点で、去っていくケイン一行を描写。

レオンハルト

「奴ごときでは、波風一つ立てられまい」


ト書き95

ロデリック邸。レナが風呂用の薪を両手に抱え、庭を歩いている。


ト書き96

レナの前に、ケイン一行が現れる。アッシュは気を失っており、アッシュを肩に抱いて歩いたケインの顔は、疲労で土気色になっている。


ト書き97

レナが薪を地面に落とす。エレオノーラ、泣きながらレナに走り寄る。

レナ

「お前ら――」

エレオノーラ

「師匠! アッシュが……!」


ト書き98

レナがケインとアッシュに駆け寄り、ケインの反対側からアッシュを支える。

レナ

「誰にやられた?」


ト書き99

ケイン、レナに微笑を向ける。

ケイン

「『三人目の王子』……です」


ト書き100

限界を迎えたケイン、意識を失う。レナがケインを支える。


ト書き101

ロデリック邸を俯瞰で描写。玄関からモートン、用事から戻って来たロデリックが出てくる。


ト書き102

黒ゴマ。

 ※ケインの意識がない状態を演出


ト書き103

ケイン視点。意識が戻り、目の前にいる人物の輪郭が分かる。

 ※ロデリックだとははっきり分からない状態

ケイン

(ここは――)


ト書き104

ケインの視界が明瞭になる。横になったケイン。その隣に座るロデリックが、笑顔を向けている。

ロデリック

「気付いたかの?」


ト書き105

横になったままのケイン、小さく呟く。

ケイン

「ロデリック先生……」

ロデリック

「そのまま動くでないぞ」


ト書き106

ロデリック、にいっと笑う。

ロデリック

「エリーから聞いた。アッシュを抱えて、一晩中歩き通したそうじゃな」


ト書き107

ケイン、横になったままロデリックに問う。

ケイン

「アッシュは……」

ロデリック

「心配せんでええ。眠っておる」


ト書き108

ケイン、ぼーっとした表情で天井を見上げ、呟く。

ケイン

「先生……」


ト書き109

ケインの目から涙が零れる。

ケイン

「俺……」


ト書き110

ケイン、涙を流しながら絶叫する。

ケイン

「強くなりたいです!」


ト書き111

ロデリック、くすりと笑う。

ロデリック

「分かった分かった。鍛え直してやるわい」


ト書き112

ロデリック、ケインの頭を優しく撫でる。

ロデリック

「じゃが……今は休め」


ト書き113

ケインとロデリックがいる寝室の外。半分開いたドアの陰に、レナが立っている。


ト書き114

レナの顔のアップ。静かに怒りを湛えている。

レナ

(レオンハルト……)


ト書き115

文字のみ。

ナレーション

「代表戦まで、あと358日」

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